「転勤が決まったけれど、住宅ローンが残っている家をどうしたらいいのだろう」「家を貸すのは初めてで、何から手を付ければいいかわからない」
マイホームを手に入れた後での転勤辞令では、いろいろな不安が頭をよぎることと思います。
ここで、金融機関に黙って「一時的だから大丈夫だろう」と家を貸し出したり、正しい知識がないままに賃貸経営を始めたりすると、取り返しの付かないダメージを負いかねません。
この記事では、転勤中に大切な資産をしっかり守りながら、家賃収入という収益源を確保するために必要な知識を、わかりやすくまとめました。
【この記事を読むと得られるメリット】
・転勤で家を貸すときに知っておきたい重要リスクを把握できる
・具体的に何から着手すればよいか、手順がわかる
・管理会社の選び方についても判断基準を理解できる
後になって後悔しないように、注意すべきリスクや重要ポイントを押さえてから、行動していきましょう。
知らないと大損する!転勤で家を貸すときの7つの重大リスク
最初に、「まずこれだけは知っておいてほしい」という重大リスクから解説します。
転勤による賃貸を事前知識なしに進めてしまうと、多大な経済的損失や帰任時に自宅に戻れないという深刻な事態も起こり得るからです。以下の7つのリスクを確認しましょう。
1. 金融機関に無断で貸してローンの一括返済を求められる
2. 普通借家契約で貸してしまい自宅に戻れなくなる
3. 家賃設定を間違えて空室が続きローン返済に窮する
4. 修理やクリーニング費用を想定しておらず急な出費に慌てる
5. 住宅ローン控除の除外などによる税負担に対して準備していない
6. 確定申告せずに無申告加算税や延滞税が課せられる
7. 賃貸管理を自分でやろうとして失敗する
金融機関に無断で貸してローンの一括返済を求められる
住宅ローンは、その住宅に “自分や家族が居住すること” を前提とした低金利の商品です。よって、無断で賃貸に転用する(第三者に居住させる)と、契約違反となります。
契約違反のペナルティとしては、最悪の場合、残債の一括返済を求められる可能性があります。
「でも、賃貸に出しても、簡単にはバレないでしょう?」という人もいるのですが、結論からいえばバレます。
【契約違反が発覚する代表的なパターン】
・定期的な居住確認:金融機関は各自調査を行い、実際の居住実態を把握しています。たとえば住宅金融支援機構では、訪問・電話・手紙などにより、融資住宅に居住していることを確認するための調査を行っています(参考:住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用懸念事案への対応について」)。
・確定申告時の整合性チェック:確定申告で不動産所得(家賃収入から得た利益)を申告した際、税務署から金融機関へ照会がなされ、金融機関側で住宅ローンとの矛盾に気づく可能性があります。
・第三者からの通告:賃貸をしていることに気づいた近隣住民や知人などからの情報提供により、金融機関の知るところとなる場合があります。
金融機関に対しては、転勤決定後、すみやかに届出を行うことが必須です。多くの金融機関では、転勤証明書の提出などにより、一時的な賃貸を承認する制度を設けています。
普通借家契約で貸してしまい自宅に戻れなくなる
普通借家契約(一般的に締結される通常の賃貸借契約)では、借主の居住権が強く保護されており、貸主側の都合による解約は、ほぼ不可能です。契約期間が満了しても、貸主が更新を希望すれば、実質的に拒否できません。
つまり、転勤期間が終了しても、借主が退去に応じなければ自宅に戻れないということになります。
【普通借家契約の解約が難しい理由】
・正当事由の立証責任がある:貸主が解約を求める場合、「自己使用の必要性」「立退料の提供」「代替住居の確保」など、複数の正当事由を同時に満たす必要があります。このハードルは非常に高いものです。
・転勤帰任は確実性に欠ける:転勤からの帰任が正当事由として認められるかどうかは、裁判所でも判断が分かれるところで、確実性に欠けます。たとえ認められても、単体では正当事由としては弱く、高額な立退料なども必要となる可能性が高いでしょう。
・法的手続きが長期化しやすい:仮に正当事由が認められても一連の手続きに1年以上を要し、高額な弁護士費用もかかることがあります。
転勤中に家を貸すときには普通借家契約ではなく、かならず「定期借家契約」を選択する必要があります。定期借家契約であれば、契約期間の満了と同時に確実に明け渡しを受けられます(詳しくは後述します)。
家賃設定を間違えて空室が続きローン返済に窮する
市場相場を無視した高い家賃設定が原因で、長期間にわたって空室に陥るケースも後を絶ちません。
ローン返済や管理費を家賃収入で賄いたい一心で無理な家賃を設定しても、結局は入居者が現れず、収入を得る機会そのものを失ってしまいます。
多少の赤字を許容してでも、確実な入居者確保を優先する判断が必要な場合もあります。
とはいえ、「入居者が見つかるが、安くしすぎない、絶妙なライン」の家賃設定は、専門知識がないと難しいものです。信頼できる不動産会社から良きアドバイスをもらうことが鍵となります。
修理やクリーニング費用を想定しておらず急な出費に慌てる
給湯器の故障や水漏れ、エアコンの不具合など、賃貸経営では、いつ起こるかわからない設備のトラブルがつきものです。
賃貸中は、自分で居住しているときとは違い、大家さんとして必要な修繕を行う義務があります。
出典:国土交通省「賃貸借契約によって発生する権利義務」を加工
入居者の生活に支障を来さないよう、すぐに修繕の対応をしなければなりません。工事費用や新たな設備費用が発生します。
また、入居者が退去して新たな入居者を募集する際には、クリーニングや、必要に応じて壁紙や床材の張り替えといった原状回復費用も生じます。
一定の金額を修繕費として積み立てておかないと、突発的な出費に慌ててしまうでしょう。
住宅ローン控除の除外などによる税負担に対して準備していない
転勤中に家を貸すと、住宅ローン控除の停止と不動産所得への課税により、税負担が増大します。
【転勤中に家を貸すと納税額が増える仕組み】
・住宅ローン控除が適用外となる:自宅を賃貸に出した年から、住宅ローン控除は適用停止となります。仮に年末時点の残高が3,000万円あった場合、その0.7%である21万円の控除が受けられなくなります。
・不動産所得に課税される:家賃収入から必要経費を差し引いた利益(不動産所得)に対し、給与所得と合算して累進税率が適用されます。賃貸を行っていなかった年よりも、大幅に所得税・住民税の納税額が増える可能性がありますので、注意が必要です。
所得税は、確定申告の締切と同じタイミングで納税する必要があります。1月1日〜12月31日に得た利益について、翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告を済ませ、3月15日までに納税しなければなりません(振替納税の場合は引落しが4月中旬頃)。
住宅ローン控除がなくなることも踏まえ、例年よりも多い税負担に対応するための資金を準備しておく必要があります。
参考:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
確定申告せずに無申告加算税や延滞税が課せられる
先ほど確定申告の話題が出てきました。
「家賃収入から必要経費を差し引いた利益(不動産所得)が20万円を超えた場合」には、給与所得者でも確定申告が必要です(ほかにも副業などの所得がある場合は、それらと合算して20万円を超えた場合)。
これまで会社で年末調整をしてきた会社員の方にとって、確定申告はなじみがないことが多いでしょう。
転勤の忙しさから確定申告を怠り、重いペナルティを課せられるケースも見られますので、注意が必要です。
【無申告のペナルティ】
・無申告加算税:期限内に申告しなかった場合、納付すべき税額に上乗せして無申告加算税が課せられます。その割合は税額によって異なり、5〜25%となります。
・延滞税:申告期限から納付日まで、年率最大14.6%の延滞税が日割りで加算されます。
・重加算税:意図的な所得隠蔽と判断されれば、さらに重加算税が課せられる可能性があります。また、税務調査により過去5年分(重加算税の場合は7年分)の追徴課税を受ける恐れもあります。
「家賃収入といっても少額だからバレないだろう」と甘く見ている方もいますが、税務署はさまざまな方法で収入を把握しており、無申告は発覚します。正しく確定申告することが大切です。
出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」、国税庁「No.9205 延滞税について」
賃貸管理を自分でやろうとして失敗する
賃貸経営を行うやり方は、管理業務をオーナーが自ら行う「自己管理」と、専門の管理会社へ依頼する「委託管理」の2パターンがあります。
管理会社へ支払う管理手数料を節約しようと、自主管理を選択したものの、結果的に大きなトラブルに発展するケースが少なくありません。
というのも、賃貸管理は、専門知識や経験のない個人の方が行うのは無謀といえるほど、負担が大きな業務です。さらに転勤中となれば、信頼できる管理会社への委託が現実的な選択肢です。
管理手数料は発生しますが、専門的な対応により大きなトラブルを回避できます。結果的に経済的メリットが大きくなる場合がほとんどです。
転勤で家を貸す前に絶対に知るべき3つの大前提
ここまで重大リスクを解説してきました。とくに重要な以下3点について、詳しく確認しておきましょう。
1. 住宅ローン中でも家は貸せる!ただし金融機関への連絡は必須
2. 転勤後に戻れる「定期借家契約」という選択肢
3. 大家業は賃貸管理会社に任せる(管理手数料は5%程度が相場)
住宅ローン中でも家は貸せる!ただし金融機関への連絡は必須
住宅ローン中の家を、金融機関に隠れて賃貸すれば、ローン残高の一括返済を求められるリスクがあることは前述のとおりです。
一方、住宅ローンの返済中でも、正しい手続きを踏めば、問題なく合法的に家を貸せます。金融機関にとって、転勤による一時的な賃貸は想定内の出来事なので、ほとんどのケースで承認してもらえます。
まずは、勤務先から発行される転勤辞令や転勤証明書を準備しておきましょう。やむを得ない事情であることを証明する文書が必要です。
その他の具体的な提出書類などは金融機関によって異なります。まずは金融機関へ相談しましょう。
転勤後に戻れる「定期借家契約」という選択肢
通常の賃貸借契約(普通借家契約)では、借主の権利が強く保護されており、貸主の都合での解約が難しいことをお伝えしました。そこで選びたいのが「定期借家契約」です。
「定期借家契約」は、契約期間が満了したときに確実な明け渡しを受けられる契約形態です。転勤する方にとっては、帰任時に自宅へ戻れる唯一確実な方法といえます。
注意点としては、借主にとって不利な契約(契約更新ができない)である分、入居者が見つかりにくいリスクがあります。よって、相場よりも家賃を下げるなどの対応が必要な場合があります。
ここで、「転勤後、すぐに元の家に戻れなくても構わないから、できるだけ高額で貸したい」と考える方もいるかもしれません。
しかしながら、それは住宅ローンを借り入れている金融機関のほうで許可されない点も、覚えておきましょう。
金融機関側では、あくまでも「転勤が終了したらすみやかに自己居住に戻る」という条件での賃貸許可となります。金融機関にも連絡する転勤の期間が終わったら、自宅に戻る必要があります。
大家業は賃貸管理会社に任せる(管理手数料は5%程度が相場)
大家さんとして行うべき煩雑な業務は、専門の管理会社に委託しましょう。管理会社はおもに以下のような業務を代行してくれます。
【賃貸管理会社が行う主要業務】
・入居者募集と契約手続き:募集広告を作成して入居希望者を集め、内覧の対応から入居審査、複雑な契約手続きまで代行します。プロが動くことで、空室期間を最短に抑えられます。
・家賃回収と滞納対応:毎月の家賃集金はもちろん、オーナーにとって最も気苦労の多い滞納時の督促も、専門的なノウハウで粘り強く行います。精神的な負担から解放されるメリットは計り知れません。
・入居者からの問い合わせ・トラブル対応:入居者からの「お湯が出ない」「エアコンが動かない」「鍵をなくした」などの連絡窓口になり、さまざまなトラブルに対応します。急な設備の故障には提携業者を迅速に手配し、オーナーに代わって問題解決に奔走してくれます。
管理手数料の相場は家賃の5〜8%程度で、サービス内容によって幅があります。たとえば、家賃15万円の物件で管理手数料が5%なら、毎月7,500円が管理会社へ支払う費用です。
この管理手数料は、確定申告で不動産所得を算出するときに、経費として家賃収入から差し引くことができるため、節税にもなります。
転勤が決まったらすぐ動く!家を貸すまでの簡単5ステップ
転勤辞令から実際の転居までは、1〜2カ月程度しかないことが多いでしょう。なかには、2週間程度で慌ただしく転居しなければならないケースもあります。
この限られた時間で、何をどう進めればよいのか、手順を確認しましょう。
1. ステップ1:金融機関に転勤の事実を伝え賃貸の許可を得る
2. ステップ2:不動産会社に賃料査定を依頼し家賃相場を知る
3. ステップ3:管理会社を比較検討し信頼できる1社を選ぶ
4. ステップ4:定期借家契約で入居者を募集し契約を結ぶ
5. ステップ5:引越しを完了し管理会社へ家の鍵を引き渡す
ステップ1:金融機関に転勤の事実を伝え賃貸の許可を得る
ここまでお読みいただいた方なら、もう十分にご理解いただいているかと思いますが、転勤の辞令が出たら、まずは金融機関への連絡が必要です(ローンが残っている住宅の場合)。
事後報告では契約違反と見なされる恐れがあるため、引っ越して賃貸をスタートする前に、できるだけすみやかに連絡しましょう。
承認までに要する期間は通常1〜2週間程度ですが、書類不備があると長くかかってしまいます。初回提出時に、金融機関の案内に従って、きっちりと書類を準備しておきましょう。
ステップ2:不動産会社に賃料査定を依頼し家賃相場を知る
次にやるべきことは、賃料の査定依頼です。
「自分の家を、いくらで貸せるか?」の金額を、不動産会社に査定してもらいます。このとき、1社だけでは偏りが出る可能性があるため、複数社(最低でも3社以上)から提案を受けることが重要です。
1社ずつ連絡するのは非常に手間がかかってしまうので、一括査定サービスを活用しましょう。「マンション貸す.com」では、分譲マンションも戸建ても、すべて査定可能です。
ステップ3:管理会社を比較検討し信頼できる1社を選ぶ
転勤で家を貸す際には、自己管理をせずに、管理会社へ管理を委託することが重要というお話をしました。
管理会社を選ぶときには、前のステップで査定を依頼した不動産会社の中から1社を選び、その会社と管理委託契約を締結するのが通常の流れです。
入居者募集力、24時間対応などの充実度、転勤者向けプランの有無などを確認して、管理会社を選びましょう。
「契約する1社をどのように選ぶべきか?」については重要なので、ステップ5まで解説した後で詳しく取り上げます。このまま読み進めてください。
ステップ4:定期借家契約で入居者を募集し契約を結ぶ
管理会社との契約が完了すれば、入居者募集から契約締結まで、すべて管理会社が主導して進めてくれます(一般的なプランで契約した場合)。
【募集から契約までの具体的な流れ】
・募集条件の確定と広告開始:家賃や入居可能日などを最終決定し、「定期借家契約」であることを明記したうえで、SUUMOやホームズといったポータルサイトへ物件情報を掲載します。
・内覧の対応と入居申込み:問い合わせへの対応や内覧の日程調整は、管理会社が行います。入居の申込みがあれば、オーナーに報告が入ります。
・入居者の審査:申込者の収入や勤務先、人柄などから、安心して家を貸せる相手かどうかを審査します。家賃保証会社(連帯保証人の役割を担う会社)の利用を必須としておくと、家賃滞納リスクも軽減できます。
・定期借家契約の締結:「更新はなく、期間の満了により契約が終了する」という重要な点を記載した事前説明文書を契約前にかならず交付・説明します。この法的な手続きを怠ると、普通借家契約と見なされるリスクがあるため、管理会社が責任を持って行います(*1)。
*1:参考までに、以下は定期借家契約の流れです。
出典:国土交通省「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)をご存じですか…?」
このステップでは、基本的にはオーナーは管理会社の報告を聞き、必要な意思決定をするだけで、手続きが進んでいきます。
ステップ5:引越しを完了し管理会社へ家の鍵を引き渡す
ステップ4までの動きと前後して、転勤に向けての引っ越しを完了し、管理会社へ鍵を引き渡します。
【引き渡し前の最終準備】
・室内状況の詳細記録:各部屋の状態を写真で記録し、既存の傷や汚れを詳細に文書に残しておきます。とくに壁紙の小さな傷や床材の擦れなど、退去時のトラブル要因となりやすい部分は重点的に記録します。
・設備機器の動作確認:エアコン・給湯器・換気扇・照明器具など、すべての設備の正常動作を確認し、取扱説明書を整理して管理会社に引き渡します。故障の兆候がある設備については、事前に修理または交換を検討します。
・近隣住民へのあいさつと情報共有:賃貸開始について近隣住民にあいさつし、管理会社の連絡先を伝えます。ゴミ出しルールや駐車場の利用方法など、地域特有のルールについても管理会社と情報共有しておきます。
鍵の引き渡しはかならず書面で記録し、本数と種類を明確にします。スペアキーの作成や、入居者への引き渡し方法についても、事前に管理会社と調整しておきましょう。
失敗しない管理会社はここが違う!5つの見極めポイント
転勤中の大切な家を任せる管理会社は、信頼できる会社をしっかり選ぶ必要があります。
まず前提として、候補となる管理会社の選定には前出の「マンション貸す.com」をご利用ください。あらかじめ厳選された最大6社から提案が届くため、その中から選べば失敗しにくくなります。
そのうえで、どのようなポイントをチェックすればよいのか見ていきましょう。
1. 入居者募集力があるか?
2. 家賃滞納や入居者トラブルへの対応実績が豊富にあるか?
3. 転勤者向けの賃貸プランやノウハウを持っているか?
4. 担当者の返信が早く質問に的確に答えられるか?
5. 管理手数料とサービス内容のバランスが取れているか?
入居者募集力があるか?
入居者募集力は、管理会社の最も重要な能力といっても過言ではありません。
入居者がなかなか見つからずに空室期間が長引いてしまうと、大きな機会損失になってしまうからです。
【募集力を測る具体的な指標】
・平均空室期間の実績:管理物件における平均空室期間を確認しましょう。優秀な会社では1.5〜2カ月以内での成約を実現しており、この差は年間収益に大きな影響を与えます。
・複数媒体での同時掲載:SUUMO・ホームズ・アットホームなど主要ポータルサイトすべてに掲載し、さらに自社ホームページやSNSでも積極的に発信している会社が理想的です。掲載写真のクオリティーや物件紹介文の魅力度も、客付け力を左右します。
家賃滞納や入居者トラブルへの対応実績が豊富にあるか?
転勤中、オーナーは現地に駆けつけることができません。トラブル対応は完全に管理会社に任せることになります。過去の対応実績から解決能力を詳しく確認しましょう。
【トラブル対応力の確認方法】
・家賃滞納率と回収実績:管理物件における家賃滞納の発生率と、滞納発生後の回収成功率を数値で確認します。優秀な管理会社では滞納発生率2〜3%以下、回収率95%以上を維持しており、保証会社との連携体制も充実しています。
・近隣トラブルの解決事例:騒音問題やゴミ出しルール違反、違法駐車など、よくある近隣トラブルの解決事例を具体的にヒアリングしましょう。初期対応から最終解決までの平均的な処理期間や、オーナーへの報告タイミングも確認しておきます。
・緊急時の対応体制:夜間や休日の緊急事態に対する初期対応の体制を確認します(24時間コールセンターの設置状況や提携業者のネットワークなど)。水漏れや鍵紛失などの緊急事態でも、スピーディーな現場対応が可能か確認しましょう。
転勤者向けの賃貸プランやノウハウを持っているか?
転勤による賃貸は、一般的な投資用賃貸とは異なる特殊な事情があります。転勤者特有のニーズに対応できるプランやノウハウがあるか、確認しましょう。
【転勤者向けサービスの確認】
・定期借家契約の取扱い実績:過去に定期借家契約を取り扱った実績が、どの程度あるかを確認します。普通借家契約しか扱ったことがない会社では、転勤者特有のリスクに対応できません。
・確定申告サポートの提供:不動産所得の確定申告に必要な書類の作成支援や、税理士紹介サービスがあるかを確認します。年末調整しかしたことがない会社員の方にとって、確定申告は大きな負担となるため、このサポートの有無は重要な判断材料です。
・帰任時の再入居サポート:転勤期間が終了したときの入居者の退去対応や、再入居のための原状回復工事の手配など、スムーズな帰宅をサポートする体制があるかを確認します。
担当者の返信が早く質問に的確に答えられるか?
窓口となる担当者とのやりとりがスムーズでない場合、その後にストレスを感じるシーンが多くなります。また、対応品質は信頼関係の土台となる重要ポイントです。
最初の問い合わせや相談の時点で、担当者の対応力をしっかりと見極めましょう。
【担当者の対応力チェックポイント】
・問い合わせの返信速度:メールでの問い合わせに対し早いタイミング(営業時間内であれば当日中、営業時間外でも翌営業日の午前中が目安)で返信があるかを確認します。返信の早さは、その後の対応スピードを予測する重要な指標となります。
・専門知識の正確性:住宅ローンの取り扱いや定期借家契約の法的要件など、転勤賃貸に関する専門的な質問に対し、正確で具体的な回答ができるかを確認します。曖昧な回答や間違った情報を提供する担当者は避けるべきです。
・提案内容の具体性:単なる料金説明ではなく、個別の物件特性や転勤期間を考慮した具体的な提案ができるかを確認します。画一的なサービス説明しかできない担当者では、柔軟な対応は期待できません。
管理手数料とサービス内容のバランスが取れているか?
管理手数料については、安さだけで判断せず、提供されるサービス内容との費用対効果を総合的に評価することが重要です。
【費用対効果を評価する方法】
・基本管理業務の範囲確認:家賃回収・入居者対応・契約更新など、基本管理業務にどこまで含まれているかを詳細に確認します。手数料5%でも業務範囲が限られている場合と、手数料8%で総合的なサービスを受けられる場合では、後者の方が結果的に経済的な場合があります。
・追加費用の発生パターン:基本料金に含まれない業務と、その際の追加費用を事前に確認します。原状回復工事の手配など、必要になる可能性が高い業務の料金設定を把握しておくことが重要です。
・保証・保険サービスの充実度:家賃保証・原状回復保証・設備保証など、各種保証サービスの内容と適用条件を確認します。多少手数料が高くても、保証があることで長期的なリスクを軽減できる場合があります。
以上、5つのポイントを解説しました。
これらを念頭に置きながら、さっそく査定を進めていきましょう。
まとめ
本記事では「転勤で家を貸す」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
転勤で家を貸すときの7つの重大リスクは、以下のとおりです。
1. 金融機関に無断で貸してローンの一括返済を求められる
2. 普通借家契約で貸してしまい自宅に戻れなくなる
3. 家賃設定を間違えて空室が続きローン返済に窮する
4. 修理やクリーニング費用を想定しておらず急な出費に慌てる
5. 住宅ローン控除の除外などによる税負担に対して準備していない
6. 確定申告せずに無申告加算税や延滞税が課せられる
7. 賃貸管理を自分でやろうとして失敗する
転勤で家を貸す前に絶対に知るべき3つの大前提として以下を解説しました。
1. 住宅ローン中でも家は貸せるが金融機関への連絡は必須
2. 転勤後に戻れる「定期借家契約」という選択肢
3. 大家業は賃貸管理会社に任せる(管理手数料は5%程度が相場)
家を貸すまでの流れを、5つのステップで解説しました。
1. 金融機関に転勤の事実を伝え賃貸の許可を得る
2. 不動産会社に賃料査定を依頼し家賃相場を知る
3. 管理会社を比較検討し信頼できる1社を選ぶ
4. 定期借家契約で入居者を募集し契約を結ぶ
5. 引越しを完了し管理会社へ家の鍵を引き渡す
失敗しない管理会社を選ぶ、5つの見極めポイントは以下のとおりです。
1. 入居者募集力があるか?
2. 家賃滞納や入居者トラブルへの対応実績が豊富にあるか?
3. 転勤者向けの賃貸プランやノウハウを持っているか?
4. 担当者の返信が早く質問に的確に答えられるか?
5. 管理手数料とサービス内容のバランスが取れているか?
転勤前はバタバタとして慌ただしいものですが、一括査定や管理会社のサポートを上手に活用して、できる限り効率的かつお得に、自宅の賃貸化を進めていきましょう。
Author information
戸谷 太祐
株式会社エイムプレイス 社外取締役
賃貸経営は思い通りにいかず、不安や迷いが生まれがちです。私はオーナー様が納得して判断できる環境を整えることを使命としています。専門用語を減らし、判断に必要な情報や手順を整理し、入居者募集・原状回復・更新といった運用サイクルを仕組み化。記事発信やマッチングを通じて、初めての方でも安心して比較・検討できる環境を「レントハック」で提供しています。
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