「賃貸管理でトラブルが頻出しているけど、何が原因なんだろう?」「賃貸管理のトラブルって、分類するとどんなものがあるかな」「賃貸管理トラブルの対処方法を、体系的に知りたい」
賃貸経営をされているオーナーであれば、一度は「賃貸管理トラブル」について不安を感じ、その全容と具体的な対策を確認しておきたいのではないでしょうか。
入居者と管理会社、そしてオーナーの間で起こるトラブルは多岐にわたりますが、その多くは初期対応の遅れや契約の曖昧さが原因で深刻化します。
この記事では、賃貸管理で起きやすいトラブルを2つに分類したうえで、「なぜそのようなトラブルが起きてしまうのか」「対策方法や未然に防ぐ方法は何か」を解説していきます。
賃貸管理トラブルを避けるためには、オーナー自身が主体的にリスクを把握して予防策を考えておくことや、信頼できる管理会社を慎重に選ぶことが重要です。
この記事を読み終えるころには、トラブル発生時の適切な対応フローと管理会社の正しい選び方までイメージできるはずです。ぜひ最後までお読みください。
管理会社と入居者間で起こりやすいトラブル6つ
入居者とのやり取りは、賃貸管理のなかでもトラブルが起きやすい部分です。小さな対応の遅れや報告ミスが、退去や悪い口コミにつながることもあります。
この章ではまず、入居者と管理会社の間で起こりやすいトラブルを中心に見ていきます。
管理会社と入居者間で起こりやすいトラブル6つ
- 入居者対応が遅い・放置された
- 家賃滞納への対応が遅く長期化してしまった
- 入居者間トラブル(騒音・生活音・人間関係)を解決できない
- ルールを守らない入居者の対応をしてくれない
- 修繕・メンテナンス対応が遅い
- 退去時の原状回復で入居者と揉めた
どのトラブルも、管理会社の対応方針や報告体制を明確にしておけば防げるケースがほとんどです。
この記事を参考に、自分の物件で同じようなトラブルが起きていないかを確認しながら読み進めてみてください。
入居者対応が遅い・放置された
賃貸管理を管理会社に任せたときのよくあるトラブルとして、入居者対応を放置されたという事案は非常に多く聞かれます。
入居者からのクレームや苦情は、早期対応すれば大きな問題に発展しないケースがほとんどです。しかし、管理会社の対応が遅れたり報告を怠ったりすると、入居者の不満が高まり、早期退去にもつながりかねません。
入居者対応が遅い・放置されるトラブルの例
- 入居者からの騒音クレームに対し、管理会社が対応せず放置していた
- 水漏れ・設備不良の報告があったのに、業者手配が遅れて二次被害が発生した
- 苦情を受けた担当者が異動しており、引き継ぎがなされず放置されていた
こうした対応の遅れは、入居者の退去や口コミ低下を招き、結果的に空室期間の長期化にもつながります。放置すればするほど修繕費用や機会損失も増大し、経営全体への影響は無視できません。
対処法・改善方法
- 管理会社に対し、入居者対応の一次報告を24時間以内に行うルールを設ける
- クレーム受付~解決までの対応履歴を共有し、オーナーも進捗を確認できる仕組みを作る
- 担当者任せにせず、対応フローや引き継ぎ体制の整備状況を定期的に確認する
家賃滞納への対応が遅く長期化してしまった
家賃滞納は賃貸経営ではよくあるトラブルですが、管理会社の初動対応が遅れると問題が長期化しやすく、オーナーの損失リスクが一気に高まります。
家賃滞納があっても早期の連絡・督促を適切に行えば解決できるケースがほとんどです。しかし初期対応が遅れると、入居者が「支払わなくても大丈夫」と認識してしまいかねません。
その結果、滞納が数カ月単位に広がり、法的手続き(明け渡し訴訟など)が必要になることもあります。
入居者からの家賃の入金が遅れるトラブルの例
- 管理会社が入金確認を怠り、2カ月以上経ってから滞納に気づいた
- 滞納者に対して電話だけで済ませ、督促書や保証会社への報告をしていなかった
- 督促の経過をオーナーに報告せず、気づいたときには強制退去寸前まで深刻化していた
こうした対応の遅れがあると、家賃が回収不能となるリスクが高まり、法的手続きや再募集のためのコスト負担まで発生するケースがあります。
対処法・改善方法
- 滞納が発生したら、初月の段階で書面通知と電話連絡を行うよう管理会社に徹底させる
- 家賃保証会社の利用を必須とし、滞納発生時の管理会社と保証会社間の連携ルールを確認する
- 対応が遅い管理会社の場合、督促体制が整っている会社への乗り換えを検討する
入居者間トラブル(騒音・生活音・人間関係)を解決できない
生活音や隣人との人間関係など、入居者間のトラブルは感情の問題に発展しやすく、管理会社にとっても最も対応が難しい領域です。
管理会社ができることは注意喚起や事実確認までであり、弁護士法によって法的仲裁や交渉を行うことはできません。ですが対応が遅れると「何もしてくれない」と見なされ、オーナーに直接クレームが入るケースも少なくありません。
管理会社が事実確認を慎重に進めすぎるあまり、初動が遅れたり報告を怠ったりすると、入居者間の関係が悪化し、結果的に退去や評判の低下につながります。
入居者間トラブルへの対応が遅れたトラブルの例
- 「子どもの足音がうるさい」という苦情を受けたが、管理会社が両者への聞き取りをせず放置した
- 隣人がベランダでにらんでくるなどの人間関係トラブルを相談しても、「様子を見ましょう」で対応が止まった
- 上階の生活音トラブルが繰り返され、数人が退去して初めて管理会社が動いた
こうしたトラブルは、管理会社が直接的な仲裁をできない一方で、「問題を見える化して双方に伝える」「早期に報告・相談体制を取る」「入居者に寄り添う」ことが求められます。
対処法・改善方法
- 管理会社と入居者間トラブルへの対応方針(タイミング・連絡方法)を事前に明文化しておく
- 「介入できない場合の説明」を入居者にわかりやすく伝えられる管理会社を選ぶ
- 感情的なトラブルにも誠実に対応できる管理会社を選ぶ
ルールを守らない入居者の対応をしてくれない
入居者がルールを守らないのに「管理会社がなかなか注意や是正を行ってくれない」というケースは良くあり、オーナーにとって大きなストレスになります。
たとえば「ゴミ出しルールを守らない」「騒音の苦情が来ている」「駐車場でのマナーが悪い」など、日常的なマナー違反が続くと、他の入居者からの苦情が増えたり物件全体のマナーが悪くなったりしかねません。
ルール違反入居者への対応が遅れたトラブルの例
- 共用廊下やベランダでの私物放置・喫煙などを繰り返しても注意せず、他の入居者が退去してしまった
- 駐車場・駐輪場でのマナーが悪い入居者を放置し、他の住人とのトラブルに発展した
- 契約で禁止されている深夜の音楽演奏に対して厳格に対処してくれなかった
- ルール違反を繰り返す入居者に対して、退去勧告を検討せず「様子見」で終わった
こうした問題を防ぐには、管理会社の「指導・注意のルール」を明確にし、オーナーへの報告・相談を徹底することが重要です。入居者への対応に一貫性がなければ、結果的に「ルールを破った方が得」と思われ、物件全体の秩序が崩れてしまいます。
対処法・改善方法
- ルール違反時の対応手順(注意→警告→契約解除)を管理会社と事前に取り決める
- 入居者への注意・報告の記録を残し、オーナーに定期共有させる
- 規約・ルール遵守を徹底できる管理会社を選び、再発防止体制を確認する
修繕・メンテナンス対応が遅い
設備の不具合や老朽化による修繕対応が遅れると、入居者からの不満や退去につながることがあります。
特に、エアコンや給湯器、トイレなど生活に直結する設備が使えない期間が長引くと、「対応が遅い」「信頼できない」という印象を与えやすくなります。
多くの場合、管理会社は複数物件を抱えており、緊急性の判断や業者手配の遅れが原因となります。
しかし、入居者の快適性が維持できていない以上、結果として物件の印象や入居継続率に悪影響を及ぼします。
修繕・メンテナンストラブルの例
- エアコンの故障を報告しても、業者手配まで数日かかり、入居者がクレームを入れた
- 水漏れの報告を受けたが、対応が遅れて階下の部屋にも被害が拡大した
- 給湯器の交換を依頼したのに「予算確認中」と放置され、入居者が自主的に業者を呼んでしまった
- 定期点検を怠った結果、共用配管の詰まりが発生し、建物全体に影響が出た
修繕対応の遅れは、「業者手配の遅さ」「連絡体制の不備」「管理会社とオーナーの意思疎通不足」が重なって起きやすいトラブルです。
初期対応を迅速に行う仕組みを作っておかないと、入居者離れや口コミ評価の低下につながります。
対処法・改善方法
- 緊急性の高いトラブル(給湯・水漏れ・エアコン等)は即日対応ルールを設定する
- 「〇万円までの修繕は管理会社の裁量で即時実施できる」などの権限を事前に取り決めておく
- 修繕報告から完了までのフローを管理会社に明示させ、進捗を可視化する
- 定期点検を年1回以上行い、老朽化による突発トラブルを予防する
退去時の原状回復で入居者と揉めた
退去時の原状回復は、賃貸管理におけるトラブルの中でも特に多い問題です。
入居者から管理会社への不満がインターネット上に書きこまれる場合の多くは「多額の原状回復費用を取られそうになった」「壁紙と床の貼り換え費用を請求された」などという退去時トラブルです。
「どこまでが入居者負担で、どこからが経年劣化なのか」という線引きが曖昧なまま進めてしまうと、敷金精算をめぐって入居者と揉めるケースが後を絶ちません。
退去時の原状回復トラブルの例
- 壁紙や床の通常使用による汚れまで入居者負担とされ、不当と感じた入居者が口コミに投稿した
- 敷金から差し引かれた費用の内訳が不明確で、「説明がない」とトラブルになった
- 管理会社の判断で高額な修繕費を請求した結果、入居者がSNSで不満を発信した
- 経年劣化を入居者負担と誤って処理し、退去時の対応で印象を悪化させた
- 清掃費や修繕費の請求根拠を説明せず、信頼を損ねてリピーター入居の可能性を失った
本来、原状回復は国土交通省のガイドラインや契約内容に沿って判断されるべきですが、現場では対応する管理会社の担当者の経験や説明不足によって誤解が生まれやすい部分です。
一度でも「対応が不透明」「納得できない」と感じた入居者がSNSやレビューで不満を書き込むと、次の入居希望者に悪印象を与え、長期空室につながることもあります。
対処法・改善方法
- 原状回復のルール(国交省ガイドライン等)を契約時に説明するよう管理会社に徹底させる
- 退去時の見積・精算内容はすべて書面化し、オーナーも確認できる体制を整える
- 対応履歴を記録し、クレーム発生時に事実関係を明確化できるようにしておく
退去対応の質が物件ブランドを左右すると考え、管理会社の説明力や透明性を重視することが重要です。
管理会社とオーナー間でのトラブル7つ
前章では、管理者と入居者のあいだで起こりやすい賃貸管理トラブルを解説しましたが、ここからは視点を切り替え、オーナーと管理会社の間で生じる賃貸管理トラブルについて解説していきます。
管理会社とオーナー間でのトラブル7つ
- 定期報告がない・連絡が遅い
- 管理委託契約の範囲があいまいで対応を断られた
- 管理会社が勝手に修繕・契約変更などを行った
- トラブル発生の報告が遅く深刻化した
- 管理会社からの請求内容が不明確・不透明
- 説明不足のまま一方的に契約内容を変更された
- 悪質な管理会社による金銭トラブル(預り金の流用・入居者への不正請求)
どのようなトラブルが起きやすいのか、自分の物件に当てはめながら読み進めてください。
定期報告がない・連絡が遅い
管理会社からの定期報告が滞ると、オーナーは自分の物件がどんな状態なのかを正確に把握できません。
修繕や苦情対応が適切に行われているか確認できず、気づいたときには損害やクレームが拡大しているケースもあります。
定期報告がない・連絡が遅いトラブルの例
- 対応履歴や点検報告書などの提出が、決められたタイミングで届かない
- 入居者の家賃滞納やクレーム発生、退去などを後から知らされた
- 修繕を行ったかどうかの報告がなく、現場確認するまで不明だった
オーナーを介さずに対応してくれるのはありがたい一方で、適切なタイミングでの情報共有がないと、事態が深刻化してしまうこともあります。建物の劣化や入居者離れにつながれば、賃貸経営の収益悪化にもつながりかねません。
対処法・改善方法
- 決まったタイミングでの報告をしっかりするよう相談する
- どのタイミングでオーナーに報告してほしいのかを再度明確にする
- 報告フォーマットを自分で指定する
管理会社の対応が悪い場合には、「管理会社の対応が悪い!よくある特徴5つ・リスク・対処方法を解説」の記事も参考に、管理会社を変更する選択肢も検討しましょう。
管理委託契約の範囲があいまいで対応を断られた
管理委託契約の範囲をあいまいにしたまま締結すると、対応時に「それは契約外です」と拒まれたり、別途費用が請求されたりすることがあります。
多くの場合、契約時に「管理会社がどこまで対応するか」を十分に確認していないことが原因です。契約書の文言が抽象的で、現場担当者との認識がずれると、対応の線引きが都度変わってしまいます。
管理委託契約の範囲があいまいで起こるトラブルの例
- 夜間や休日にも対応してくれると思ったら、管理範囲外だった
- 共用部の清掃を依頼したら、「それは管理委託契約の範囲外です」と断られてしまった
- 緊急修繕を頼んだら、別料金と言われ対応されなかった
こうした認識の齟齬は、オーナー自身が対応範囲を誤解しているケースもありますし、担当者の勘違いや引継ぎミスという可能性もあります。まずは管理委託契約の範囲をしっかり線引きしなおすことが必要です。
対処法・改善方法
- 対応業務を「基本業務」「追加料金業務」「非対応業務」に明確に分ける
- 決めた内容を契約書にも明記する
- 緊急時の対応範囲を別紙ルール化する
管理会社によって対応できる範囲はそれぞれ異なります。「前の会社がこうだったから」などあいまいなままにせず、契約範囲を具体的に文書化し、対応ルールを可視化しておきましょう。
管理会社が勝手に修繕・契約変更などを行った
オーナーの承諾を得ないまま、勝手に修繕や契約変更を管理会社が行ってしまうというトラブルもあります。
これらのトラブルの背景には、「現場判断で対応したほうが早い」という管理会社側の意識や、契約上の報告義務が不明確なまま運用されているケースがあります。とくに緊急対応や更新交渉時は、判断のスピードが優先されやすく、事後報告で済まされるケースがありえます。
管理会社が勝手に修繕・契約変更を行うトラブルの例
- 深夜に入居者のカギ紛失対応を行い、事前連絡なく深夜料金まで請求された
- 入居者から「家賃を下げてくれたら更新する」と言われ、事後報告で勝手に家賃を減額されていた
- 退去時の壁紙貼り換えを管理会社が独断で行い、「大家負担です」と請求だけ届いた
このようなケースを放置してしまうと、不要な出費が積み重なるだけでなく、管理会社への不満がさらに増幅されるだけです。
対処法・改善方法
- 小さな確認でも気軽に連絡してもらえるような信頼関係を築いておく
- 「3万円以上の修繕はオーナー承認を必須とする」など、ルールを具体的に設定しておく
- 緊急対応時の事後報告ルールを事前に定義しておく
承認フローと報告様式を明確にすることで「スピード対応」と「透明性」を両立でき、費用トラブルの再発防止につながります。
トラブル発生の報告が遅いために深刻化してしまった
クレーム・漏水・設備故障などのトラブル報告が遅いと、状況が悪化してから初めて知ることになります。「管理会社が対応してくれていると思ったら放置されていた」というケースも少なくありません。
報告が遅く深刻化してしまったトラブルの例
- 上階の漏水が1週間以上放置され、下階から損害賠償を請求された
- 騒音トラブルが長期化し、退去が複数発生した
- 家賃滞納を数カ月知らされず、法的対応のタイミングを逃した
こうした報告の遅延を放置してしまうと、損害拡大や法的対応の遅れなどオーナーに直接的な損失が発生します。「退去が相次いでいた理由が管理会社にあった」ということもありえるのです。
対処法・改善方法
- トラブル発生後の対応時間について、管理会社としっかり相談する
- 担当者不在でも別部署・緊急窓口に報告が届く体制を作る
- 「24時間対応」など迅速にトラブル対応してくれる管理会社に変更する
トラブルは「報告の速さ」で損害規模が変わります。迅速な情報共有体制が、最も有効なリスク対策です。
管理会社からの請求内容が不明確・不透明
賃貸管理のトラブルの中でも多いのが、管理会社からの請求内容が不明確で「費用が妥当なのか分からない」「過大に請求されていた」などというケースです。
毎月の請求書に「管理費一式」「修繕費一式」とだけ記載されており、どんな作業にいくら使われたのか不明なまま請求されることがあります。
こうしたトラブルは、管理会社の費用管理がどんぶり勘定になっている、単価を明確に設定していない、あるいは水増し請求を行っているなど、運用体制そのものに問題があるケースが多く見られます。
契約時の説明不足も一因ですが、実際には「契約内容が曖昧だから何でも請求できてしまう」構造的な問題が背景にあります。
管理会社からの請求トラブルの例
- 請求書が「管理費一式」とだけ記載され、業務の内訳が分からない
- 「共用部清掃」や「定期点検」が契約より少ない頻度なのに、費用は変わらない
- 修繕工事の見積書が「諸経費一式」となっており、材料費や人件費の内訳がない
- グループ会社や提携業者に高額発注し、相場よりも割高な費用を請求された
このような不明瞭な請求を放置してしまうと、本来払う必要のない費用を支払い続けるリスクがあります。また、ざっくりとした内訳では、契約内容どおりに業務が実施されているかの確認も難しいでしょう。
対処法・改善方法
- 月次報告書には実施内容を具体的に記載してもらい、写真付きの作業報告を添付させる
- 見積りなど金額の根拠を確認するとともに、自分でも相場を調べる
- オーナー自身もしっかりと報告書をチェックする習慣を持つ
請求の透明性が低い管理会社ほど収支報告や送金管理もずさんな傾向があるため、資金流用や送金遅延のトラブルにも発展しやすい傾向があります。
あまりに透明性が低い体質の会社の場合は、早めに管理会社を変更するのがおすすめです。
説明不足のまま一方的に契約内容を変更された
管理会社とオーナー間での賃貸管理のトラブルの中でも深刻なのが、契約内容や費用条件を十分に説明されないまま、後から一方的に変更されるケースです。
とくにサブリース契約では、契約後に「特約」や「費用負担の変更」を記した文書が突然送られてくるなど、オーナーにとって不利益な条件変更が問題となることがあります。
原因として多いのは、契約締結時の重要事項説明が不十分であることや、特約事項を後出しする悪質な運用です。
本来であれば、管理会社やサブリース業者は契約内容を口頭・文書で明示し、変更がある場合も書面で説明・同意を得る必要がありますが、十分な説明がされなかったり軽微な修正として勝手に変更されたりというケースがありえます。
一方的に契約内容を変更されたトラブルの例
- 契約後、特約事項を記した文書が突然郵送され、内容を確認すると不利な条件が追加されていた
- 家賃保証付きサブリース契約で、「空室時は保証額を減額する」などの条件変更を事後通知された
- 管理会社から一方的に費用の値上げの通知が届いたが、事前説明が一切なかった
- 重要事項説明を受けておらず、更新時に知らない手数料が追加されていた
このような説明不足・事後変更があると、オーナーは想定外の支出を強いられるうえ、契約解除や損害賠償請求など法的対応が必要になる場合もあります。また、サブリース契約では契約期間が長期に及ぶため、一度不利な条件が追加されると、解約しても損失が残るリスクがあります。
対処法・改善方法
- 変更通知が届いたらすぐにサインせず、内容を慎重に確認する
- サブリース契約では、家賃保証条件・中途解約条項・修繕負担範囲を必ず明文化しておく
契約や特約の内容を後から一方的に変えられないよう、すべての条件を契約書面と説明書で確認する習慣を持つことが、トラブルを防ぐ最大の対策です。
悪質な管理会社による金銭トラブル(預り金の流用・入居者への不正請求)
最後に、とくに悪質な管理会社に当たってしまった場合の重大なトラブルについても解説します。
管理会社がオーナーの資金や入居者から預かった金銭を流用したり、契約に定めのない費用を入居者に請求したりするケースがあります。
こうした行為は「財産の分別管理」義務違反や、「賃貸住宅管理業法」で禁止されている入居者からの金銭受領行為に該当する重大な違反です。
悪質な管理会社による金銭トラブルの例
- 入居者から徴収した敷金や共益費を、会社の運転資金に流用していた
- オーナーへの送金を滞らせ、資金繰りのために預り金を一時的に転用した
- 管理受託契約に記載がない「特別対応費」「更新事務費」などを入居者へ請求していた
- 修繕や清掃の名目で不当な追加費用を徴収し、オーナーに報告していなかった
このようなトラブルは発生頻度こそ低いものの、ひとたび起きてしまうと、オーナーと入居者の双方に深刻な影響を及ぼします。入居者から苦情が出れば、物件全体の信用が失われ、再募集にも悪影響が出るおそれがあります。
対処法・改善方法
- 契約書に「入居者からの金銭受領に関する禁止事項」を明記する
- 「財産の分別管理」を実施しているかを必ず確認する
- 賃貸住宅管理業者としての登録があるかかどうかを含めて、信頼できる管理会社かをしっかり確認する
これらの確認を怠ると、金銭トラブルが発覚した際に法的対応を余儀なくされる可能性があります。
逆に、分別管理や金銭受領ルールが整っている会社を選べば、オーナー資金と入居者の信頼を守る賃貸経営が実現できます。
トラブルを未然に防ぐためにオーナーができること5つ
ここまで、入居者や管理会社との間で起こりやすい具体的なトラブル事例とその影響について解説しました。
これらのトラブルの多くは、偶然起きたことではなく、オーナーと管理会社の間の契約の曖昧さや、ルール不足、管理会社の力量不足などに起因しています。
そこで本章では、管理会社に任せきりにせず、オーナーが主体的にトラブルの発生を防ぎ、安心して賃貸経営を続けるための具体的な予防策と行動基準をご紹介します。
トラブルを未然に防ぐためにオーナーができること5つ
- 契約内容・ルールなどを細かく決めておく
- 入居者トラブルを早期に把握できる仕組みをつくる
- 管理会社に任せきりにせずオーナー自身も確認する
- トラブルが起きたときは原因を特定して再発を防ぐ
- トラブルの原因が管理会社にあると感じたら変更を検討する
ぜひ、ご自身の物件の管理体制をイメージしながら読み進めてみてください。
契約内容・ルールなどを細かく決めておく
ここまで解説したように、賃貸管理のトラブルは、管理会社とオーナーの「契約範囲の認識ずれ」から起こるケースが非常に多くあります。
「どこまで任せられるのか」「追加費用が発生する基準はいくらなのか」「どんなルールで対応してもらうのか」が曖昧なままだと、対応を断られたり想定外の請求を受けたり、入居者対応が後手に回ったりする原因になります。
こうしたトラブルは、契約書の内容が抽象的であることや担当者ごとに判断が異なることが原因です。つまり、ルールをあらかじめ細かく文書化しておくことで、無用なトラブルを防げます。
契約内容・ルールなどを細かく決めておく具体例
- どこまで委託できるかを明確にし、「基本業務」「追加業務」「非対応業務」に分けて書面化する
- 追加費用が発生する場合はいくらなのかを定めて、事前に文書化してもらう
- 「3万円以上はオーナー承認を行う」「どこまでは管理会社の裁量で行うのか」など金額基準を設ける
- 対応ルール(修繕の判断基準、初期対応、報告のタイミングなど)を具体的に取り決める
契約内容やルールを「見える化」しておくことは、誤解をなくすだけでなく、信頼関係を長く保つうえでも不可欠なステップです。
また、実際にトラブルが起きた時点でやりにくさなどを感じたら、必要に応じてルールを見直す運用も大切です。
入居者トラブルを早期に把握できる仕組みをつくる
早期に適切に対処していれば収束していたトラブルも、放置されたり、ひどい対応をされたりしたことによって深刻化・長期化することがあります。
本来は入居者対応の一次窓口は管理会社ですが、オーナーも積極的に早期介入することで、事態を迅速に収束できるケースも多いのです。
管理会社任せにせず、オーナーが主体的に情報を得る工夫をしておくことが、未然防止につながります。
入居者トラブルを早期に把握するための具体例
- 一次対応を丸投げせず、揉める前に早めに連絡してもらう体制にする
- 管理会社と良い関係を築いておき、日ごろから相談しやすい関係を築いておく
- 意見箱やオンラインの問い合わせフォームを設置し、小さな声も拾えるようにする
- 入居者管理システムを導入し、クレームや修理依頼をオーナー側も管理できるようにする
- 定期的に入居者アンケートを実施し、満足度や改善要望を集める
- オーナー自身も月1回程度は物件を巡回し、現場の雰囲気や住人の声を直接確認する
管理会社からの連絡をめんどくさがっていると、担当者から「あのオーナーには連絡しづらい」と思われているかもしれません。
賃貸管理トラブルを防ぐためには、コミュニケーションを絶やさず、問題が起きたときにすぐ報告が来る関係を築くことが重要です。
管理会社に任せきりにせずオーナー自身も確認する
トラブルを防ぐためには、管理会社に任せきりにせず、オーナー自身が定期的に状況を確認することが不可欠です。
どんなに信頼できる管理会社でも、人為的なミスや報告漏れ、判断のズレは起こりえます。報告書や見積書、契約内容を自分の目で確認せずに放置してしまうと、小さな不備が積み重なり、後から金銭トラブルやクレーム対応の遅れにつながることがあります。
任せきりにせずオーナー自身も確認する具体例
- 月次報告書や入出金明細の金額・内容に不明点がないかを確認する
- 修繕や工事の見積書・請求書を見て、作業内容や金額の妥当性を把握する
- 入居者対応やクレーム処理の報告を定期的に共有してもらう
- 契約書や特約事項を更新時に必ず再確認する
- 管理会社とのやり取りを記録し、疑問点はその場で確認する
オーナーが主体的に確認を行う習慣を持てば、早期発見・早期修正が可能になりますし、管理会社も「ちゃんと対応しなきゃ」という意識が高まります。
安定した賃貸経営を続けるためには、任せきりにせず、常に情報を自分で把握する姿勢を持つことが重要です。
トラブルが起きたときは原因を特定して再発を防ぐ
どんなに気を付けていても賃貸管理にトラブルはつきものです。もしトラブルが発生してしまったら、「なぜ起きたのか」を正確に特定して再発防止まで行うことが重要です。
「担当者のミス」「入居者の態度が悪い」など表面的な原因ではなく、「仕組みやルール作りで防げなかったか」「同じことが起きないためにはどうしたらよいか」を考えましょう。
原因を特定して再発を防ぐ具体例
- 入居者トラブルが原因の場合:契約書や掲示物などで生活ルールを再周知し、注意喚起文書を配布する
- 設備や建物の不具合が原因の場合:定期点検や巡回の頻度を増やし、チェックリストを作成する
- 報告・連絡体制が原因の場合:緊急時の連絡経路や報告フローを見直し、24時間対応窓口を明確化する
- 注意や対応の仕方が原因の場合:管理会社の担当者教育を行い、トラブル対応マニュアルを整備する
原因をあいまいにしたままだと、根本的な原因が残っている状態が続くため、同様のトラブルが再発してしまいます。トラブル対応を「経験値」として蓄積し、同じ失敗を繰り返さないようにしましょう。
管理会社が非協力的な場合は、管理会社の変更も視野に入れることをおすすめします。
トラブルの原因が管理会社にあると感じたら変更を検討する
賃貸管理のトラブルが発生・長期化する背景には、管理会社の対応力不足や連絡体制の不備が関係しているケースも少なくありません。
何かあった時の一次対応は管理会社が行うため、「入居者対応が遅い」「対応するときの口調が横柄」「事なかれ主義で対応してくれない」など初期対応が原因で問題が大きくなるケースも多くあります。
トラブルの原因が管理会社にあると感じたときは、まず「何が原因で信頼できなくなったのか」を整理し、改善が見込めない場合には管理会社の変更を検討するのが賢明です。
とくに賃貸管理会社の変更を検討したほうがいいケース
- トラブルが一時的なものではなく、担当者の問題ではなく会社全体の体質によるものだと感じる場合
- 改善要望を出しても対応が変わらず、同じ問題が何度も繰り返されている場合
- 金銭管理の不透明さや勝手な契約変更など、信頼を損なう行為が見られる場合
- 担当者変更後に引継ぎが行われず、「わかりません」で終わる対応が常態化している場合
- 口コミやオーナー間での評判が悪く、悪評が広まっている場合
こうした兆候がある管理会社は、内部体制が機能していない可能性が高く、長期的に見てトラブルを繰り返すリスクがあります。
管理会社の悪評が広まっている場合については、「管理会社の評判が悪い!口コミ確認から比較・見直しまでの完全ガイド」の記事もぜひご覧ください。
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前章までで、トラブルの原因分析とオーナーができる予防策、そして管理会社の変更(乗り換え)の必要性について解説しました。
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賃貸経営の成功は「管理会社選び」で決まる
ここまで見てきたように、賃貸管理で起こるほとんどのトラブルは、一次対応を行う管理会社のスピードの遅さや、不透明な報告体制によって起きます。
入居者の募集から日々のクレーム対応、退去時の原状回復に至るまで、「管理会社の対応力があるかないか」によって、「トラブルに発展するかどうか」が決まることも多いのです。
裏を返せば、トラブルが続く管理会社を選び続けることは、入居者の満足度を下げ、オーナーのやる気をそぎ、結果的に賃貸経営の収益悪化や損失につながります。
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賃貸管理トラブルをできるだけなくしたいと感じているオーナーこそ、管理会社選びをしっかり行いましょう。
※各社から届く家賃査定結果は相場に基づく目安であり、確定賃料ではありません。各社の提案を比較し、最終的な条件は個別の契約で確定します。
まとめ
本記事では「賃貸管理トラブル」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆管理会社と入居者間で起こりやすいトラブル6つ
・入居者対応が遅い・放置された
・家賃滞納への対応が遅く長期化してしまった
・入居者間トラブル(騒音・生活音・人間関係)を解決できない
・ルールを守らない入居者の対応をしてくれない
・修繕・メンテナンス対応が遅い
・退去時の原状回復で入居者と揉めた
◆管理会社とオーナー間でのトラブル7つ
・定期報告がない・連絡が遅い
・管理委託契約の範囲があいまいで対応を断られた
・管理会社が勝手に修繕・契約変更などを行った
・トラブル発生の報告が遅いために深刻化してしまった
・管理会社からの請求内容が不明確・不透明
・説明不足のまま一方的に契約内容を変更された
・悪質な管理会社による金銭トラブル(預り金の流用・入居者への不正請求)
◆トラブルを未然に防ぐためにオーナーができること5つ
・契約内容・ルールなどを細かく決めておく
・入居者トラブルを早期に把握できる仕組みをつくる
・管理会社に任せきりにせずオーナー自身も確認する
・トラブルが起きたときは原因を特定して再発を防ぐ
・トラブルの原因が管理会社にあると感じたら変更を検討する
賃貸管理トラブルを避けるには、管理会社の協力が不可欠です。しっかりと管理会社を比較・検討したうえで、選びましょう。
Author information
戸谷 太祐
株式会社エイムプレイス 社外取締役
賃貸経営は思い通りにいかず、不安や迷いが生まれがちです。私はオーナー様が納得して判断できる環境を整えることを使命としています。専門用語を減らし、判断に必要な情報や手順を整理し、入居者募集・原状回復・更新といった運用サイクルを仕組み化。記事発信やマッチングを通じて、初めての方でも安心して比較・検討できる環境を「レントハック」で提供しています。


