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賃貸経営で節税する方法7つ解説|それでも利益を残すのが大事な理由

最終更新日

不動産投資・副収入としての活用法

「賃貸経営で節税ってできるのかな?」
「賃貸経営で節税する場合、どの税金がどれくらい安くなるんだろう」
「賃貸経営をして節税できるなら始めてみようかなと思うけど、本当のところどうなの?」

結論からいうと、賃貸経営で節税することは可能です。さらに税金の種類によっては大きな節税効果を得ることができます。

しかしながら、節税だけを目的にしてしまうのは本末転倒であり、それよりも重要なのは「利益を出すこと」にほかなりません。

この記事では、まず「なぜ節税になるか」について事例を交えて説明し、そのうえで「節税はおまけ、利益が本質」というブレない判断軸についても解説していきます。

賃貸経営における節税の考え方としては、仕組みを正しく使って課税所得と評価額を圧縮しつつ、最終的には利益を最大化するための補助輪として活用するのが最適解です。

この記事を読めば、どの税金がどうやって節税できるのかイメージできるようになるはずです。税金を適用させる方法も含めて、節税を理解できるよう、ぜひ最後までじっくりとお読みください。

本記事の内容についての注意

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。税制は頻繁に改正されるため、実際の節税対策を検討される際は、必ず最新の税制に基づいて税理士等の専門家にご相談ください。また、節税効果には個人の所得状況や物件の条件により大きく差が生じます。

【結論】賃貸経営で節税することは可能!

結論からいえば、賃貸経営で節税することは可能です。

具体的には、(1)所得税・住民税、(2)相続税・贈与税、(3)固定資産税の3つの区分で、主に節税できるポイントが存在します。

所得税・住民税で節税できるケース例
・減価償却費を計上➡現金支出がなくても所得を圧縮できる
・修繕費や管理費を経費化➡利益が減り課税額が下がる
・赤字が出れば損益通算➡給与所得などと相殺できる
・青色申告控除や専従者給与➡所得から一定額を差し引ける
相続税・贈与税で節税できるケース例
・賃貸物件にすると評価額が下がる➡課税対象の資産額が減る
・借入金は負債として控除できる➡純資産額を小さくできる
・小規模宅地等の特例➡200㎡まで評価額を50%減額できる(一定要件あり)
固定資産税で節税できるケース例
・更地よりも住宅用地の特例が適用➡200㎡以下は課税標準が6分の1に軽減
・アパートを貸し続けることで特例を維持➡固定資産税の負担を抑えられる

ただし、賃貸経営において「節税だけに重点を置く」という考えは危険です。賃貸経営に乗り出すなら、節税を目的にするのではなく、利益を出すことのほうが遥かに重要だからです。

たとえば赤字で数十万〜数百万円を節税するよりも、入居率を上げて修繕や資金繰りを計画し、長期にわたって黒字を積み上げる方が、最終的な手残りは圧倒的に大きくなります。

節税は「おまけ」であることを忘れないということが非常に大事です。

これから賃貸経営で節税できる理由やポイントを詳しく解説していきますが、節税が目的にならないようにしてください。

賃貸経営で節税できる7つの理由を初心者向けに解説

「賃貸経営で節税は可能だが、節税はおまけ」という前章の結論を踏まえたうえで、この章では「なぜ賃貸経営が節税につながるのか」を、整理して解説していきます。

この章では、賃貸経営に特有の仕組みや制度をもとに「節税できる7つの理由」を整理します。

賃貸経営で節税できる7つの理由
・減価償却費(支出をともなわない経費)を計上できるから
・賃貸経営にかかった経費を計上できるから
・赤字を他の所得と相殺する「損益通算」ができるから
・各種控除を使えるから(青色申告特別控除・専従者給与など)
・資産評価を下げる効果があるから(相続税・贈与税・固定資産税)
・借入金を活用して評価額を圧縮できるから(相続・贈与・事業承継)
・黒字が大きくなったら法人化で税率を下げられるから

賃貸経営の節税は、大別すると二本柱になっており、
(1)所得面:減価償却・経費・控除・損益通算で課税所得を圧縮
(2)資産面:評価減と借入金控除で純資産額を圧縮
で成り立っています。

仕組みを理解して、自分にとってはどの部分が節税になるかを見極められるよう、イメージしながら読み進めてみてください。

減価償却費(支出をともなわない経費)を計上できるから

賃貸経営においては、減価償却費をうまく活用することで大きな節税効果を得ることができます。

減価償却とは、建物や設備など年数が経つと価値が下がる性質を持つ「固定資産」について、価値の減少に合わせてその減少分を毎年の経費として計上できる仕組みです。

たとえば法定耐用年数が22年の木造アパートを8,800万円で建設した場合、税務上は22年間にわたって少しずつ価値が減るとみなし、1年ごとに400万円ずつ減価償却費として計上していく仕組みです。

建物取得時には実際に現金支出が発生していますが、減価償却により、その支出を法定耐用年数にわたって分割して経費計上できます。そのため、建物取得後の各年度では現金支出を伴わずに経費計上が可能です。

減価償却費として計上できる項目と法定耐用年数の例(新築の場合)
【建物本体】
・木造アパート:22年
・鉄骨造(3mm以下):19年
・鉄骨造(3mm超4mm以下):27年
・鉄筋コンクリート造(RC造マンション):47年
【主要な設備】
・エレベーター:17年
・電気設備、給排水・衛生設備・ガス設備:15年
・消火、排煙、災害報知設備など:8年
・家庭用エアコン、家庭用ガス給湯器、照明器具:6年
※土地は経年劣化しないため減価償却対象外となります。
※上記の法定耐用年数は、新築物件の場合の基準です。中古物件の場合は、残存年数などをもとに別の計算ルールが適用されます。
節税できる金額のイメージ
木造アパートの建設費用8,800万円(法定耐用年数22年)を減価償却費に計上できる場合、22年間にわたって毎年400万円(=8,800万円 ÷ 22年)を減価償却費として計上できる
・所得税+住民税の税率が15%(課税所得金額195万円以下)の方の場合、
単純計算で400万円×15%=60万円節税
できる
・所得税+住民税の税率が30%(課税所得金額330万~695万円以下)の方の場合、
単純計算で400万円×30%=120万円節税
できる
・所得税+住民税の税率が55%(課税所得金額4,000万円以上)の方の場合、
単純計算で400万円×55%=220万円節税
できる
※実際の税率は各種控除により変動します。

減価償却費は賃貸経営における節税を考えるうえでかなり重要なトピックです。

減価償却費の節税効果を最大化する方法については「新築か中古か」「木造かRCか」といった物件の条件にも左右されますが、これについては「5-2. 優良な物件を選ぶこと(立地・築年数・新築か中古かなど)」の中で詳しく解説します。

賃貸経営にかかった経費を計上できるから

賃貸経営で節税できる大きな理由のひとつとして、支出を経費として計上できるという点も挙げられます。

サラリーマンのような給与所得者の場合は、基本的に支出を経費にすることはできず、給与所得がそのまま課税対象となります。賃貸経営では必要な支出を「経費」として扱うことができ、その分、課税対象となる利益を小さくできる仕組みです。

経費として計上できる支出は、「賃貸経営に関わる支出のうち、収益を得るために必要かつ妥当な範囲と判断できるもの」となります。

賃貸経営の経費で落とせる可能性が高い支出の例
・借入金利息(物件購入時に借り入れたローンの利息部分)
・租税公課(賃貸経営にまつわる固定資産税や不動産取得税などの税金)
・管理費用(物件管理にかかった費用や管理会社に依頼する場合の費用)
・保険料(火災保険や施設賠償保険など)
・修繕費(積立金も含む)
・通信費(インターネットの通信費用や、取引にかかった電話代・郵送代など)
・減価償却費(建物を取得した場合に毎年計上できるもの)
※上記に掲載した経費は代表的なものであり、実際には個別の状況によって計上できる経費は異なります。また、プライベートで使用した費用は経費として計上できません。
※耐用年数を延ばすようなリフォームなどは、その年に経費化できる「修繕費」ではなく、「資本的支出」として資産計上し、減価償却によって少しずつ経費化していくことになります。
経費を計上することで課税対象所得を圧縮するイメージ
たとえば年間家賃収入が500万円で、支出が200万円(借入金利息90万円+管理費用40万円+保険料10万円+修繕費60万円)、減価償却費が150万円の場合、課税対象となるのは、500万円−200万円-150万円=150万円
収入500万円すべてに課税されるのではなく、経費を差し引いた150万円が課税対象所得となります。
経費を計上せずに確定申告した場合と比べて、350万円の経費分を所得から控除できるイメージです。
・所得税+住民税の税率が15%(課税所得金額195万円以下)の方の場合、
単純計算で350万円×15%=52.5万円税金が安くなる
・所得税+住民税の税率が30%(課税所得金額330万~695万円以下)の方の場合、
単純計算で350万円×30%=105万円税金が安くなる
・所得税+住民税の税率が55%(課税所得金額4,000万円以上)の方の場合、
単純計算で350万円×55%=192.5万円税金が安くなる

経費をきちんと整理して申告することで、不動産所得の課税額を大幅に引き下げることが可能です。とくに、先ほど2-1で解説した減価償却費は「実際にはお金が出ていかない経費」であるため、負担を軽減する効果が高い項目です。

赤字を他の所得と相殺する「損益通算」ができるから

賃貸経営で節税できる理由のひとつに「損益通算」があります。損益通算とは、賃貸経営で赤字(=不動産所得のマイナス)が出た場合に、その損失を給与所得など他の所得と相殺できる仕組みです。

他の所得と損益通算できる所得
・不動産所得(土地・建物などの貸付けから生じる所得)
・事業所得(農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業から生じる所得)
・譲渡所得(資産を譲渡して得た所得)
・山林所得(伐採した山林の譲渡、または立木のままの譲渡で生じる所得)
※ただし、不動産所得のすべてが損益通算できるわけではありません。例えば「土地の取得にかかる借入金利子」など一部は対象外となるため注意が必要です。

たとえば、賃貸経営(=不動産所得)で赤字が200万円出た場合に、本業の給与所得(会社員の給料)800万円から、損失の200万円を差し引くことができるイメージです。本業のほうの所得を減らせれば、所得税や住民税を軽減できるというわけです。

損益通算のイメージ例
たとえば本業の給与所得が800万円ある人(※年収でいうとおおよそ1,200万~1,300万円程度の人が該当するゾーン)が、賃貸経営で200万円の赤字を出した場合、損益通算をすると課税対象となる所得は、800万円−200万円=600万円に圧縮できます。赤字分を差し引いた600万円が課税対象になるため、200万円分にかかる税金を安くできます。
税率を30%と仮定すると約60万円の節税効果が出る
計算です。
※実際の税率は、合計年収や控除の状況によって異なります。

本来は800万円に対して課税されるところを600万円に抑えられるため、その分所得税や住民税が軽減されます。

ただし、この仕組みを「赤字を出すために利用する」のは本末転倒です。賃貸経営は本来、利益を生み出すことが目的であり、節税をするためのものではありません。赤字になってしまったときに、損益通算で税金を抑えられると理解しておくのが正しい活用法といえます。

各種控除を使えるから(青色申告特別控除・専従者給与など)

賃貸経営は、会社員の給与所得とは大きく違い、さまざまな「控除」を使えるのが強みです。

給与所得は会社が源泉徴収を行うため、年末調整で受けられる控除は限られますが、賃貸経営を行う場合の不動産所得に関しては、さまざまな控除を活用することができます。控除で課税所得金額を減らすことができれば節税につながります。

賃貸経営で使える控除の例
・青色申告特別控除(10万円、または事業レベルの場合には55万円か65万円)
・青色事業専従者給与(事業規模と認められる場合に、15歳以上の配偶者その他の親族への給与を必要経費にできる)
・白色専従者控除額(白色申告の場合に、最大86万円を必要経費として差し引くことができる)
・小規模企業共済(掛金を全額所得控除できる)

青色申告特別控除とは、不動産所得や事業所得が発生する事業を営んでいる場合に、複式簿記などでの記帳を行うなどの要件を満たしたうえで確定申告をすると享受できる特典です。

・不動産経営が「事業規模」に満たない場合:10万円控除
・不動産経営が「事業規模」の場合:55万円控除
・不動産経営が「事業規模」かつ電子帳簿保存・e-Tax申請など要件を満たす場合:65万円控除

※事業規模の判定は、おおむねアパート・マンション10室以上または貸家5棟以上が目安とされていますが、実際は貸付規模、管理の状況、他の所得の状況等を総合的に勘案して実質的に判断されます。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

控除を活用した場合の節税イメージ

たとえば、不動産所得が事業規模と認められ、電子帳簿保存やe-Tax申請の要件も満たした場合、
  • 所得から65万円控除できる
  • 事業規模で賃貸経営を行う場合で、配偶者などに仕事を手伝ってもらって給与(年間120万円)を支払ったとき、青色専業専従者給与として120万円を経費として計上できる
この2つの控除を利用することで、所得を65万円+120万円=185万円圧縮することができます。

青色申告にすることでさまざまな特典があるので、賃貸経営での節税を考えている方は、青色申告を行うことを基本に考えてみると良いでしょう。

資産評価を下げる効果があるから(相続税・贈与税・固定資産税)

賃貸経営は、給与所得と大きく異なり「資産の評価を下げる効果」があります。これにより、相続税や贈与税、固定資産税の負担を抑えることができます。

たとえば、同じ1億円でも「現金」と「賃貸物件」では評価額が異なります。現金は1億円そのままが評価額ですが、アパートやマンションなどの賃貸物件は、借家権割合や貸家建付地として評価が下がるため、課税対象金額を抑えられるのです。

課税対象金額が下がれば当然税金が安くなりますので、節税につながるというわけです。

賃貸経営で評価が下がる仕組みの例
【相続税】
現金1億円のまま相続すると、評価額はそのまま1億円
➡1億円でアパートを立てて相続すると、借地権割合(地域によって30%~90%)や借家権割合(30%固定)が考慮され、評価額が6,000万円程度まで下がることがある➡相続税の節税につながる
【贈与税】
同様に、現金をそのまま贈与するより、賃貸物件として贈与する方が評価額が低くなり節税につながる
さらに、親や祖父母からの贈与の場合、特例贈与財産の税率を適用すれば、通常の贈与よりも税率が安くなる
【固定資産税】
更地では課税標準額にそのまま税率がかかるが、アパートを建てて「住宅用地」になると「住宅用地の特例(固定資産税・都市計画税)」が適用される。これにより、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1に軽減される。
※居住用として貸していることなど一定の条件を満たす必要あり
相続における節税イメージ
【節税対策を講じない場合】
1億円の現金をそのまま相続した場合:1億円に対して相続税がかかる
【節税対策としてアパートを建てた場合】
1億円で土地を購入してアパート経営を始めた場合:評価額6,000万円(あくまで一例)
➡4,000万円分が課税対象から外れるため、相続税率が30%なら、単純計算で1,200万円の節税効果がある

評価が下がる仕組みは「実際に人に貸していること」が条件となります。空室が多いと賃貸割合が下がり、効果も小さくなるので注意しましょう。また、贈与や相続の特例は頻繁に改正があるため、必ず税理士など専門家に確認することが重要です。

なお、同じ仕組みは事業承継の場面でも有効です。例えば、不動産管理会社を法人化して株式を子どもに贈与する場合も、貸家建付地や借家権割合による評価減が反映されるため、贈与税の負担を軽くできます。

借入金を活用して評価額を圧縮できるから(相続・贈与・事業承継)

賃貸経営で借入金を使うことで、相続や贈与、事業承継の場面で用いられる「相続税評価額」を大きく圧縮できる効果があります。

ここでいう「相続税評価額」とは、相続税だけでなく贈与税や株式評価(事業承継時)にも共通して用いられる財産評価基準のことです。

借入金が節税につながる仕組み
・相続税や贈与税は「総資産 − 負債」で課税対象額を計算する
・アパート建築のために借入をすると、その借入金は「負債」として全額控除される
・一方で、建物や土地は「時価」より低い評価額で計算される(固定資産税評価額や借家権割合の評価減など)
➡資産側は圧縮され、負債はそのまま控除されるため、純資産額が小さくなり、相続・贈与・事業承継での税負担を減らせる
相続における節税イメージ
【節税対策を講じない場合】
相続税評価額が1億円の土地を所有している場合、そのまま相続すると1億円が課税対象
【節税対策としてアパートを建てた場合】
1億円の土地に8,000万円のアパートを建て、借入金8,000万円を利用した場合
・土地評価額:貸家建付地として約20%圧縮 → 約8,000万円
・建物評価額:固定資産税評価額ベースで約6,000万円
・借入金:▲8,000万円
純資産評価額:6,000万円(8,000万+6,000万−8,000万)
= 更地のまま相続した場合より大幅に圧縮できる

このスキームは、事業承継にも有効です。ただし、もちろん借入金は当然「返済リスク」を伴うため、キャッシュフロー計画が不可欠です。節税だけを目的に借入をすると、経営が赤字になり本末転倒になることもあるので注意しましょう。

※税制改正で扱いが変わる可能性があるため、必ず最新情報を税理士に確認してください。

黒字が大きくなったら法人化で税率を下げられるから

賃貸経営では、規模が大きくなって黒字が増えると法人化することで節税できるケースがあります。目安としては、課税所得が900万円を超えたあたりから法人化の節税効果が出やすいといわれています。

なぜなら、個人の所得税は累進課税で課税所得金額が増えるほど税率が上がり、最大で45%に達する一方、法人税は一定水準(最大23.2%)で安定しているからです。

地方法人税、法人住民税、法人事業税などを合わせても大法人で約30.6%程度です。

個人と法人の税率の違い(目安)
個人(所得税)
・課税所得900万円超:33%
・課税所得1,800万円超:40%
・課税所得4,000万円超:45%
法人(法人税)
・所得800万円以下の部分:15%(中小法人の場合)
・所得800万円超:23.2%(中小法人以外の法人は一律23.2%)
法人化で節税するイメージ
課税所得:1,500万円(給与など他所得がないと仮定)の場合、所得税率33%、住民税は一律10%なので、ざっくり計算すると所得1,500万円×43%=645万円の税負担となります。
法人化すると、法人税率:約23.2%(800万超部分)+住民税・事業税を含めてもおおむね30%前後なので、法人税などをざっくり計算すると、1,500万円×30%=450万円の税負担となります。
法人化により、約195万円の節税効果を期待できるケースといえます。
※ただし、法人化すると個人の給与所得などとの「損益通算」はできなくなります。
※設立費用や顧問税理士費用、社会保険料負担、固定費、事務負担も増えるため、総合的な判断が必要です。
※一般的には「所得が900万円超あたりから法人化が有利になりやすい」とされています。

黒字が大きくなるほど、個人より法人の方が低い税率で済みます。さらに、役員報酬をオーナーに支払うことで法人の経費にできることや、福利厚生費や交際費など、法人なら経費化できる範囲が広がるなどのメリットもあります。

ただし、法人化による節税効果が発生するラインは慎重に見極める必要があります。また、法人化には良い面だけではなく、社会保険の負担や設立・解散にかかわる費用、税理士への顧問料、損益通算ができなくなるなどのデメリットもあります。

税務の専門家に相談したうえで、自身の状況や今後の収益計画をもとに法人化のタイミングを決めるようにしましょう。

賃貸経営での節税方法を「税金の種類別」に解説

2章で「なぜ賃貸経営で節税できるのか」を理解したところで、ここでは税金の種類ごとに「どうやって節税が反映されるのか」「どんな手続きが必要なのか」を見ていきます。

確定申告のように自分で申告するものもあれば、自治体が自動で計算するものもあります。

所得税・住民税の節税を反映させる方法

賃貸経営で行った節税の工夫は、最終的に年1回行う「確定申告」を通じて「所得税」と「住民税」に反映されます。

所得税・住民税が軽減される例
減価償却費を計上する
→ 現金の支出がなくても所得を圧縮できる
修繕費や管理費など経費を計上する
→ 利益が減り課税額が下がる
赤字が出れば損益通算する
→ 給与所得などと相殺できる
青色申告特別控除や専従者給与を活用する
→ 所得から控除できる

これらを合算した結果、課税所得が少なくなり、税金の負担が下がります。

所得税・住民税を節税するときの手続きの流れ
・不動産賃貸業を開始してから2カ月以内、または適用を受けようとする年の3月15日までに税務署に青色申告承認申請書を提出する
・毎年2月16日〜3月15日に、前年の家賃収入と経費をまとめて「不動産所得」として確定申告する
・減価償却費・経費・損益通算・各種控除を反映した結果、課税所得が圧縮される
(所得税を払いすぎている場合は、還付金が振り込まれることもある)
・確定申告の内容は市区町村に自動的に共有され、翌年度の住民税が少なく計算される

節税の結果は「確定申告」という1回の手続きに集約されます。確定申告をしていれば、住民税の申告は別途する必要はありません。住民税の軽減は翌年度に反映されて、6月ごろに金額の通知が来るはずです。

自己申告制なので、申告を忘れるとせっかくの節税効果が反映されません。税理士や税務署の相談窓口を活用しながら、慎重に手続きを行いましょう。

相続税の節税を反映させる方法

賃貸経営は、自分が財産を遺したい相手に対して、あらかじめ相続税対策として準備できる方法です。

財産を現金や更地で残すよりも、建物を建てて賃貸経営をしておいた方が「評価額」が下がり、子どもなどの相続人が支払う相続税を軽くできます。

相続税を節税できる例
・1億円で建てたアパートを相続 → 建物は借家権割合で評価が下がる/土地は「貸家建付地」として評価が下がる
・小規模宅地等の特例(相続税) → 賃貸住宅の建物が建っていれば、貸付事業用宅地等として200㎡まで評価額を50%減額できる(一定要件あり)
・ 借入金 → 借入金は「負債」として相続税評価額から全額差し引くことができ、資産評価を圧縮できる

つまり、更地で残すよりも建物を建てて貸しておいた方が、土地を含めて相続税評価額を大きく下げられる仕組みです。

相続税を節税するときの手続きの流れ
・親(被相続人)が生前にアパートを建てるなどして賃貸経営を始める
・相続発生時、子ども(相続人)は「評価額が下がった状態」で申告できる
・相続開始から10カ月以内に、相続人が相続税の申告・納税を行う

節税効果は「親が残す資産の形を工夫した結果」で生まれますが、実際に納税するのは相続人となりますので、相続人が相続税を申告する流れになります。

なお、平成30年の税制改正により、貸付事業用宅地等については、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した場合、小規模宅地等の特例の適用が制限されるようになりました。つまり、直前の節税対策は効果が薄れてしまう点に注意が必要です。

相続税対策は「早めに準備しておくこと」が大切です。また、相続税に関する税制は変更する可能性があるので、かならず最新情報を確認し、専門家に相談することをおすすめします。

贈与税の節税を反映させる方法

贈与税は、相続税と同様に「自己申告制」であり、財産を受け取った人が計算して申告・納税します。

贈与税を節税できる例
・不動産を贈与すると現金よりも評価額が低くなるため、贈与税の負担を抑えることができる
・とくにアパートのような収益物件では、借家権割合や賃貸割合の控除が効くため、現金贈与より節税効果が大きくなる
・法人化して不動産を管理している場合には「株式の贈与」という形になる
(このときの株式評価額は「会社の資産 − 負債」で算出されるため、借入金が多いほど評価額が下がる)

なお、暦年課税(年間110万円まで非課税)と相続時精算課税(最大2,500万円まで非課税)の2つの制度があり、状況に応じて選択できます。

どちらの制度を使うか、また贈与のタイミングをどうするかは将来の相続にも影響するため、税理士に相談してシミュレーションするのが安全です。

贈与税を節税するときの手続きの流れ
・贈与が行われた年の翌年に、受け取った人が不動産の評価額や特例を反映したうえで、贈与税を計算して確定申告を行う

以下のような贈与税独自の制度も活用しながら、申告を行いましょう。

・暦年贈与:年間110万円までは非課税となる制度
・相続時精算課税制度:最大2,500万円まで非課税で贈与可能(ただし相続時に精算となる)
・特例贈与財産:直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与は、一般贈与より税率が低くなる

なお、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されてしまう(相続税に戻される)ため、こちらも早めの対策がおすすめです。

固定資産税の節税を反映させる方法

固定資産税は、土地や建物を所有している人に毎年かかる税金です。税率はおおむね1.4%(標準税率)で、都市計画税(0.3%)が加わる場合もあります。

所得税や住民税のように確定申告で自分が計算して申告する仕組みではなく、市区町村が評価額をもとに計算し、毎年5月〜6月ごろに納税通知書を送ってきます。 そのため、オーナー自身で複雑な計算をする必要はありません。

固定資産税を節税できる例
更地のままだと特例はなく、評価額にそのまま税率がかかるが、アパートを建てて貸すことで「住宅用地」の特例が適用される

固定資産税の計算は自治体が行うため、オーナー自身が計算をしたり申告したりする必要はありません。ただし、償却資産(土地・家屋以外の設備)に関しての固定資産税については、毎年1月31日までに申告が必要です。

自治体であっても固定資産税の計算を間違うことはあるため、念のため自分でも内容を確認することをおすすめします。また、アパートの空室が多すぎると「住宅用地」と認められず、特例の軽減措置が受けられないケースがあります。

賃貸経営の節税効果は大きいが「利益を出すこと」の方が大切

ここまで説明したように、賃貸経営を行う中ではさまざまな節税につながるアクションをとることが可能です。しかしながら、「節税できるから」という目的で賃貸経営に乗り出すのは本末転倒ですし危険です。

よくある「赤字を出して損益通算で数百万円節税できる」という考え方は、一見お得に見えても、そもそも赤字になった時点で手元の大切な資金が失われている状態です。たとえば100万円赤字を出して20万円の税金が戻っても、残りの80万円は確実に失われているのです。

一方、たとえば20戸規模の一棟マンションを安定経営した場合を考えてみましょう。年間1,680万円の家賃収入からローンや経費を差し引いても、400万円〜500万円の黒字を残せるケースは珍しくありません。これを30年間積み上げれば、1億円を超えるキャッシュフローになります。

つまり、赤字を出して数百万円の節税をするよりも、しっかりと黒字を出して長期的に億単位の利益を築くほうが圧倒的に有意義なのです。

節税は利益をさらに増やすための「補助的な仕組み」にすぎません。赤字を受け入れてまで優先するのではなく、まずは健全な黒字経営を目指すことが、賃貸経営で成功するための本質です。

実際、節税にばかり目を向けて経営の中身を軽視すると、「空室が埋まらず赤字が続く」「修繕費を見込んでおらず資金ショートする」といった典型的な失敗に陥りやすくなります。

次の5章では、そうした失敗を避け、確実に利益を残すために押さえておくべきポイントを解説していきます。

節税目的は危険!賃貸経営で気を付けるべき4つのポイント

節税よりも「利益を残すこと」を重視するためには何に気をつければよいのでしょうか。ここからは、節税以上に重要な賃貸経営の成功ポイントにフォーカスして解説していきます。

賃貸経営で気を付けるべきポイント
・修繕や資金繰りを含めた資金計画を立てること
・優良な物件を選ぶこと(立地・築年数・新築か中古かなど)
・空室を極力なくして入居率を上げること
・対応の良い管理会社を選ぶこと

節税テクニックに目を奪われがちな方こそ、ぜひ「利益を残す経営」という観点を持って読み進めてみてください。

修繕や資金繰りを含めた資金計画を立てること

前章で触れたように、賃貸経営では「節税できるから支出する」といった発想ではなく、利益を残すことこそが本質です。そのために欠かせないのが、修繕費やローン返済、税金などを含めた資金計画です。

たとえば、外壁の修繕や給湯器の交換は必要な支出であり、経費にできるため節税効果もあります。しかし実際には現金が出ていくため、節税分以上に資金が減る可能性もあります。

赤字経営で節税を狙うのは本末転倒です。修繕費と資本的支出を区別し、長期的な資金繰りを考えることが何より大切です。節税はあくまで一時的な効果にすぎず、安定して利益を残せる経営を目指すことが本質だといえます。

賃貸経営において大切なのは、節税効果を狙うことではなく、修繕を含めた現実的なキャッシュフロー計画を立て、手元に資金を残すことです。賃貸経営に乗り出すなら、節税を目的にするのではなく、将来を見据えた資金計画を立てることが大切です。

優良な物件を選ぶこと(立地・築年数・新築か中古かなど)

利益をしっかり残すためには、まず収益性のある物件を選ぶことが欠かせません。どれだけ節税を工夫しても、家賃収入そのものが伸びなければ経営は成り立ちません。

賃貸経営の節税を考えるうえでよく言われるのが「中古木造アパートは減価償却が短いため、節税効果が大きい」という考え方です。確かに、築年数の経った木造物件は短期間で多額の減価償却費を計上できるため、所得税や住民税の圧縮効果が高いのは事実です。

※ただし、中古物件の場合、減価償却期間が短くなる分、早期に減価償却が終了します。減価償却終了後は経費計上できなくなるため、その後の税負担増加も考慮した長期的な収支計画が必要です。

しかしこうした節税効果を狙って、それだけを目的に物件を選ぶのは危険です。築古物件は修繕リスクや空室リスクが高まりやすく、思った以上に利益が残らないケースも多いからです。逆に、RC造の物件は減価償却期間が長いため節税効果は限定的ですが、耐用年数が長く入居者からも人気が高く、長期的に安定した収益を得やすいという特徴があります。

例えば、同じ1億円の投資でも「新築木造アパート」と「中古RCマンション」では大きな違いがあります。

新築木造アパート(投資額1億円)
・建築費が高いため利回りは4〜5%程度にとどまる
・耐用年数22年 → 毎年約450万円の減価償却を計上でき、節税効果は大きい
・ただし築後10年を過ぎると家賃下落が進みやすく、入居率の維持が課題になる
中古RCマンション(築20年、投資額1億円)
・同じ1億円でもRC造なので耐用年数は47年
・残存耐用年数は27年 → 毎年約370万円の減価償却を計上可能
・修繕リスクはあるが、耐久性や入居者人気が高く、長期的に安定した運営がしやすい

このように、同じ投資金額でも「築年数」や「構造」によって、節税の仕組みも利益の出方も大きく変わります。節税効果だけに目を奪われず、物件の魅力や将来の修繕リスク、入居需要を冷静に見極めることこそが、賃貸経営を成功させるために必要な考え方です。

空室を極力なくして入居率を上げること

どれだけ節税効果の高い物件を選んでも、入居者がいなければ家賃収入は得られません。利益を残すためには「空室を極力なくす」ことが何より重要です。

たとえば、家賃収入が年間1,000万円の物件で入居率が90%なら収入は900万円ですが、入居率が80%まで下がると収入は800万円に減ってしまいます。10%の差で年間100万円の違いが生まれる計算です。

節税効果で数十万円を浮かせるよりも、入居率を高めて安定した収入を確保する方が、経営へのインパクトははるかに大きいといえます。

空室を減らすためには、需要に合った家賃設定やリフォーム・リノベーション、ターゲットに合わせた広告戦略などが欠かせません。また、管理会社の入居付け力によっても結果は大きく変わります。

節税は賃貸経営を有利にする一要素にすぎません。利益をしっかり残すためには、空室をなくし入居率を高める取り組みこそが最優先課題です。

対応の良い管理会社を選ぶこと

空室を減らし安定した利益を確保するためには、管理会社の存在が欠かせません。物件の募集力や入居者対応の質によって、経営の安定度は大きく変わります。

たとえば、同じエリア・同じ条件の物件でも、管理会社の入居付けスピードが1か月違うだけで、年間の家賃収入は大きく変動します。1室あたり家賃7万円の場合、入居付けが1か月遅れるとその分で7万円の機会損失となり、複数戸あれば年間100万円以上の差がつくこともあります。

また、入居者からのクレーム対応や修繕手配が遅い管理会社では、退去リスクや評判の低下につながり、入居率の悪化を招きかねません。逆に、対応の早い管理会社に任せれば、オーナーの手間を省けるだけでなく、入居者満足度の向上によって長期入居が期待できます。

賃貸経営に乗り出すなら、節税を目的にするのではなく、空室対策や入居者対応に強い管理会社を選び、利益を最大化することを第一に考えるべきです。

賃貸経営の成功には信頼できる管理会社選びが不可欠

ここまで見てきたように、賃貸経営は節税の仕組みを理解することも大切ですが、それ以上に「利益を残すこと」が本質であることを忘れてはいけません。

優良な物件を選び、空室を減らし、適切に修繕しながら運営を続けるには、オーナー一人の力では限界があります。

とくに大きなカギを握るのが「管理会社選び」です。同じ物件でも、入居付けや対応力の違いによって、年間で数十万〜数百万円の差が出ることも珍しくありません。

良い管理会社を選ぶためには、次のようなポイントをチェックすると安心です。

良い賃貸管理会社の選び方
・入居者からのクレーム対応や修繕手配が迅速か
・管理手数料とサービス内容のバランスが適正か
・定期的なレポートや説明など、オーナーへの情報提供が丁寧か
・入居付けの実績が豊富で、空室を素早く埋められるか
・家賃設定や広告戦略について、具体的な提案力があるか

とはいえ「数ある管理会社の中から、どこを選べばいいのか分からない」という方は多いはずです。そこで活用できるのが、最短60秒で査定額がわかる「マンション貸す.com」です。

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賃貸経営を成功させるために「どの管理会社を選ぶか」は避けて通れません。節税よりも利益を重視した安定経営を目指すなら、まずは信頼できる管理会社を比較することから始めましょう。

※査定金額はあくまで相場に基づく「目安」に過ぎず、実際の成約賃料は入居者募集時の交渉や市場の状況によっても変動します。確定した賃料ではないという点に注意してください。

まとめ

本記事では「賃貸経営における節税方法」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

◆賃貸経営で節税することは可能!
・しかしながら「しっかり利益を出すこと」の方が大切

◆賃貸経営で節税できる理由を初心者向けに解説
・減価償却費(支出をともなわない経費)を計上できるから
・賃貸経営にかかった経費を計上できるから
・赤字を他の所得と相殺する「損益通算」ができるから
・各種控除を使えるから(青色申告特別控除・専従者給与など)
・資産評価を下げる効果があるから(相続税・贈与税・固定資産税)
・借入金を活用して評価額を圧縮できるから(相続・贈与・事業承継)
・黒字が大きくなったら法人化で税率を下げられるから

◆賃貸経営での節税方法を「税金の種類別」に解説
・所得税・住民税の節税を反映させる方法
・相続税の節税を反映させる方法
・贈与税の節税を反映させる方法
・固定資産税の節税を反映させる方法

◆節税目的は危険!賃貸経営で気を付けるべきポイント
・修繕や資金繰りを含めた資金計画を立てること
・優良な物件を選ぶこと(立地・築年数・新築か中古かなど)
・空室を極力なくして入居率を上げること
・対応の良い管理会社を選ぶこと

賃貸経営の成功には信頼できる管理会社選びが不可欠です。複数の賃貸管理会社を比較・検討したい方は、ぜひ「マンション貸す.com」の一括査定をご活用ください。

河上 隼人

Author information

ビーワン先生

税理士/株式会社エイムプレイス 顧問税理士。

医療系の税務会計を主領域に、税務アドバイザーとして社内の数字基盤を整備。レントハックでは不動産の基礎税務(青色申告・減価償却・修繕/資本的支出・消費税の基本)をチェックリストで見える化。
趣味はアフタヌーンティー。 丁寧に淹れた一杯で、複雑な税務もすっきり整理。

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