「転勤で一時的に家を貸すことって、選択肢としてあるんだろうか?」
「家を貸す方向性はありかな?知っておくべきことって何があるだろうか」
「家を貸すときに気を付けるべきリスク・注意点を知っておきたいな」
一時的に家を離れる場合や、相続などで家を取得した場合など、「自分は住まないけど売却するのももったいないな」と考えて、貸す選択肢を考え始める方は多いでしょう。
結論からいえば、所有している家を「貸す」という選択肢はアリです。仲介会社・賃貸管理会社などに依頼して入居者を探してもらって、賃貸契約を結ぶ流れが一般的です。
しかしながら、家を貸すのはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあることを忘れてはなりません。
この記事では、家を貸すときのメリット・デメリット、そして費用・税金の基礎知識を解説したうえで、「家を貸す選択肢が向いている人」「向いていない人」を判断できるような情報をお届けします。
そのうえで記事後半では、家を貸すときのリスクを防ぐための5つのポイントもお伝えします。
最後まで読むことで、家を貸すことが自分にとって「本当に正しい選択なのか」「何から手を付けるべきか」がはっきり分かり、トラブルや赤字に悩まされない未来を想像できるようになるはずです。
家を貸して後悔しないよう、ぜひ参考にしてください。
使わなくなった家・空き家を貸すことは可能
まず結論から言うと、「空き家になった家」や「一時的に空ける家」「相続・贈与で取得したけれども使わない家」を貸すことは十分に可能です。
転勤や海外赴任でしばらく住まない家、相続で取得した実家など、さまざまな理由で「自分では活用しない家」は、不動産会社に依頼して貸し出すことで、賃貸物件として活用することができます。
専門知識がなくても、不動産会社(管理会社や仲介会社)に任せれば、入居者募集から契約、家賃集金、トラブル対応までを代行してもらえます。
※「管理会社って何?」という方は、別記事「知らないと損する!家を貸すときの管理会社に関する重要な知識」の記事をぜひお読みください。
さらに、契約の種類(定期借家契約・一時使用賃貸借契約)をしっかり選べば、「一定期間だけ貸す」「戻りたい時に再入居する」といった希望にも対応できます。
家を貸すときのおおまかな流れ
- 不動産仲介会社や賃貸管理会社に相談する
- 家を貸し出す期間や目的に応じて、適切な賃貸借契約の種類を選ぶ
- 管理方法(自主管理・管理委託・サブリース)を選ぶ
- 入居者募集を行って、住人を見つける(不動産会社が代行してくれる)
- 入居者が見つかれば、賃貸開始
基本的には、不動産会社に入居者募集や賃貸管理も任せることができるため、オーナー(貸主)に特別な知識が無くても貸し出すことはできます。
ただし、貸し出す前には、デメリットや注意点、税金の理解、リスクを防ぐためのポイントなども知っておかなければいけません。
個人で家を貸す方法については、「家を個人で貸す方法!損せず手間なく賃貸を始める基礎知識を解説」の記事もぜひ参考になさってみてください。
家を貸すと得られるメリット3つ
「家を貸す」という選択肢について前向きに検討したい方がまず知っておくべきことは、家を貸すことで得られる具体的なメリットです。
家を貸すと「家賃収入を得られる」だけでなく、将来また活用する選択肢を残せたり、家の劣化防止・防犯対策になったりというメリットもあります。
家を貸すことでどんな良いことがあるか、イメージしながら読み進めてみてください。
メリット1:家賃収入を得られる
家を貸すと得られる最も分かりやすいメリットは、家賃収入が得られることです。
たとえば、家賃が5万円なら年間60万円、家賃が10万円なら年間120万円の家賃収入が入ってきます。
この家賃収入で、家を維持するための固定資産税やローン返済、修繕費などをまかなうことができれば、自分で住まなくても家を所有しつづけることができるでしょう。
活用しなければ「負の資産」「不良資産」ですが、貸すことで有効活用できる資産に生まれ変わります。
メリット2:将来また活用する選択肢を残せる
家を貸すというのは、「手放さずに選択肢を残す」ための手段でもあります。売却と違って、賃貸に出しても家の所有権はあなたのままなので、そのまま保有できるのです。
「将来的に再び住むかもしれない」「娘が結婚したら使うかもしれない」など、いまは使わなくても将来的にまた必要になったときに、愛着のある家を残しておくことができます。
「不動産市況が上向いたときに改めて売却する」という選択肢ももちろん選べます。
市場の動きを見ながら柔軟に判断できるため、すぐに決断できないときには「家を貸す」という選択肢が有効となります。
メリット3:家の劣化防止・防犯対策になる
家を貸すことで、建物の劣化を防ぎ、防犯面でも安心できる状態を保てます。
人が住まなくなった家は、換気や通電が行われないため、通常の2〜3倍のスピードで劣化が進むと言われており、半年〜1年放置しただけで、湿気によるカビや外壁の劣化、シロアリ被害、設備の故障などが進むこともありえます。
さらに「空き家」と分かると、不審者の侵入や放火などのリスクも高まります。
一方で、賃貸として人が住んでいれば、日常的な換気・掃除・通電が自然に行われるため、家を良い状態で保ちやすく、防犯の面でも安心です。
家を貸すことは家そのものを長持ちさせるための最良の維持方法でもあります。空き家のまま放置するより、誰かに使ってもらうほうが安心です。
家を貸す場合のデメリット・注意点3つ
前の章では、家を貸すことで得られるメリットについて解説しました。しかし「家を貸す」という選択にはもちろんデメリットやリスクもあります。
本章では、家を貸す際に注意すべきリスクや注意点について解説します。
知らずに家を賃貸に出してしまうと「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。自分のケースに置き換えて、具体的にイメージしながら読み進めてみてください。
デメリット1:さまざまな費用がかかる
家を貸すと家賃収入を得られますが、貸す前にも貸している間にも一定の費用が発生します。
入居者を募集するためには安心して住める状態を整える必要があります。また、貸している間も、維持管理のための費用や必要な修繕費などが継続して発生します。
たとえば、賃貸管理を業者に委託する場合は一般的に、家賃の5%程度の委託管理料が必要になります。家賃10万円の家なら、年間で10万円×5%×12カ月=6万円の費用が発生します。
それ以外にも、ケースバイケースですが、以下のような費用がかかることを知っておきましょう。
家を貸すときに発生する費用の例
- 家を貸すときにかかる費用(リフォーム費用・仲介手数料など)
- 家を貸している間にかかる費用(委託管理手数料・修繕費用など)
- 賃貸経営に伴う税金(固定資産税・都市計画税・不動産所得に対する税金など)
さらに詳しい内訳などは次章「4-1.家を貸すときに発生する主な費用」で解説しますが、家賃収入だけでなく維持費もかかることはかならず意識しておきましょう。
デメリット2:空室やトラブルなどのリスクがある
家を貸すと、入居者が見つからない「空室リスク」や入居者とのトラブルなどのリスクがある点にも注意が必要です。
賃貸経営は、貸す相手がいる限り、予期せぬトラブルが起こる可能性をゼロにはできません。契約形態や入居者の状況によっては、貸主の希望どおりにいかないこともありえます。
家を貸すときに発生するリスクの例
- 入居者が見つからず、数カ月間家賃が入らない(空室リスク)
- 家賃の滞納が発生する(滞納リスク)
- 騒音・マナー・原状回復などの入居者トラブルが起きる
- 入居者が退去してくれない(普通借家契約ではオーナーからの契約解除が難しい)
- 家を返してもらうタイミングが自分の都合どおりにならない
こうしたリスクは確かに存在しますが、契約の種類をしっかり選んだり、貸し出す期間を設定したり、契約書をしっかり作成したり、トラブルに強い管理会社に賃貸管理を委託したりすることで、リスクを軽減することができます。
リスクを防ぐためのポイントはあらためて「6.家を貸すときのリスクを防ぐためのポイント」で解説するので、かならずお読みください。
デメリット3:手続きや管理の負担が発生する
家を貸すときには、最初の契約や手続きのほか、入居者が住んでいる間の管理や、契約更新、修繕対応、税金の処理なども必要になります。
とくに自主管理(管理を委託せず自分でやること)の場合、入居者からの連絡や修理対応などをすべて自分で行うため、負担が大きくなります。
家を貸すために必要となる手続き・管理・税金処理などの例
- 入居者募集・契約業務:賃料設定、仲介会社選定、内見対応、審査、契約書の締結など
- 家賃の徴収・督促:毎月の家賃入金確認、滞納が発生した場合の連絡、督促手続きなど
- 入居者対応:水漏れや故障などの緊急修理手配、入居者間トラブルの対応など
- 建物の維持管理・点検:設備の定期点検、庭木の剪定など
- 退去手続き・原状回復:退去時の立ち会い、精算、原状回復工事の発注など
- 経費管理・確定申告:帳簿付け、税務署への確定申告書の提出など
これらの煩雑な業務は、専門的な知識と多くの時間を要するため、オーナーにとっては大きな負担となります。
しかしながら、実際にはこれらの業務のほとんどは「賃貸管理会社」に委託することが可能です。信頼できる管理会社に委託すれば、こうした手間を大幅に減らし、安心して賃貸運用を続けることができます。
家を貸すときにかかる費用と税金の基礎知識
家を貸すデメリットとして「費用がかかること」を挙げましたが、ここからは費用や税金について具体的に紹介していきます。
- 家を貸すときに発生する主な費用
- 家賃収入と税金の関係
家を貸すことで発生する費用と税金をしっかりと理解することが、事前の資金計画においても非常に重要となります。
家を貸すときに発生する主な費用
家を貸して安定的な収益(家賃収入)を得るためには、初期費用、ランニングコスト、そして税金などさまざまな費用が発生します。
家を貸すときに発生する主な費用
- 家を貸すときにかかる費用(リフォーム費用・仲介手数料など)
- 家を貸している間にかかる費用(委託管理手数料・修繕費用など)
- 賃貸経営に伴う税金(固定資産税・都市計画税・不動産所得に対する税金など)
【家を貸すときにかかる費用(初期費用)】
| 費用の種類 |
費用の目安 |
|---|---|
| リフォーム費用 |
0円~数百万円以上 (家の状態・設備の修繕の必要性に応じて大幅に変動) |
| 仲介手数料 |
家賃の1カ月分+消費税が一般的 |
【家を貸している間にかかる費用】
| 費用の種類 |
費用の目安 |
|---|---|
| 委託管理手数料 |
家賃収入の3%〜8%程度(入居者管理をしてもらう費用) |
| 修繕費用 |
設備の修理が必要なタイミングのみだが 毎月一定額を積み立てるのがおすすめ |
| 火災保険・施設賠償責任保険など |
年間数万円程度 |
【賃貸経営に伴う税金】
| 費用の種類 |
費用の目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 |
年間10万円~15万円程度(家を貸した場合も空き家にした場合もかかる) |
| 所得税・復興特別所得税・住民税 |
給与所得など他の所得と合算した全体の課税所得に応じて決まる(確定申告が必要) |
なお、家を貸す場合のリフォーム費用は、築年数や間取りなどによって大きく異なります。
詳細な費用が知りたい方は、「家を貸す時は最低限のリフォームが必要!築年数目安や費用も解説」の記事もぜひご覧ください。
家賃収入と税金の関係
家を貸すことで得た利益は「不動産所得」となり、課税対象となります。課税対象となる不動産所得は、家を貸すことで得た収入から、かかった費用を差し引いて計算されます。
経費として差し引ける主な項目は以下の通りです。
経費として差し引ける主な項目
- 減価償却費:建物の取得費用を耐用年数に応じて毎年計上する費用(実際にお金は出ていきませんが経費になります)。
- 仲介手数料:入居者を募集・決定する際に不動産会社に支払う成功報酬
- 管理委託手数料:不動産会社に管理を委託する際にかかる月額費用
- 修繕費:設備の故障や不具合を修理・交換するためにかかった費用
- 借入金利息:家を貸すために組んだローンのうち、利息として支払った部分(元本は不可)
- 税金:固定資産税・都市計画税、印紙税など
- 保険料:火災保険料、施設賠償責任保険料など
※その他、家を貸すうえでかかった通信費や町内会費なども経費として計上できるケースがあります。ただし判断には専門的な知識があるため、税理士にご確認ください
たとえば、家を月10万円で貸し出した場合(総収入金額=年間120万円)で経費が年間70万円かかった場合には、課税対象となる不動産所得は120万円-70万円=50万円となります。
この50万円に対して税金(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかるイメージです。
もし不動産所得が赤字になった場合には、他の所得から差し引ける損益通算という節税効果を得られる可能性があります。
なお、実際の税額計算は、給与所得など他の所得と合算したうえで、その合計額に応じて税率が適用されます。そのため、実際の税額計算は複雑になります。
実際の税金の計算方法や節税方法、確定申告の必要性についても知っておきたい方は、「家を貸すときにかかる税金を把握して見通しを立てる!計算方法を解説」の記事もご覧ください。
家を貸すのが向いているケース・その他の選択肢が向いているケース
ここまでで解説したように、家を貸すことにはメリットもデメリットもあるため、家を貸すことは「誰にでも正解」となる選択肢ではありません。家を貸したい人の状況によって、「本当に貸すべきか」を判断する必要があります。
そこで本章では、「家を貸すという選択肢」と「その他の選択肢(売却や空き家のまま管理)」に分けて、目的や経済状況に合ったおすすめのケースを紹介していきます。
すべての人に最適な答えというのは無いため、自身の状況を客観的に見つめ直したうえで、状況に合う選択肢を選ぶことが大切です。
自分が「家を貸したい理由・目的」や「想定家賃や想定収支」をイメージしながら読み進めてみてください。
家を貸すのがおすすめなケース
家を貸す選択は、「将来的に家に戻る可能性がある」「安定的な副収入を確保したい」という目的を持つ方に最適な選択肢です。
とくに、以下のようなケースでは、家を貸すのがおすすめです。
期間が決まっている場合(リロケーション)
転勤や単身赴任などで自宅を離れる期間が数年単位で明確に決まっており、期間満了後には必ず自宅に戻る予定がある場合。期限を設定できる定期借家契約を活用することで、スムーズに自宅に戻れます。安定的な副収入がほしい場合
その物件の賃貸需要が高く、ローン返済や維持費を上回る安定した家賃収入が見込める場合。減価償却費などの税制メリットも活用し、資産運用として活用できます。売却を焦っておらず、相場の回復を待つ場合
現在の市場価格が低く、相場が回復することを期待している場合。いったん貸すことで家賃収入を得ながら、売却のベストなタイミングを待つ「つなぎ」の選択肢として有効です。家を貸すことに決めた場合は、しっかりとシミュレーションしたうえで、信頼できる管理会社を選び、適切な契約形態を選択することが大切です。さらに詳しくは次章で後述しています。
家を売却するのがおすすめなケース
家を貸す検討を進める中で、「オーナー業の手間やリスクを負いたくない」「収支計画が厳しい」と感じた場合は、売却を選択することも検討しましょう。
売却は、一度でまとまった資金を確保し、賃貸経営に伴う将来のあらゆる負担から完全に解放されるという大きなメリットがあります。
とくに、以下のようなケースでは、家を貸すのではなく「売却する(=現金化して手放す)」がおすすめです。
想定家賃が低く収益性が低い場合
複数の不動産会社に査定を依頼した結果、家賃収入がローン返済や管理費などの毎月の支出を下回る場合。貸し続けても持ち出し(赤字)が続くようであれば、早期に売却して損失を確定させることが賢明です。賃貸経営の手間・リスクを一切負いたくない場合
記事を読んで、入居者とのトラブル対応、設備の故障対応、管理会社との連携など、オーナー業に伴う精神的な負担や時間的な拘束が大きいと感じる場合まとまった現金がすぐに必要な場合
新しい家の購入資金や、その他の急な支出など、早急にまとまった資金を必要としている場合ただし、念のため不動産売却査定と併せて「家賃査定」も検討してみると良いでしょう。「マンション貸す.com」ならば、最短60秒で査定依頼が完了して、最大6社から提案が届きます。
家を貸さずに様子見するのがおすすめなケース
家を貸すことに伴う手間や心労など心理的な負担が大きいと感じた場合には、とりあえず貸さずに様子見をする選択肢もあります。
家を貸すことは収益を生みますが、その手間や心労が目的を上回ると感じるのであれば、無理に進める必要はないでしょう。
とくに、以下のようなケースでは、とりあえずそのまま様子見でも良いかもしれません。
入居者の管理や手続きが面倒な場合
賃貸契約の手続き、入居者審査、クレーム対応、修繕手配など、オーナー業の細々とした手間やストレスを負いたくない場合。または管理会社に任せる費用すら惜しいと感じる場合。大切な家を貸すのに心理的抵抗がある場合
家に対する思い入れが強く、他人に使用されて建物や内装が変化することに強い抵抗がある場合貸し出し期間がごく短期の場合
募集や契約手続きのコストと手間が釣り合わない場合や、半年未満など一時的に家を空ける期間が非常に短い場合ただし、誰も住んでいない空き家のまま放置すると、住宅用地の固定資産税の優遇措置が外れて税金が高くなる可能性があります。
また、建物の急速な劣化や防犯リスクも高まるため、定期的な換気や通水、清掃といった徹底した管理を継続することをおすすめします。
そのような心配も含めて、「とりあえず貸すとしたら家賃がいくらぐらいなのか」気軽に知りたい場合も、ぜひ「マンション貸す.com」の一括家賃査定をご活用ください。
家を貸すときのリスクを防ぐためのポイント
「家を貸す」と決めたのならば、気付きにくいリスクや失敗しやすい注意点をうまく回避して進めていくことが非常に重要です。
ここからは、家を貸すときのリスクを防ぐためのポイントについて詳しく見ていきます。
家を貸すときのリスクを防ぐためのポイント
- 定期借家契約を活用して「再入居できないリスク」を防ぐ
- 住宅ローンや火災保険を賃貸用に切り替える
- 厳しめの収支シミュレーションをしておく
- 自分にあった管理方法を選ぶ(自主管理・委託など)
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
リスクを知ったうえで準備や対策を知っておくことが、大切な家を安心して貸すために欠かせません。しっかり理解していきましょう。
定期借家契約を活用して「再入居できないリスク」を防ぐ
「いつまでに家に戻りたい」という希望がある場合には、オーナーが直面する最大の懸念事項である「戻りたいときに家に戻れない」というリスクを防ぐために、かならず定期借家契約を選びましょう。
通常の賃貸借契約(普通借家契約)では、入居者の居住権が非常に強く保護されているため、一度貸すとオーナーの都合だけで契約更新を拒否することはできません。
普通借家契約の場合、「オーナーが戻りたい」という理由だけでは正当事由として認められる可能性は低く、結果として高額な立ち退き料の支払いが必要になるなど、家に戻れないリスクを負うことになります。
一方で、定期借家契約は「あらかじめ設定した期間でかならず契約が終了する」ため、再入居できないリスクを低減できます。
【普通借家契約と定期借家契約の主な違い】
| 費用の種類 |
普通借家契約 |
定期借家契約 |
| 契約期間満了時 |
入居者が希望すれば、原則として契約が更新される |
期間満了をもって、契約はかならず終了する(両社の合意で更新することも可能) |
| オーナーの更新拒絶 |
「正当な事由」が必要(オーナーが住みたいという理由だけでは困難) |
理由なく終了させられる(オーナーの再入居が確実) |
| 入居者の権利保護 |
借地借家法により、非常に強い |
期間が限定されるため、普通借家契約よりは限定的 |
ただし、定期借家契約は入居者にとって期間満了での退去が前提となるため、普通借家契約と比べて、同じ条件でも賃料が安くなる(入居者がつきにくい)デメリットがある点は把握しておきましょう。
デメリットはありますが、「戻りたい時期に戻れない」リスクを考えると、定期借家契約を選ぶべきです。不動産会社と相談しながら、後悔のないよう進めていきましょう。
住宅ローンや火災保険を賃貸用に切り替える
家を貸す上で最も重大なリスクの一つが、住宅ローンや火災保険を「自分で住む用」のまま放置してしまうことです。かならず賃貸用に切り替える手続きが必要です。
とくに住宅ローンは、「自分が住む」ということを前提に金利優遇を受けているため、金融機関は賃貸への転用を厳しく制限しています。
住宅ローン返済中の場合はかならず金融機関に連絡する
住宅ローン(低金利)は、本人が住むことを前提とした契約です。金融機関に賃貸に出す旨を申し出て、賃貸用ローン(金利が高くなることが多い)への借り換えや、一括返済など、適切な手続きを踏む必要があります。無断で家を貸すことは契約違反となり、残債の一括返済を求められる可能性があるため、絶対に避けてください。
住宅ローンについては「【朗報】住宅ローン中でも家は貸せる!賃貸OKの条件と注意点とは?」の記事でも詳しく解説しています。
火災保険を見直す
自宅用の火災保険も、賃貸に出した時点で補償対象外となるケースがほとんどです。家主が加入すべきは、家主向けの「賃貸住宅向け火災保険」や「施設賠償責任保険」が含まれた保険です。これにより、入居者の失火や、設備不良による第三者への賠償事故などに対応できます。
何かあった場合のリスクが大きいので、かならず検討しておきましょう。
厳しめの収支シミュレーションをしておく
家賃収入はかならず安定するわけではありません。賃貸経営を安定させるには、空室になる可能性や相次ぐ修繕が発生する可能性も踏まえて、厳しめのシミュレーションを行い、十分な予備資金を確保しておくことが不可欠です。
とくに、自宅を初めて貸すオーナーは、楽観的な収益予想をしがちです。「周辺の家賃相場が10万円だから、貸したら年間120万円は儲かるのか」などと考えがちですが、実際には入居者が決まらなければ収入はゼロです。
また、想定外にリフォーム費用や設備の修繕費用がかかることもあります。家賃収入が120万円でも、諸費用がかさめば、手取り金額はわずかという可能性もありえます。
厳しい条件で収支シミュレーションをしておくことで、「この状況が続いたら売却する」という判断の基準を持つことができ、ズルズルと赤字を続ける事態を防げます。
空室リスクに備える厳しめなシミュレーションをしておく
入居者がすぐ見つかり継続して住んでくれる想定だけでなく、決まらない期間が3カ月や半年、1年などの場合に、収支がどうなるか計算しておくと安心です。修繕費をしっかり毎月積み立てておく
家を貸す場合の修繕費は、設備が壊れてから支出する費用ですが、突然の予期せぬ大きな出費に慌てず対応するため、毎月収入から積み立てておくことが重要
です。毎月の家賃収入から、少なくとも「家賃収入の5%〜20%程度」を修繕費として積み立てておくと安心です。
とくに、戸建て(一軒家)や築年数が経過している物件は、外壁や屋根といった大規模な修繕が必要になったり、給湯器やエアコンなどが耐用年数を超えている場合があったりするため、積立額を多めに設定しましょう。
こうしたシミュレーションや積み立てを徹底しておき、一時的な収入減や大きな出費にも耐えられる体制を構築することが、安定して家を貸し続けるための重要なリスクヘッジになります。
自分にあった管理方法を選ぶ(自主管理・委託など)
家を貸す際の管理方法には、主に「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3種類があり、オーナーの労力やリスク負担に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
管理方法によって、オーナーが負う手間とリスク、そして得られる収益が大きく異なります。
自主管理(管理ををオーナー自身で行う)
- 手数料がかからないため、収益性が最も高くなるのがメリット
- 入居者対応・工事手配などを自分でやるため、手間と精神的な負担が大きい
- 空室リスクや滞納リスクもオーナーが直接負わないといけない
管理委託(賃貸管理会社に管理業務を代行してもらう)
- 不動産会社に手数料(家賃の3%〜10%程度)を支払い、業務を代行してもらう方法
- 入居者対応や一次対応を任せることができ、オーナーの手間は大幅に軽減される
- 空室期間中の家賃保証はない(オプションで付けられることもあり)
サブリース(不動産会社が一括で物件を借り上げる)
- 不動産会社がオーナーの物件を借り上げて、入居者に転貸する方法
- オーナーの手間はほとんどなく、毎月固定の家賃が保証されるため空室リスクを回避できる
- 保証料や手数料は高くなるため、収益性は3種類の中で最も低くなる
自主管理を選ぶと高収益が期待できますが、空室やトラブル対応などすべてのリスクと手間を背負うことになります。一方でサブリースは、空室リスクや管理の手間は抑えられますが、収益が減ることを受け入れなければなりません。
どの方法も一長一短あるため、時間的な余裕や物件への関わりたい度合いに応じて、最適な管理方法を慎重に選びましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
家を貸すときのリスクを最小限に抑えるには、集客や管理を任せる不動産会社の選定が非常に重要です。
不動産会社をじっくり検討せず適当な業者に依頼してしまうと、入居者がなかなか決まらなかったり、入居者対応の不備によりトラブルを起こされたりなど、家を貸したことを後悔する事態を招きかねません。
大切な家を貸して後悔しないためには、信頼できる不動産会社を探して依頼することが欠かせません。
家を貸すための不動産会社を選ぶ6つのチェックポイント
- ポイント1:貸したい物件タイプに強い不動産屋か確認する
- リス・ポイント2:退去されにくい管理ができているか確認するト
- ポイント3:管理業務の対応範囲を確認する
- ポイント4:本当に信頼できる不動産屋なのか、経営状態と口コミを調べる
- ポイント5:担当者の対応が丁寧でスムーズか確認する
- ポイント6:複数の不動産屋を比較検討して選ぶ
優良な不動産会社を選ぶチェックポイントについて、具体的な見極め方や比較方法を知りたい場合は、「家を貸すときの不動産屋選びは比較がカギ!失敗しないポイント6つ」の記事をぜひご確認ください。
家を貸すという選択で損をしないためにも、かならず不動産会社(仲介会社・管理会社)選びにはこだわりましょう。
家を貸すときの管理会社はかならず比較・検討しよう
ここまで解説したように、家を貸すためにはリスクを避けるための準備やパートナー選びが非常に重要です。
どんなに万全に準備をしても、実際に入居者の一次対応を行う賃貸管理会社の対応が悪いと、空室やトラブルといったリスクは避けられないからです。
そこで本章では、管理会社を選ぶときの比較・検討の重要性と、その具体的な手段について解説します。
なぜ比較・検討が重要なのか
家を貸す上で失敗や損を避けるための「最適な管理会社」を見つけるためには、1つの会社に決め打ちせずに、複数の会社から提案を受けて比較することが極めて重要です。
なぜならば、管理会社によって得意な物件タイプ、提示する家賃、管理手数料、空室対策のノウハウなどが大きく異なり、一社だけの情報ではその提案の妥当性を判断できないからです。
家を貸すときの管理会社を比較・検討すべき理由
- ・管理会社によって、想定家賃の設定金額や提示される管理手数料、内容には差が出る
- ・同じ管理手数料であっても、管理会社によって依頼できる範囲・内容が異なる
- ・管理会社によって、入居者を見つけるための集客力も全然違う
- ・得意な物件タイプ(戸建てなのかマンションなのか)が、管理会社によって違う
たとえば1社だけに依頼してしまうと、その会社の提示した家賃が適正であるかを判断できず、本来よりも低い金額で貸してしまい、トータルで大損してしまう可能性もあります。
複数の会社を比較・検討することで、自分の家に合う管理会社や、有利な条件を提示してくれる管理会社を見つけることができるのです。
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※賃貸管理会社から届く賃料査定の金額は、確定賃料ではなく相場に基づく目安です。実際の賃料や条件は管理会社の査定結果・契約交渉によって変動します。
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まとめ
本記事では「家を貸すときに知っておくべき知識」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆家を貸すと得られるメリット3つ
・メリット1:家賃収入を得られる
・メリット2:将来また活用する選択肢を残せる
・メリット3:家の劣化防止・防犯対策になる
◆家を貸す場合のデメリット・注意点3つ
・デメリット1:さまざまな費用がかかる
・デメリット2:空室やトラブルなどのリスクがある
・デメリット3:手続きや管理の負担が発生する
◆家を貸すときにかかる費用と税金の基礎知識
・家を貸すときに発生する主な費用
・家賃収入と税金の関係
◆家を貸すときのリスクを防ぐためのポイント
・定期借家契約を活用して「再入居できないリスク」を防ぐ
・住宅ローンや火災保険を賃貸用に切り替える
・厳しめの収支シミュレーションをしておく
・自分にあった管理方法を選ぶ(自主管理・委託など)
・信頼できる不動産会社を選ぶ
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Author information
河上 隼人
1980年11月8日生まれ
広島県出身
株式会社エイムプレイス 代表取締役
インターネットメディア事業「マンション貸す.com」を運営し、不動産オーナーと不動産会社をつなぐ架け橋として活動。効率的で自由度の高い経営スタイルを追求しながら、自らも日々学び続けている。
趣味はトレーニングと健康的なライフスタイルづくり。毎日の冷水シャワーを日課とし、体幹トレーニングではアブローラーの“立ちコロ”を悠々こなす。数年前にお酒をやめてからは、心身ともにすっきりとした日々を楽しんでいる。
「挑戦と進化」をテーマに、自然体で自分らしい生き方を磨き続けている。


