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不動産を貸したい初心者必見!基本からわかる失敗しない賃貸の始め方

最終更新日

持ち家を貸す方法

「誰もいなくなった空き家、どうしよう……」「空いている土地を活用したいけれど、何をすればいい?」このような悩みを抱えて、大切な資産を “お荷物” にしていませんか。

不動産を貸すのは難しそうに思えるかもしれませんが、失敗しない手順と重要ポイントを押さえれば、誰でも賃貸経営をスタートできます。

この記事では、初めて「不動産を貸したい」と考えている方のために、基礎知識からわかりやすく解説します。

【この記事を読むと得られるメリット】
・不動産を貸すための正しい手順と準備方法がわかる
・管理会社とは何か、どう選べばいいかがわかる
・かかる費用と税金などお金の不安についてもクリアになる

「何から準備すればいい?」「管理会社って必要?」「税金は?」──そんな疑問をスッキリ解決しながら、不動産運用に向けた一歩を踏み出しましょう。

「不動産を貸す」ことの基礎知識

最初に、不動産を初めて貸し出す前に知っておきたい、賃貸経営の基本的な仕組みやルールから確認しましょう。

1. 個人が不動産を貸すのに資格や許可は不要
2. 借主との間で「賃貸借契約」を締結する
3. 大家さんに生じる義務
4. マンション・戸建て・アパート別の貸し方の違い
5. 土地を貸す場合

個人が不動産を貸すのに資格や許可は不要

個人が自分の所有する住宅を賃貸に出す場合、特別な資格や許可などは必要ありません。

具体的には、宅地建物取引士の資格がなくても、賃貸業の許可を取得しなくても、所有する不動産を第三者に貸すことは法的に認められています。

不動産の所有者には使用・収益・処分の権利があり、賃貸もその一環として位置付けられるからです。

参考:JICA「所有権の概念 人が物を直接支配する権利」

借主との間で「賃貸借契約」を締結する

不動産を貸したいときには、借主との間で「賃貸借契約」を締結することが必須となります。

建物や土地の賃貸借契約は、借地借家法にて定められています。

借地借家法では、借主の権利が強く保護されているため、貸主(オーナー)は契約条件を慎重に検討して、かならず賃貸借契約書の書面として証拠を残すようにしましょう。

出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」

不動産を貸したいとお考えの方のなかには、「友人や知人に貸したい」「親族に貸したい」という方もいるでしょう。その場合も、賃貸借契約書を作成することを忘れないでください。

法律の理屈上では口約束でも契約は成立しますが、書面で内容を証明できなければ、権利の主張・実行が難しくなります。つまり、家賃を滞納されても請求できないリスクがある、ということです。

※標準的な賃貸借契約書のひな型は、国土交通省サイトの「住宅:『賃貸住宅標準契約書』について」にて確認できます。

大家さんに生じる義務

賃貸借契約を締結すると、家賃収入を得る代わりに、大家さんとしての義務が発生します。

出典:国土交通省「賃貸借契約によって発生する権利義務」

大家さんには、入居者へ安全で快適な住環境を提供する責務があり、適切な対応が必要です。具体的には、建物の安全性確保や、給排水設備や電気設備の故障修理、外壁や屋根の維持管理などは貸主の責任となります。

マンション・戸建て・アパート別の貸し方の違い

不動産の種類によって、賃貸運営の特徴や注意点が変わってきます。以下に概要をまとめましたので、ご覧ください。

【不動産の種類による違い

分譲マンション:管理組合による共用部分の管理が行われているため、貸主の管理負担は比較的軽くなります。ただし管理組合への賃貸報告義務や、賃借人の管理費・修繕積立金の負担方法について事前確認が必要です。駅近などの利便性が高い物件であれば、入居付けは比較的容易です。

戸建て住宅:庭や駐車場を含めた建物全体を管理する必要があり、修繕や設備更新の判断をすべて貸主が行います。ファミリー層をターゲットにできるため長期入居が期待できる一方、原状回復費用の負担が大きくなる特徴があります。

アパート一棟:複数の部屋を同時に管理するため、空室リスクの分散効果がある反面、建物全体の維持管理責任が重くなります。共用部分の清掃や設備保守、外壁修繕など大規模な管理業務が発生します。

土地を貸す場合

一方、建物ではなく「土地のみ」を貸し出す場合は、借地借家法の借地権に関する規定が適用されます。借主の権利がより強く保護される特徴があります。

土地賃貸では借主が土地上に建物を建築することも多く、その場合には契約期間も30年以上の長期間となります。

また借地権の譲渡や建物の建て替えに関して、複雑な権利関係が生じるため、専門的な知識が不可欠です。トラブルが生じれば深刻化しやすいので、専門家(不動産会社)に早めに相談することをおすすめします。

貸せない可能性があるため注意したい不動産

一方、「貸したくても貸せない不動産」というものも存在します。

契約違反や法的トラブルに発展する可能性があるため注意が必要な不動産として、以下を確認しましょう。

1. 無断での又貸し
2. 住宅ローン返済中の物件
3. 民泊としての貸し出し(別途届出が必要)
4. 違法建築物件
5. 用途地域に適合しない使用方法での賃貸

無断での又貸し

賃借している物件を、無断で第三者に又貸しすることは、法的に禁止されています。

又貸しは原則として賃貸借契約の重大な契約違反に該当し、発覚すれば即座に契約解除される可能性があります。民法上も、無断転貸は契約解除事由として明確に規定されています(民法612条)。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。出典:民法

特殊な事情で又貸ししたい場合には、まずは貸主に相談しましょう。貸主の承諾を得て適切な手続きを行えば、又貸しできる可能性があります。

ただし、その場合でも、貸主に対する家賃の支払い義務は元の借主にあることや、元の契約の範囲を超えることはできない(用途・禁止事項・期間など)点に注意が必要です。

住宅ローン返済中の物件

住宅ローン返済中の物件を賃貸に出すことは、金融機関との契約に違反します。住宅ローンは「本人や家族が自ら居住する住宅」を前提とした低金利商品で、投資目的での利用は認められていないからです。

無断で賃貸運用を行えば契約違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。

ただし、転勤などのやむを得ない事情により一時的に居住できなくなった場合は、事前に金融機関へ相談すれば賃貸が承認される場合があります。

住宅ローン中の賃貸を検討する際は、かならず金融機関への事前相談が不可欠です。

民泊としての貸し出し(別途届出が必要)

住宅を民泊として運営する場合は、住宅宿泊事業法に基づく届出が必要です。無届けでの民泊運営は違法行為となり、罰則の対象となります。

出典:minpaku「住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて」

住宅宿泊事業法では年間180日以内の営業日数制限があり、適切な管理体制の確保が義務付けられています。また自治体によっては独自の条例により、さらに厳しい制限が設けられている場合もあります。

一方、マンションの管理規約で民泊が禁止されている物件や、住居専用地域での民泊運営が条例により制限されている地域では、届出の有無にかかわらず民泊運営ができません。

民泊をめぐっては、近隣住民とのトラブルや騒音問題により、行政指導を受ける事例も増加しています。

民泊運営を検討する際は、コンプライアンスを遵守し、要件の確認と適切な届出手続きが必須です。詳しくは厚生労働省・国土交通省・観光庁が運営する「民泊制度ポータルサイト「minpaku」」にてご確認ください。

出典:minpaku「はじめに「民泊」とは」

違法建築物件

建築基準法に違反して建築された違法建築物件は、賃貸に出すことができません。

違法建築物件の賃貸は入居者の安全を脅かすだけでなく、貸主の法的責任も問われる可能性があるため、注意が必要です。

確認申請を受けずに増築された部分がある建物や、用途変更の手続きを経ずに住宅以外の用途で使用されている建物は、違法建築に該当します。

思い当たる部分がある場合、まずは建築基準法適合状況調査を行い、現状を確認しましょう。この調査は建築士に依頼しますが、[建築基準法適合状況調査]と検索すると、調査を行っている建築事務所や機関がヒットします。

用途地域に適合しない使用方法での賃貸

都市計画法で定められている「用途地域」の制限に適合しない使用方法での賃貸は、禁止されています。

たとえば、第一種低層住居専用地域では住宅や小規模店舗以外の用途が制限され、事務所や工場としての賃貸はできません。

事前に用途制限を確認し、その特性に応じた使用法での賃貸を計画することが大切です。

不動産を貸すまでの具体的な流れ 6ステップ

続いて、不動産を貸すまでの具体的な流れを、以下6つのステップに分けて見ていきましょう。

1. ステップ1:不動産会社へ相談・家賃査定を依頼する
2. ステップ2:不動産会社を選定し契約を結ぶ
3. ステップ3:貸し出しの準備を進める
4. ステップ4:内見対応と入居審査を行う
5. ステップ5:賃貸借契約を結ぶ
6. ステップ6:鍵を引き渡して賃貸を開始する

ステップ1:不動産会社へ相談・家賃査定を依頼する

賃貸経営の第一歩は、信頼できる不動産会社を見つけて相談することです。

そのきっかけとなるのが、「家賃査定の依頼」です。適切な家賃設定は入居者確保の成否を左右するため、複数社から査定を取って市場価格を正確に把握しましょう。

「マンション貸す.com」では、一棟アパートから分譲マンション・戸建てまで、すべて査定可能です。

たった60秒の簡単入力で、厳選された最大6社から家賃提案が届きます。以下のリンクより、さっそく試してみましょう。

査定を入手したら、各会社の担当者と詳しいやりとりを進めましょう。このやりとりを通じて、多くの情報を効率的に収集できます。

【やりとりのポイント

高い査定・低い査定の理由を聞く:提示された賃料や根拠を比較検討します。極端に高い査定や低い査定にはかならず理由があるため、詳しい説明を求めて確認しましょう。

具体的な根拠を聞く:周辺の類似物件の賃料相場や、物件の築年数・設備・立地条件をどう評価したかを詳しく聞きます。客観的に自分の物件の評価を把握するために役立ちます。

ステップ2:不動産会社を選定し契約を結ぶ

不動産を貸すときには、入居者を探して契約する「仲介」とその後の「賃貸管理」を不動産会社(不動産管理会社)に委託するのが一般的です。

そのどちらかだけを委託することもできますが、専門知識が必要です。初めて不動産を貸したいという方は、入居者探しから賃貸管理まで一括して委託することを前提として考えましょう。それが最も失敗しにくいやり方です。

具体的には、ステップ1の査定を通じて出会った不動産会社の中から契約する会社を選びます。

【不動産管理会社を選定するポイント

入居者募集の力量:入居者を早く見つけて、空室期間を短縮する力のある会社かどうかが重要です。管理物件の平均空室期間データや、広告戦略(ポータルサイトへの掲載状況など)を確認しましょう。

管理業務の範囲確認:家賃集金、入居者対応、設備管理、清掃業務など、どこまでを委託できるかを明確にします。24時間緊急対応や法的トラブル対応なども含まれるか確認し、オーナー自身が対応すべき範囲を把握しておきます。

実績と評判の調査:管理戸数や入居率などの実績データを確認します。可能であれば実際に管理を委託しているほかのオーナーの評判も聞いて、サービス品質を多角的に評価しましょう。

費用体系の比較:管理委託費は家賃の5%前後が相場ですが、業務内容によって差があります。安さだけでなく、費用に見合うサービスが提供されるかを総合的に判断することが大切です。

優れた不動産管理会社に委託できれば、入居者付けが早まって空室期間が短くなったり、オーナー自身が労力や時間を費やす必要がなくなったりと、非常に大きなメリットがあります。

ステップ3:貸し出しの準備を進める

入居者に選ばれる物件にするため、必要に応じてリフォームやクリーニングを実施します。

投資効果を慎重に検討しながら、物件の魅力を最大化する準備を進めましょう。

準備の進め方

優先順位を決める:最優先は安全性に関わる修繕です。次に入居者の利便性向上や、見た目の改善という順序で検討します。限られた予算内で最大の効果を得るため、不動産会社と相談しながら優先順位を決めていきましょう。

入居者ニーズを反映させる:ターゲットとなる入居者層のニーズに合わせた改善を検討します。ファミリー向けなら収納の充実、単身者向けならインターネット環境の整備など、需要に応じた投資を心がけましょう。

費用対効果を検証する:リフォーム費用に対してどの程度の賃料アップや入居率の改善が見込めるか、投資回収期間はどの程度かを試算します。たとえば「100万円のリフォームで月5千円の賃料アップが見込まれる場合、回収に16年以上かかる」と試算すれば、この投資には慎重になるべきとわかります。

方針が定まったら、複数のリフォーム業者から見積もりを取り、工期や諸条件も含めて比較検討します。

リフォームの判断や業者の選定は、専門知識がないと難しいところです。不動産会社のサポートを受けて進めるようにしましょう。

ステップ4:内見対応と入居審査を行う

物件の準備が整ったら入居者募集を開始し、内見希望者への対応と入居申込者の審査を行います。

内見対応と入居審査のポイント

内見の準備をしっかりする:室内を明るく清潔に保ち、物件の魅力を十分にアピールできるよう整えておきます。前述のリフォームやクリーニングによって印象が大きく変わります。

入居審査を行う:内見後に入居申し込みが入った場合は、家賃の支払い能力やトラブルなく生活できる常識のある人物かなどを、総合的に判断します。連帯保証人の代わりに家賃保証会社をつける場合には、家賃保証会社の審査を通過すれば、一定の信用度があると判断できます。

条件交渉へ対応する:家賃や入居時期、設備の追加など、さまざまな条件交渉が発生する場合があります。相手の要望を聞きつつ、自分の条件とのバランスを取って柔軟に対応しましょう。

内見対応や入居申込書の受領などのやりとりは、不動産管理会社に委託している場合、基本的に管理会社が対応します。オーナーとしては、報告を受けて必要な意思決定を行います。

ステップ5:賃貸借契約を結ぶ

入居者が決定したら、貸主・借主双方の権利や義務を明確にした賃貸借契約を締結します。

賃貸借契約を締結する際の注意点

契約条件の最終確認をする:賃料、敷金・礼金、契約期間、更新条件などすべての条件を双方で確認し、誤解がないよう書面に明記します。特約事項があれば詳しく説明し、借主の理解を得てから契約を締結します。

法令遵守を確認する:借地借家法などの法律に違反する条項がないか確認します。敷金や原状回復に関する特約は、とくに注意が必要です。借主に不利な条件は、無効となる可能性があります。

連絡先を明確にする:入居者との連絡方法や、設備トラブル時の対応方法を明確にします。管理会社を通じた連絡体制を整備し、緊急時にも迅速に対応できる仕組みを作っておきましょう。

また、契約時に受け取る敷金は預り金として適切に管理し、退去時の原状回復費用の精算などに備え、別途保管しておくことが重要です。管理会社へ委託している場合は、きちんと管理されていることを報告書などで確認しましょう。

ステップ6:鍵を引き渡して賃貸を開始する

契約締結後、鍵を引き渡して賃貸が正式に開始されます。

入居開始時の重要ポイント

物件状況を記録する:入居開始時の室内状況を詳細に記録し、写真撮影も行います。壁や床の傷、設備の動作状況などを記録しておきます。借主にも入居時チェックリストを渡し、入居前に物件を確認してもらうとよいでしょう。双方が確認した現状確認書があれば、退去時の原状回復の範囲を明確にできます。

設備説明や注意事項を伝える:給湯器やエアコンの使用方法、ガスの開栓手続き、ゴミ出しルールなど、生活に必要な情報は、管理会社を通じて入居者に伝達します。近隣への配慮事項や禁止事項もあらためて確認し、良好な近隣関係の維持に努めましょう。

以上、6つのステップで不動産を貸す手順を解説しました。

やるべきことはたくさんありますが、不動産管理会社に委託する場合には、ほとんどのプロセスを管理会社に委託可能です。

不動産を貸したらかかる費用と税金の知識

不動産を貸すときに注意したいのが「お金」の話です。費用や税金による出費について、あらかじめしっかり理解しておきましょう。

1. 入居者募集時に支払う広告料と仲介手数料
2. 毎月発生する管理会社への委託手数料
3. 定期的に必要な修繕費とリフォーム費用
4. 毎年かかる固定資産税と都市計画税
5. 家賃収入に対する確定申告と納税の義務

入居者募集時に支払う広告料と仲介手数料

新しい入居者を確保するためには、不動産会社への仲介手数料や広告費用が必要になります。

これらの費用は入居が決まったときに発生する成功報酬型が一般的です。空室期間を短縮するための重要な投資といえます。

入居者募集に関わる費用

仲介手数料:不動産会社が入居者を仲介した際に支払う手数料で、法令により上限が「借主と貸主合わせて家賃1カ月分以内(消費税別途)」と定められています。よって双方で0.5カ月分ずつ負担するか、借主または貸主のどちらかが合意のうえで1カ月分負担する形となります。

広告料(AD):入居者を紹介してくれた不動産会社に支払うインセンティブ的な位置付けの費用で、家賃の1〜2カ月分が相場です。ADが付いている物件は、ほかの物件よりも優先的に紹介してもらいやすくなります。

入居者募集にかかる費用は、物件や地域の競争状況によっても大きく変わります。

空室期間が長引くほど機会損失が大きくなるため、適切な募集費用を投じて早期の入居者確保を図ることも大切です。

毎月発生する管理会社への委託手数料

管理会社に賃貸管理を委託する場合、毎月一定の管理委託費を支払う必要があります。この費用は賃貸経営における固定費として計上し、収支計画に織り込んでおきましょう。

管理委託費の相場と内容

家賃の5%前後が相場:管理委託費は家賃収入の5%前後が相場となっています。サービス内容や地域によって差があり、全体では3%〜8%の間に収まるケースが多いでしょう。

業務範囲による費用差:基本的な家賃集金や入居者対応のみの場合は低額ですが、24時間緊急対応や法的手続き代行まで含む場合は高額になります。自分が求める管理レベルと費用のバランスを考慮して、最適なプランを選択しましょう。

その他の管理関連費用:清掃費、設備点検費、修繕手配の手数料などが別途発生する場合があります。契約前にこれらの費用についても確認し、トータルの管理コストを把握しておきましょう。

管理委託費は必要経費として不動産所得から控除できるため、税務上のメリットもあります。質の高い管理サービスによって、空室率の低下や長期入居の実現につながれば、費用対効果は十分に見込めます。

定期的に必要な修繕費とリフォーム費用

賃貸物件では入居者の入れ替わりや経年劣化により、定期的な修繕やリフォームが必要です。これらの費用は、事前に積み立てておかなければなりません。

修繕・リフォーム費用の計画

退去時の原状回復費用:入居者の退去時には室内のクリーニングや設備の点検、必要に応じて壁紙や床材の交換を行います。一般的な使用による損耗は貸主負担です。費用は状況によって大きく異なりますが、1回の退去につき20〜50万円程度の費用(ファミリー用・戸建ての場合)を見込んでおく必要があります。

定期的な設備更新:給湯器やエアコンなどの設備は10〜15年程度で交換時期を迎えます。設備の種類や規模により費用は異なりますが、給湯器交換で20万円前後、エアコン交換で10万円前後が目安となります。

大規模修繕の積み立て:外壁塗装や屋根修繕などの大規模工事は10〜20年周期で実施する必要があります。一戸建ての場合200〜500万円程度の費用が見込まれます。年間家賃収入の10〜20%程度を修繕積立として確保することが望ましいでしょう。

修繕費は適切に計上すれば、必要経費として不動産所得から控除できます。ただし資本的支出に該当する大規模改修は減価償却の対象となるため、税務上の取り扱いを確認しましょう。

参考:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」

毎年かかる固定資産税と都市計画税

不動産を所有している限り、毎年、固定資産税と都市計画税の支払い義務が発生します。

固定資産税などの仕組みと軽減措置

税額の計算方法:固定資産税は土地・建物それぞれの固定資産税評価額に1.4%(標準税率)を乗じて算出されます。都市計画税は都市計画区域内の土地・建物に課税され、税率は上限0.3%となっています。

住宅用地の特例措置:住宅が建築されている土地は税負担軽減のため特例措置があり、200平方メートルまでの部分については固定資産税評価額が6分の1に軽減されます。賃貸住宅もこの特例の対象となります。

固定資産税・都市計画税は、賃貸経営の必要経費として不動産所得から控除できます。

出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」総務省「地方税制度|固定資産税」

家賃収入に対する確定申告と納税の義務

賃貸収入から得た利益は、「不動産所得」として所得税の課税対象となります。

1月1日から12月31日までに得た所得について、翌年の2月16日〜3月15日の期間中に確定申告を行い、同じタイミングで所得税を納税します。

不動産所得の計算と申告

所得金額の計算式:不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算されます。総収入金額には家賃や更新料、礼金などが含まれ、必要経費には固定資産税・減価償却費・修繕費・管理委託費・ローン利息などが該当します。

所得20万円超で確定申告が必要:不動産所得を含む所得(収入から経費を差し引いた利益)が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。給与所得者も、給与所得以外の所得が20万円を超えると、確定申告が必要です。

青色申告による特典:事前に青色申告承認申請書を提出し、定められた帳簿を作成して青色申告すれば、青色申告特別控除や赤字の3年間繰越控除などの特典を受けられます。詳しくは国税庁の「はじめてみませんか?青色申告」をご確認ください。

税務処理について不安な場合は、税理士への相談を検討することをおすすめします。あるいは税務署でも相談に乗ってもらえます(最寄りの税務署は「税務署の所在地などを知りたい方」にて調べられます。)。

また、管理会社によっては、確定申告サポートのサービスを提供している場合があります。管理会社選びの際に、確認してみましょう。

まとめ

本記事では「不動産を貸したい」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

最初に「不動産を貸す」ことの基礎知識として、以下を解説しました。
1. 個人が不動産を貸すのに資格や許可は不要
2. 借主との間で「賃貸借契約」を締結する
3. 大家さんとして必要な修繕を行う義務が生じる

貸せない可能性があるため注意したい不動産は以下のとおりです。
1. 無断での又貸し
2. 住宅ローン返済中の物件
3. 民泊としての貸し出し(別途届出が必要)
4. 違法建築物件
5. 用途地域に適合しない使用方法での賃貸

不動産を貸すまでの具体的な流れを6つのステップで解説しました。
1. 不動産会社へ相談・家賃査定を依頼する
2. 不動産会社を選定し契約を結ぶ
3. 貸し出しの準備を進める
4. 内見対応と入居審査を行う
5. 賃貸借契約を結ぶ
6. 鍵を引き渡して賃貸を開始する

不動産を貸したらかかる費用と税金の知識は以下のとおりです。
1. 入居者募集時に支払う広告料と仲介手数料
2. 毎月発生する管理会社への委託手数料
3. 定期的に必要な修繕費とリフォーム費用
4. 毎年かかる固定資産税と都市計画税
5. 家賃収入に対する確定申告と納税の義務

不動産を貸したいとお考えの方は、ぜひ本記事の情報を参考に、不動産を貸し出す第一歩を踏み出してください。

河上 隼人

Author information

河上 隼人

1980年11月8日生まれ
広島県出身
株式会社エイムプレイス 代表取締役

インターネットメディア事業「マンション貸す.com」を運営し、不動産オーナーと不動産会社をつなぐ架け橋として活動。効率的で自由度の高い経営スタイルを追求しながら、自らも日々学び続けている。

趣味はトレーニングと健康的なライフスタイルづくり。毎日の冷水シャワーを日課とし、体幹トレーニングではアブローラーの“立ちコロ”を悠々こなす。数年前にお酒をやめてからは、心身ともにすっきりとした日々を楽しんでいる。
「挑戦と進化」をテーマに、自然体で自分らしい生き方を磨き続けている。

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