「自分の家を、個人で貸すことはできるだろうか?」
「転勤の間使わない家って貸せる?」
「相続で使わない家は貸すことができるの?」
そう思って調べはじめたものの、契約や費用のことがよくわからず、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、家を個人で貸すことは可能です。ただし、後悔しないためには準備が重要となります。
まず、個人でも家を貸すことができる理由や補足について解説したあと、
・家を貸すことのメリットとデメリット
・家賃の相場と費用
・長期的な収支シミュレーションの仕方と具体的な事例
そして、家を貸すときの流れと方法まで網羅的に解説していきます。
初めて家を貸す方がつまずきやすいポイントを押さえながら、「失敗しないための考え方」や「自分に合った方法を選ぶヒント」をわかりやすくまとめています。
「売るべきか迷っているけれど、貸すという選択肢も知っておきたい」という方にも参考になる内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。
【結論】個人でも家を貸すことは可能!ただし後悔しないための準備が重要
冒頭でも述べた通り、「個人でも家を貸すことはできますか?」という質問の回答は「可能ですが、いくつか注意が必要」となります。
空き家になる自宅や相続した家などを「個人の立場」で貸している方はたくさんいますし、法律的にも問題ありません。ただし、家を貸すには契約や管理、税金など、知らないと損するポイントがいくつもあります。
何も知らないまま進めてしまうと、トラブルや後悔につながるケースも少なくありません。
そこでこの章では、家を貸すにあたって「本当に個人でできるのか?」という問いに、さまざまな角度からお答えします。初心者の方にもわかりやすく解説していますので、ぜひ安心して読み進めてみてください。
【合法かどうか】資格がなくても個人で家を貸すことは可能
「個人で自分の家を貸す」ことに必要な資格はないため、特別な資格がなくても法律上まったく問題はありません。
不動産を貸す行為は「自分の資産の活用」にあたるため、宅建士の資格や不動産業の免許がなくても可能です。宅建業法が適用されるのは「反復継続して他人の物件を仲介する場合」などであり、自宅や所有物件を一時的に貸すだけなら対象外です。
たとえば「転勤でしばらく家を空けるので貸したい」「相続した家を活用したい」といったケースで、個人の立場で家を貸している方は多くいます。
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補足(重要事項説明について)
なお、「家を貸すときに重要事項説明は必要ですか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。これについては、個人が自分で貸す場合は、重要事項説明を行う義務はありません。また、宅建士の資格も必要ありません。 ただし、仲介を不動産会社に依頼する場合は、宅建業法により借主に対して重要事項説明を行うことが義務付けられており、宅建士が対応します。 |
つまり、自分で所有している物件なら、誰でも合法的に家を貸すことができます。
【契約の難しさ】契約を個人で進めることは可能だが不動産会社に仲介してもらうのがおすすめ
契約書の作成や手続きを個人で行うことは法律上可能ですが、トラブルを防ぐためには不動産会社に仲介を依頼するのが安全です。
賃貸借契約は民法に基づいているため、契約書の形式や内容に明確なルールはなく、個人でも作成できます。しかし不備があるとトラブルに発展しやすく、貸主が損をするケースもあります。特に初めて家を貸す初心者が、見よう見まねで契約書を作るとリスクが高まります。
実際には、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
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個人で作った契約書による想定トラブル例
・借主の不注意でエアコンが故障したのに、契約書に責任の所在が明記されておらず、貸主が修理費を負担した ・3年で退去してほしいという希望があったのに「普通借家契約」にしてしまい、借主が居座って出ていってくれなかった ・原状回復の範囲があいまいで、壁紙や床の修繕費を敷金から引けず、全額自己負担になった ・ペット禁止の明記を忘れてしまい、猫を飼われて室内が傷だらけになってしまった ・又貸し禁止の条項がなく、民泊サイトなどを通じて第三者に又貸しされていた ・家賃滞納時の対応や遅延損害金の規定がなく、催促しても応じてくれなかった |
このようなリスクを防ぐためには、最初から不動産会社に仲介を依頼して、専門家(宅建士)による契約書作成や重要事項説明をしてもらうのが安心です。仲介のための手数料はかかりますが、結果的にはトラブルや損失を防げる可能性が高くなります。
【管理面】自主管理も可能だが負担が大きいため委託も検討しよう
家を貸したあとは、家賃の回収や入居者からの問い合わせ対応、設備の修理手配、退去時の手続きなど、さまざまな「管理業務」が発生します。
この管理をどうするかは、大きく分けて「自分で管理する(自主管理)」か「管理会社に任せる(管理委託)」の2つがあり、状況に応じて選べます。
自主管理であれば管理費がかからず、収益性が上がる可能性があります。一方、管理会社に委託すれば、トラブル対応や家賃の回収などを代行してもらえるため、時間や手間をかけずに運用できます。
戸建てを1軒だけ貸すようなケースの場合、管理費は「家賃の5%前後」が相場です。ただし、最低管理料を5,000円にしている管理会社が多いため、管理費は月額5,000円〜が目安となります。
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自主管理がおすすめの人
・貸す物件が自宅の近くにあるため、自分でも対応しやすい ・時間に余裕があり、手間をかけることができる ・賃貸業務にある程度慣れている、または 調べて対応するるのが苦でない ・修繕対応やクレーム処理、家賃督促なども自分でこなせる自信がある ・管理費をかけたくない・利益を最大化したい |
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管理委託がおすすめの人
・忙しい、または遠方で、自分で対応するのが難しい ・トラブルやクレーム対応に不安がある ・初めて家を貸すのでプロに任せたい ・慣れている人に管理を依頼して、安心して長期的に貸したい |
どちらにもメリット・デメリットがあるため、自分のライフスタイルや物件の状況に合わせて管理方法を選ぶことが大切です。不安がある方や初めて貸す方には、管理委託の方が安心してスタートしやすいでしょう。
【副業になるか】不動産所得は副業にあたらないことが多いが会社に相談しておくのがベスト
自分の家を貸して家賃収入を得ることは、一般的には「副業」にはあたりません。ただし、誤解を避けるためにも、会社に相談しておくことをおすすめします。
家賃収入は「労働の対価として得られる給与」とは違い、自分の資産を活用して得る「不動産所得」です。社会通念上は「副業」ではなく「労働を伴わない収入」として扱われるのが一般的です。
しかし、企業の就業規則によっては「給与以外の所得は事前に申告が必要」などの規定があることもあります。また、事業規模でおこなうことを禁止する会社もあります。
不動産所得について確定申告をすると住民税に反映されるため、申告時に「住民税を給与と別に納付(普通徴収)」と指定しなければ、会社の給与明細に副収入の存在が表示されてしまい、会社に「給与以外の収入があること」がバレてしまいます。
「副業している」と誤解されることを防ぐために、最初に「家を貸して家賃収入を得る予定があるのですが問題ありませんか?」と相談しておくのがおすすめです。
【特殊なケース】転勤中やローン返済中でも家を貸すことはできる
転勤中やローンが残っている場合でも、家を貸すことは可能です。ただし、状況に応じていくつかの注意点があります。
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特殊なケースの注意点
・転勤などで一時的に家を空ける場合: 定期借家契約を使えば、契約期間終了後に確実に家を取り戻すことができます。普通借家契約だと退去してもらうことが難しくなるため注意しましょう。 ・住宅ローンの返済中の場合: ローンの契約内容によっては、第三者への賃貸が制限されていることがあります。まずは金融機関に相談して、了承を得ることが必要です。 ・相続で家を取得した場合: 共有名義の場合、他の相続人との同意が必要なので注意しましょう。 ・親名義の家を貸したい場合: 名義の家を貸すには、親本人の同意が必要です。実際の契約や手続きを子どもが行う場合は、親からの委任状を準備しましょう。 ・共有名義の家を貸したい場合: 所有者全員の同意が必要となります。片方の判断だけで契約を進めると、契約が無効になるリスクがあるので注意しましょう。 ・自宅を将来売る予定・戻る予定がある場合: 普通借家契約で貸してしまうと、退去してもらえず売却できない可能性があります。貸す期間を限定するなら、定期借家契約を選びましょう。 |
特殊な状況でも、正しい手続きを踏めば家を貸すことは可能です。不安がある場合は、賃貸に詳しい不動産会社に相談してから進めましょう。
所有している家を貸す3つのメリット
1章では「家を個人で貸すことはできるのか?」という疑問や不満について、法律面や実務面などいろいろな角度から整理して紹介しました。
ここまででの内容を読んで、「自分でも家を貸すことはできるんだ」「不動産会社を使えば安心なんだな」と思えた方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、個人が所有している家を貸す場合のメリット・デメリットを解説していきます。まずはメリットを解説し、次の章でデメリットを解説します。
良い面・悪い面を両方知ったうえで、自分の場合は家を貸すのが向いているのか、判断していきましょう。
メリット1:家賃収入を得ることができる
家を貸す最大のメリットは、毎月の家賃収入が得られることです。
住んでいない家をそのままにしておくと利益はありませんが、誰かに貸せば家賃収入を毎月得られます。家賃収入があれば、固定資産税など家を維持する費用の補填ができるほか、生活費やローン返済の足しになるケースもあります。
たとえば、月8万円で貸し出すことができれば、年間で96万円の収入になります。固定資産税や賃貸管理手数料などが年間50万円かかった場合、46万円が手元に残る計算です。(ただし、別途、所得税を計算する必要があります。)
住まない家を放置してしまうと「活用できずに維持費だけかかる負債」になりますが、家賃収入を得られれば「資産」に変わります。
メリット2:人に住んでもらうことで家の劣化を防げる
「人に住んでもらうことで家の劣化を防げる」というのも、意外と大きなメリットとなります。
イメージしにくい方もいるかもしれませんが、誰も住まないと、家は想像以上に早く傷みます。家というのは、人が住んでいるからこそ良い状態を保てるのです。
建物は「使われてこそ保たれる」という側面があります。人が住んでいない家では、空気が循環せず、湿気がこもりやすくなります。その結果、カビや結露、木材の腐食、シロアリなどの害虫被害が発生しやすくなります。
また、水道管やトイレなどの給排水設備も、使わなければ内部に汚れやサビがたまります。さらに空き家期間が長引くと、排水トラップの水がなくなることで、下水の臭気や虫が室内に入り込むリスクが高まります。
さらに、電気が使われずブレーカーが落とされたままの場合、電気設備の不具合や漏電リスクも高まることがあります。
たとえば、「2年間空き家にしていたら床にカビが広がっていた」「壁紙が浮いてきてリフォームに数十万円かかった」といった相談は珍しくありません。一方で、家を貸して入居者がいれば、日常的に換気・通電・通水が行われるため、自然と家の状態も保たれます。
空き家にしたまま放置したことにより、害虫の発生や排水トラップの故障、建材のひび割れなどが発生してしまうと、原状回復のために数十万円〜100万円以上の修繕費がかかるケースもあります。
家を貸すことは、もしも年間収支が赤字になったとしても、建物の状態を保てるという大きなメリットがあります。多少の赤字でも人が住んでくれることで家の状態を保つことができ、放置したことで発生する大規模な修繕費を避けて、資産価値の低下を防げるというメリットがあります。
メリット3:売る決断まで有効活用ができる
すぐに使う予定がない家でも、貸すことで「とりあえず活かす」という選択ができます。
「いずれ自分が戻って住むかもしれない」「子どもが将来使うかも」と考えて、売る決断ができない家も多いはずです。そのようなケースでは、すぐに売却せずに「ひとまず貸す」ことで時間的な余裕が生まれます。
貸している間に家賃収入が得られれば、かなりメリットは大きいといえます。また、たとえ収支が赤字になったとしても、家をただ空き家として放置するよりはずっと意味があります。
たとえば、住宅ローンが残っている家であれば、家賃収入でローン返済の一部をまかなうことができ、ローン残高を圧縮していく効果があります。
また、家を持っているだけでも固定資産税などの維持費は毎年かかりますが、貸していればその支出の一部でもカバーできるという点で、貸さないよりは家計への負担が軽くなります。
家を売却してしまうと、将来的に戻ることができなくなってしまいます。「将来また自分や家族が住むかもしれない」と考えている場合、貸しておくことで住む選択肢を残したまま、時間をかけて判断できるのも大きなメリットです。
所有している家を貸す4つのデメリット
前章では、「家を貸すことで得られるメリット」を解説しました。
しかしながら、家を貸すというのは良いことばかりではありません。収支の不安定さや入居者とのトラブル、税金の手続きなど、貸した後に初めてわかる大変さも少なくないのが現実です。
この章では、貸したあとに後悔しないために知っておきたい4つのデメリットを、実際の注意点とともに解説します。
デメリット1:収支がかならず黒字になるとは限らない
家を貸すメリットとして「家賃収入を得られる」について解説しましたが、かならず黒字になるとは限らない点に注意が必要です。
家賃収入があっても、そこから賃貸管理手数料や住宅ローン返済額、固定資産税などの諸経費を引くと、手元に残るお金がほとんどなくなるケースもあります。場合によっては赤字になることもあるでしょう。
たとえば月8万円で貸して年間96万円の家賃収入があっても、住宅ローンの支払いや賃貸管理手数料などでほとんど手残りが残らないケースはありえます。
さらに懸念される点として、入居者が見つからなければ家賃収入が入ってこないため、支出だけが発生することもあります。
実際にかかる費用目安については「5. 所有している家を貸すときにかかる費用」の章で後述するので、確認してみてください。
デメリット2:契約書があいまいだとトラブルのもととなる
家を貸す際に、契約書の内容をよく作り込んでおかないと、入居者との間でトラブルが発生したり、トラブルにより発生した費用を貸主が負担せざるを得なくなることがあります。
戸建て住宅の賃貸では、マンションと比べて契約内容に盛り込むべき事項が多く、対応が曖昧なまま契約してしまうと、後から「どちらの責任か」が不明確になりがちです。
庭木の管理や外壁の修繕、設備の取り扱いなど、想定外の事態が発生したときに、「契約書に書いていないから貸主が負担してください」と言われてしまうケースもあります。
たとえば、「ペット禁止」と明記していなかったために猫を飼われて室内が傷ついてしまったり、庭の雑草放置による近隣からの苦情で業者手配が必要になったりするなど、想定外の費用が発生するトラブルが起こる可能性があります。
また、「原状回復の範囲」があいまいだったため、退去時に壁紙や床の修繕費用を全額オーナーが負担することになるケースもありえます。
こうした事態を避けるには、戸建て賃貸に慣れた不動産会社に仲介を依頼し、契約書を丁寧に作り込むことが非常に重要です。専門家のサポート無しで個人で契約をするのは非常に危険なので、おすすめしません。
デメリット3:管理の手間がかかる(自主管理の場合は特に)
家を貸すデメリットとして、管理の手間がかかることも挙げられます。とくに自主管理の場合には、「意外にやることがあって大変」と感じることも多いでしょう。
家を貸してしまえば安心、と思う方もいるかも知れませんが、実は、家を貸したあとの管理は思っている以上に手間がかかります。
賃貸に出した後も、貸主として対応すべきことは数多くあります。特に自主管理の場合、トラブルや修繕、各種手続きなどもすべて自分で対応しなければなりません。
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家を貸す場合に発生する業務の一例
・家賃が入金されたかどうかを、毎月確認する ・家賃が未納だった場合に、入居者へ催促して確認する ・設備の不具合やクレームなど、入居者からの連絡に対応する ・修理や点検が必要な場合に、業者を探して手配する ・草木の手入れや建物の外回りを定期的にチェックする(特に戸建ての場合) ・契約更新のタイミングで条件を確認し、必要があれば契約書を作成する ・退去時に立ち会って原状回復の範囲を確認し、費用精算を行う |
「トイレが詰まった」「エアコンが壊れた」といった連絡が夜間や休日に入ることもあります。また、入居者のゴミ出しルールが守られていない場合、貸主として状況を確認して、必要に応じて入居者へ注意するなどの対応が求められることもあります。
こうした日常的な対応が重なると、思ったより負担が大きいと感じる人も少なくありません。さらに、家賃の入金遅延のときに自分で督促しなければならないのも、精神的にストレスを感じる方が多いポイントです。
このような手間や精神的なストレスを軽減したい方は、賃貸管理手数料を支払って不動産会社に管理を委託する方法を検討すべきです。とくに初めて貸す方や遠方に住んでいる方は、管理会社の力を借りることで安心して運用できます。
デメリット4:確定申告や保険の見直しなどの手間が発生する
家を貸すときには、不動産所得がある場合におこなう「確定申告」をはじめとして、火災保険の見直しや住宅ローンの借り換えの検討など、これまでになかった手間が発生します。
家を貸すことで家賃収入が発生すると、毎年「不動産所得」としての確定申告が必要になる場合があります(給与所得者の場合、給与以外の所得が20万円を超える場合に必須)。
確定申告が初めての場合、申告そのものが大きな負担になるケースもあります。さらに、「何を経費にしていいのか」などの判断も、初心者には難しいものです。
さらに、火災保険や地震保険なども「住居用」ではなく「賃貸用」の内容に変更すべきかを検討する必要が出てきます。住宅ローンを利用して購入した家を貸す場合には、事業用ローンに借り換えが必要なケースも多いでしょう。
管理会社に任せていれば日常的な手間は軽減されますが、家を貸すことで新たに「検討すべきこと」「対応すべきこと」が増えるのは事実です。とくに確定申告は毎年必要になる可能性が高いため、早めに流れを把握しておくと安心です。
家を貸す場合の家賃収入はいくら?戸建ての賃貸相場
ここまでで、家を貸すことのメリットとデメリットを見てきました。それを踏まえて、「自分の家なら実際どのくらいで貸せるんだろう?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
個人が所有する家を賃貸に出す場合の家賃収入は、だいたい5万円〜20万円程度が一般的です。
ただし、家賃の相場は一概にはいえず、エリアはもちろん、築年数・広さ・間取り・設備・駐車場の有無など、さまざまな条件によって大きく変わります。
目安として、都道府県ごとの家賃相場をざっくりとまとめてみると、以下のようになります。
【都道府県ごとの一軒家の家賃相場】
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エリア
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月額家賃の目安
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東京都23区 |
10万円(1LDK)〜50万円以上(3LDK~) |
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東京都下(市部) |
5万円(1LDK)~20万円程度(3LDK~) |
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関東の大都市(横浜市・川崎市など) |
10万円(1LDK)〜20万円程度(3LDK~) |
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その他大都市(名古屋市・大阪市など) |
8万円(1LDK)〜30万円程度(3LDK~) |
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地方都市(県庁所在地) |
5万円〜15万円程度 |
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郊外・地方の過疎地 |
3万円〜8万円程度 |
首都圏では家賃10万円を超える戸建ても珍しくありませんが、全国的には、月5〜8万円台で貸し出される戸建てのほうが多いのが実情です。
実際に「いくらで貸せるか」を割り出すには、近隣の似ている物件の賃料を調べたあとに、自分の家の固有の加点・減点要素を加味して決める必要があります。
詳しいやり方については、「一軒家 貸す 相場」の記事で丁寧に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
所有している家を貸すときにかかる費用
「いくらで貸せそうか」がわかったら、次に気になるのは「どのくらい費用がかかるのか」という点ではないでしょうか。
家を貸すことで家賃収入が得られる一方で、実際にはさまざまな費用もかかります。特に初めての方は、「どんなタイミングで、どのくらいの出費があるのか」がイメージしづらいかもしれません。
この章では、家を貸す際に必要になる費用を、貸す前・貸した後・予期しないタイミングの3つに分けて解説します。
それぞれについて、詳しく紹介していきます。
貸し出し前にかかる費用(初期費用)
家を貸す前には、住める状態に整えるための準備費用や、入居者を探してもらうために不動産仲介会社に支払う費用などがかかります。
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貸し出し前にかかる費用(初期費用)の例
・ハウスクリーニング代(2万〜5万円程度) ・壁紙やフローリングの補修、給湯器・水まわりの修繕(数万円〜10万円以上) ・必要に応じたリフォーム工事(外壁・屋根・浴室など、規模によっては数十万円) ・火災保険の見直し(住居用から賃貸用に切り替える必要がある) ・仲介会社への支払い(貸主が仲介手数料を負担しないことも多い一方で、入居者をスムーズに集めるための広告料として、家賃1カ月分程度を仲介会社に支払うケースが一般的) |
初期費用は、家の状態によって大きく差があります。築年数が経っている家では、貸し出し前にかかる費用が高くなることがあるので注意しましょう。
毎月かかる費用(維持費)
家を貸したあとには、管理会社に支払う「賃貸管理手数料」を中心に、以下のような費用がかかります。
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毎月かかる費用(維持費)の例
・賃貸管理手数料(家賃の5%程度が一般的) ・固定資産税(地域や土地面積によるが、年10万〜20万円前後が目安) ・火災保険料(賃貸用として、年1〜2万円前後が目安) |
「賃貸管理手数料」は、一般的には「家賃の5%」が目安ですが、業者によって3%〜10%など幅があり、料率や対応範囲が異なることがあります。
また、最低額として「5,000円」などの下限が設けられているケースも多く、家賃が安い物件では手数料率以上の金額になることもあるので、事前に確認しておきましょう。
「貸せば収入だけ」と思われがちですが、毎月の維持費も見込んでおかないと、収支が赤字になることもあります。収入と合わせて、かかる費用も事前にしっかり把握しておきましょう。
タイミングによって発生する費用
おおまかに分類すると「初期費用」と「維持費」が主な出費となりますが、特定のタイミングでまとまった支出が発生することがあります。毎月の維持費とは別に、こうした費用も見越しておくことが大切です。
代表的なタイミングは「入居者が退去したとき」や「設備やトラブルが発生したとき」です。
これらは毎年かならず発生するものではありませんが、ある程度の頻度で発生し、金額も大きくなりやすいため、備えておくことが重要です。
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入居者が退去するタイミングで発生する費用の例
・次の入居者に再び貸せる状態にする費用(5万円〜10万円程度) ・広告料(再募集時に、家賃の0.5〜1カ月分) 設備やトラブルなどで予想外に発生する費用の例 ・給湯器やエアコンの故障でかかる修理費用や交換費用(5万〜20万円など機器による) ・台風や大雪などで破損した、外壁・雨どい・カーポートの修繕費用(数十万円かかることも) ・退去時の原状回復でかかる想定以上の修繕費(数十万円かかることも) |
入居者が退去した後は、再び貸せる状態に戻すための費用がかかることが一般的です。内容としては、ハウスクリーニングや経年劣化の補修、鍵の交換などが含まれ、合計で5万〜10万円程度になることもあります。
普通の生活をしている範囲では入居者に原状回復の負担はなく、原則としてオーナーの負担になります。ただし、入居者の故意や過失による破損・汚れなどは請求できます。また、予想外の修繕費用を防ぐためには、契約書をしっかり作り込んでおくことも大切です。
たとえば、原状回復の範囲、借主が負担すべき内容(例:ペットによる損傷やタバコのヤニ)を明記しておくことで、退去時のトラブルやオーナーの思わぬ負担を防ぐことができます。
どちらにしても突発的な費用に備えて、毎月の収入から1〜2万円程度を積み立てておくと安心です。とくに築年数が古い家や設備が劣化している家では、予備費用を確保しておくことが重要になります。
家を貸す場合の長期的な収支シミュレーション方法
ここまで、個人で所有する家を貸し出した場合の「家賃の相場」や「かかる費用」を両方解説しました。
「いくらで貸せそうか」と「どんな費用がかかるか」がわかれば、収益から費用を差し引くことで、収支をシミュレーションすることが可能です。
家賃収入があるとはいえ、毎月のローン返済や維持費、突発的な支出も含めて考えないと、「思っていたより手元に残らなかった」ということにもなりかねません。
この章では、まず月々の手残りを把握し、次に想定外の事態も織り込んだシミュレーションもしておき、さらに将来の見通しまで含めて考えるという流れで、家を貸す際のシミュレーションのやり方を解説します。
しっかりとシミュレーションしておくことで、「貸すと利益が出そうか」「または赤字になりそうなのか」が、より現実的に見えてきます。
月別の「家賃収入 − 費用」で月々の手残りを把握する
まずは、毎月どのくらい手元に残るかをシンプルに見積もってみましょう。
住宅ローンの返済額や賃貸管理手数料はもちろん、固定資産税・火災保険も月割で考えることで、「生活費の足しになるのか」「持ち出しがあるのか」が直感的に見えてきます。
ここでは、月別の収支がプラスになるケースと、マイナスになるケース(持ち出しになるケース)を両方例として紹介します。
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月間収支シミュレーションの例(収支がプラスになるケース)
(1)家賃収入=毎月100,000円 (2)1カ月あたりの費用=合計16,000円 ・住宅ローン返済:なし ・賃貸管理手数料:月額5,000円(家賃の5%) ・固定資産税(月換算):10,000円(年額120,000円想定) ・火災保険(月換算):1,000円(年12,000円想定) (3)毎月の収支:家賃収入100,000円 − 費用16,000円=毎月86,000円のプラス |
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月間収支シミュレーションの例(収支がマイナスになるケース)
(1)家賃収入=毎月80,000円 (2)1カ月あたりの費用=合計81,000円 ・住宅ローン返済:月額65,000円 ・賃貸管理手数料:月額5,000円(家賃の5%だと4,000円ですが、下限が5,000円だったと仮定) ・固定資産税(月換算):10,000円(年額120,000円想定) ・火災保険(月換算):1,000円(年12,000円想定) (3)毎月の収支:家賃収入80,000円 − 費用81,000円=1,000円のマイナス ※このケースでは収支がマイナスですが、毎月1,000円の赤字が出る状態であっても、「ローン返済を家賃でまかなえている」と評価することは可能です。転勤などで自宅を離れるが手放したくない場合には、建物の劣化を抑える効果もあり、貸すメリットはあります。 |
ただし、実際には、空室が発生したり修繕費が発生したりする可能性もあるため、そうした状況も踏まえて、次のステップで年間収支を確認しておくことも重要です。
空室・退去・修繕を織り込んだシミュレーションもしておく
月々の収支だけではなく、空室リスクや退去時の対応、修繕が必要になるケースも織り込んだ、年単位でのシミュレーションもしておくと安心です。
入居者が退去したタイミングでは原状回復のための費用や追加募集の広告料がかかりますし、設備の修繕も突発的に発生します。
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空室・退去・修繕を織り込んだシミュレーションの例
・空室リスクとして、1カ月分の家賃収入マイナスを織り込んでおく ・退去時に発生する修繕費用や広告料などを、年平均で見積もっておく ・給湯器やエアコンの故障などに備えて、毎年10万円程度を修繕積立として見込んでおく |
月ごとの収支が黒字でも、こうした費用を加味すると実質的には赤字になる年もあるということを、事前に知っておくと安心です。
貸す年数や将来の希望も合わせて考える
ここまで「月ごとの収支(手残り)」や、空室・修繕を含めた現実的な年間収支を立てることについて解説しました。シミュレーションの結果、「黒字になりそう」「少し赤字になりそう」といった目安が見えてきた方もいるかと思います。
しかしながら、家を貸すメリットが「利益を出すこと」なのか、それとも「売却を決断できないためしばらく維持したい」なのかによって、適切な判断基準は変わります。
そのため、「この家を何年くらい貸すつもりなのか?」「将来的にどう活用したいのか?」という視点を持っておくことが大切です。
毎月の収益を目的にするならば、空室・退去・修繕を織り込んでもプラスになることが重要でしょう。しかし、維持や将来の選択肢を残すことを目的とするなら、「大きな赤字が出なければOK」という判断もあります。
「ローンがあと10年で終わるので、それまでは貸して返済を進めたい」
「子どもが大学を卒業するまでの5年間だけ貸しておきたい」
「将来は売るかもしれないけど、今はとりあえず貸して様子を見たい」
このように目的がはっきりしていれば、黒字の金額だけに惑わされずに適切な判断ができるでしょう。
家を貸すときの流れと方法|契約や手続きの基本を知ろう
ここまでで、家を貸すときのメリット・デメリットや費用、収支のシミュレーションについて解説してきました。これらを踏まえて「貸してみようかな」と前向きに進めたい方に向けて、実際に家を貸すときの流れや方法についてご紹介します。
家を貸すといっても、個人で対応できる部分と、不動産会社に任せたほうがいい部分があります。失敗しないためには、最初のステップで「どんな方法があるのか」「何を決めておくべきか」を知っておくことが大切です。
家を貸すまでの基本的な流れ
家を貸し出すときの基本的なステップは以下のとおりです。
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家を貸すまでの基本的な流れ
1. 不動産会社に相談して賃料査定を受ける 2. 管理会社や仲介会社を決めて契約を結ぶ 3. 家の状態を整えて貸せる状態にする(ハウスクリーニングなど) 4. 家賃などの契約条件を決める【定期借家にするかなど要検討】 5. 仲介会社が入居者募集を開始する 6. 入居者の審査・契約手続きを実施する 7. 鍵の引き渡し・入居開始 |
たくさんステップがあるように見えますが、信頼できる管理会社や仲介会社を見つければ、あとは不動産会社が主導となって入居者募集や手続きなどを進めてくれるので安心です。
家賃の決定や契約形態(普通借家か定期借家か)については、不動産会社と相談して、納得のいく形で進めていきましょう。
契約には2種類ある|普通借家契約と定期借家契約
家を貸すときの契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。それぞれに特徴があり、将来の予定や貸す目的によって選ぶべき契約が異なります。
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普通借家契約【長期で安定して貸したい人向け】
・通常の賃貸契約 ・契約期間が満了しても自動更新される(原則として借主の居住権が強い) ・途中で退去してもらうには正当な理由が必要 ・正当な理由があっても、退去してもらうのに立ち退き料を支払うケースがある |
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定期借家契約【将来活用したい人、一時的に貸したい人向け】
・3年間など、あらかじめ貸す期間を定めて、その期間で契約が終了する契約形態 ・更新がないことを事前に書面で説明する必要がある ・契約期間が終われば更新されないので、退去してもらうことができる |
普通借家契約は、原則として貸主の更新希望を拒否することができません。そのため、将来家を活用したい人や一時的に貸したい人は、定期借家契約にしておくことをおすすめします。
しかしながら、定期借家契約にすると入居者からすると「住み続けられる期間が限定される」ため、敬遠されることもあります。
どちらの契約にするかは、長期的にどうしたいかを考えたうえでしっかりと比較・検討しましょう。
なお、転勤や海外赴任などで「一定期間だけ家を空ける」という場合には、「リロケーション」という短期間だけ賃貸する仕組みを利用する方法もあります。リロケーションに強い専門の不動産会社などもあるので、相談してみるとよいでしょう。
家を貸すための信頼できる不動産会社を探すことが大切
ここまで、家を個人で貸す場合に必要になる情報をさまざまな角度から解説してきました。
家を貸すのには気を付けなければならないポイントもたくさんあり、失敗しないために最も大切なのは「信頼できる不動産会社を見つけること」となります。とくに、法律や契約に関する知識がない状態で進めてしまうと、トラブルのもとになりかねません。
しかしながら、「信頼できる不動産会社をどう選べばいいかわからない」「複数の業者を比較するのが良いのはわかるけど、まずどこに声をかけていいかわからない」という方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、賃貸管理一括査定サービス「マンション貸す.com」です。
「マンション貸す.com」は、賃貸管理一括査定サービスに関する調査でNO.1を獲得(※)した不動産オーナー向けサイトです。審査を通過した信頼性の高い管理会社・仲介会社のみを掲載しており、安心して相談できるのが特長です。
【獲得した部門】
・不動産を所有する方が選ぶ「信頼できる不動産会社を探す人におすすめ」賃貸管理一括査定サービス No.1
・不動産を所有する方が選ぶ「持ち家を高く貸したい人におすすめ」賃貸管理一括査定サービス No.1
・不動産を所有する方が選ぶ「管理費を安く抑えたい人におすすめ」賃貸管理一括査定サービス No.1
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※調査概要 調査方法:インターネット調査を利用したイメージ調査(Surveroidを利用)https://surveroid.jp/ 調査期間:2024年12月3日~12月9日 調査概要:マンション・一戸建ての所有者、オーナー、大家が、不動産管理会社へ一括で査定を依頼するサービス(5サービス)とマンション貸す.comを比較したイメージ調査 調査実施機関:EC@JAPAN協会 調査対象:自分の不動産を所有している全国30代以上の男女324名 モニター抽出方法:インターネット調査用パネルからランダムに抽出 備考:サービス利用経験の有無は聴取していない |
「マンション貸す.com」は、チャット形式の簡単な質問に答えるだけで、不動産会社を最大6社まで一括で比較できるプラットフォームです。物件の内容に合った会社を選んで比較できるので、広告や認知度にとらわれず物件の価値をしっかり評価してくれる不動産会社を見つけることが可能です。
650社を超える不動産会社が加盟しており、比較することで最適な賃貸管理会社を見つけることができます。特定の管理会社を推薦するサービスではなく、中立的な立場で情報を提供しているため、比較・検討しやすいのも特徴です。
※査定結果は確定家賃ではなく、相場をもとにした参考価格です。実際の家賃や契約条件は、その後の面談や交渉によって決定されます。
賃貸経営の収益に大きな差が出ることもあり、不動産会社選びはとても重要です。まずはお気軽に「賃貸査定」をしてみてください。
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まとめ
本記事では「家を個人で貸す方法」について網羅的に解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆【結論】個人でも家を貸すことは可能!ただし後悔しないための準備が重要
・【合法かどうか】資格がなくても個人で家を貸すことは可能
・【契約の難しさ】契約を個人で進めることは可能だが不動産会社に仲介してもらうのがおすすめ
・【管理面】自主管理も可能だが負担が大きいため委託も検討しよう
・【副業になるか】不動産所得は副業にあたらないことが多いが会社に相談しておくのがベスト
・【特殊なケース】転勤中やローン返済中でも家を貸すことはできる
◆所有している家を貸す3つのメリット
・メリット1:家賃収入を得ることができる
・メリット2:人に住んでもらうことで家の劣化を防げる
・メリット3:売る決断まで有効活用ができる
◆所有している家を貸す4つのデメリット
・デメリット1:収支がかならず黒字になるとは限らない
・デメリット2:契約書があいまいだとトラブルのもととなる
・デメリット3:管理の手間がかかる(自主管理の場合は特に)
・デメリット4:確定申告や保険の見直しなどの手間が発生する
失敗せずに家を貸すために最も大切なのは「信頼できる不動産会社を見つけること」です。不動産会社の見つけ方がわからない方はぜひ「マンション貸す.com」をご活用ください。
Author information
河上 隼人
1980年11月8日生まれ
広島県出身
株式会社エイムプレイス 代表取締役
インターネットメディア事業「マンション貸す.com」を運営し、不動産オーナーと不動産会社をつなぐ架け橋として活動。効率的で自由度の高い経営スタイルを追求しながら、自らも日々学び続けている。
趣味はトレーニングと健康的なライフスタイルづくり。毎日の冷水シャワーを日課とし、体幹トレーニングではアブローラーの“立ちコロ”を悠々こなす。数年前にお酒をやめてからは、心身ともにすっきりとした日々を楽しんでいる。
「挑戦と進化」をテーマに、自然体で自分らしい生き方を磨き続けている。


