「マンションを貸したいけれど、家賃収入が入るとどのくらい税金が増えるのだろう?」
「マンションを貸すことで発生する税金を、できるだけ安く抑えたい」
このようにお考えの方は少なくありません。
初めてのマンション経営は慣れないことばかりで、特に、税金の仕組みはとても複雑であるため、色々な不安や疑問がたくさん生まれますよね。
マンションを貸すと、所得税や住民税だけなく、下記のようにさまざまな税金が発生します。
【マンションを貸すときにかかる税金一覧】
| 税金 | 概要 | 
|---|---|
| 所得税 | 収入から経費などを差し引いた年間所得に課せられる税金 | 
| 復興特別所得税 | 2013年から2037年まで適用される所得税に上乗せされる税金 | 
| 住民税 | 収入から経費などを差し引いた年間所得に課せられる税金 | 
| 個人事業税 | 課税対象となる所得が290万円超の場合に課せられる税金 | 
| 固定資産税 | マンションなどの固定資産に課せられる税金 | 
| 都市計画税 | 市街化区域内に土地や建物を所有している場合に課せられる税金 | 
所得税・復興特別所得税・住民税・個人事業税はマンションを貸したとき新たに発生するものです。
一方、固定資産税と都市計画税は、マンションを貸しても貸さなくても、物件を保有していれば発生します。
税金についてよく知らないままマンションを貸すと、思わぬ税負担によって収支が悪化したり、最悪の場合、マンション経営が赤字になってしまうリスクもあります。
そのような事態を防ぐためには、税金に関する基本知識を身につけることが大切です。
この記事では、これからマンション経営を始めようとお考えの方向けに、マンションを貸すことで生じる税金の基本についてわかりやすくご説明します。
具体的なシミュレーションや、失敗例を挙げつつ、リスクを回避する方法や節税方法についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
マンションを貸す時にかかる税金は全部で6種類
マンションを貸すと、家賃収入を得られる一方で、さまざまな税金が発生します。
具体的に、マンションを貸す時にかかる税金は全部で6種類。
各種税金の税率、算出方法は以下の通りです。
【マンションを貸すときにかかる税金の税率と算出方法】
| 税金 | 税率 | 算出方法 | 
| 所得税 | 5~45% | 所得×5%~45% | 
| 復興特別所得税 | 2.1% | 所得税×2.1% | 
| 住民税 | 10% | 所得×10%+均等割(定額) | 
| 個人事業税 | 5% | 対象となる所得×5% | 
| 固定資産税 | 1.4% | 課税標準額(固定資産税評価額)×1.4% | 
| 都市計画税 | 最大0.3% | 課税標準額(固定資産税評価額)×最大0.3% | 
※課税標準額とは、建物や土地の評価額で、税金を計算する際の基礎となるものです。
ここでは、各税金の基本ルールと算出方法について、わかりやすくご説明します。
マンションを貸す時にかかる税金(1) 所得税・復興特別所得税
マンションを貸すと「家賃収入」が発生します。この家賃収入に対して発生するのが、所得税と復興特別所得税です。
1-1-1. 所得税について
所得税は、その年の1月1日~12月31日までに得た所得に対して発生する税金です。
【所得税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 所得 | 5%~45% | 給与など他の所得と合算して総合課税される | 
計算方法はとてもシンプルで、下記計算式により簡単に算出できます。
| 所得税額=(各種所得の合計-基礎控除)×税率-控除額 | 
マンションを貸して家賃収入を得た場合、その家賃収入から必要経費(管理費や固定資産税など)を差し引いた金額が「不動産所得」となります。
そしてこの不動産所得は、給与所得や事業所得など、他の所得と合算して所得税の対象になります。
 
                  ※利子所得、譲渡所得、配当所得は、総合課税になる場合と分離課税になる場合があります。
 
【Point】 所得が増えるほど税率も高くなる!
日本は「累進課税制度」を採用しており、所得が増えるほど税率が高くなります。
マンションを貸すと、不動産所得がかかるのは前述の通りです。ただし所得が増えると、日本の制度上、税率が上がるので、注意が必要です。
詳しくは、下表をご参照ください。
【年間所得金額別|所得税の税率一覧】
| 年間所得金額 | 税率 | 控除額 | 
| 195万円未満 | 5% | 0円 | 
| 195万円~330万円未満 | 10% | 9万7,500円 | 
| 330万円~695万円未満 | 20% | 42万7,500円 | 
| 695万円~900万円未満 | 23% | 63万6,000円 | 
| 900万円~1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 | 
| 1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 | 
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 | 
※基礎控除は、2,400万円以下…48万円、2,400万円超2,450万円以下…32万円、2,450万円超2,500万円以下…16万円、2,500万円超…0円。
【算出例】実際に計算してみよう!
[試算条件]
・ 給与所得 600万円・ 家賃収入 120万円
・ 必要経費 40万円
※基礎控除以外の各種控除については、考慮しないものとする。
[算出例]
上記の条件のもと、所得税がいくらになるのか計算してみましょう。《STEP1》 まず、課税対象となる所得は下記計算により、720万円です。
給与所得(600万円)+家賃収入(120万円)-必要経費(40万円)-基礎控除(48万円)=632万円
《STEP2》 年間所得680万円の方の所得税率は20%ですので、これをもとに計算すると…
課税所得(632万円)×税率(20%)ー控除(42万7,500円)= 83万6,500円
このケースにおける所得税額は、83万6,500円となります。
1-1-2. 復興特別所得税について
復興特別所得税は、2013年から2037年まで適用される上乗せ税です。
【復興特別所得税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 所得税 | 2.1% | 所得に関係なく税率は同じ | 
復興特別所得税は、下記計算式により算出します。
例えば、所得税で算出例を試算した時と同じ条件で計算すると…
所得税額(83万6,500円)×税率(2.1%)=1万7,566円
上記計算式により、このケースにおける復興特別所得税は1万7,566円となります。
マンションを貸す時にかかる税金(2) 住民税
住民税は、前年の所得に対して発生する税金です。
所得×10%で算出する「所得割」と、定額を納める「均等割」を合算した金額を納付します。
【住民税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 所得 | 所得割(所得×10%)+ 均等割(定額) | 所得割の税率は、所得金額に関係なく一律 | 
※住民税の基礎控除額は43万円(年間所得金額2,400万円以下の場合)
均等割の金額は地方自治体によって異なりますが、5,000円前後になるところがほとんどです。
【算出例】実際に計算してみよう!
[試算条件]
・ 給与所得 600万円・ 家賃収入 120万円
・ 必要経費 40万円
※この地域における均等割は5,000円とする。
※基礎控除以外の各種控除については、考慮しないものとする。
[算出例]
上記条件のもと、住民税がいくらになるのか計算してみましょう。《STEP1》まずは、課税対象となる所得を計算します。所得は、下記計算により632万円となります。
給与所得(600万円)+家賃収入(120万円)-必要経費(40万円)-基礎控除(43万円)=637万円
《STEP2》算出した課税所得に住民税率をかけ、均等割をプラスすると…
所得割(課税所得(637万円)×税率(10%))+均等割(5,000円)=64万2,000円
このケースにおける住民税は、64万2,000円となります。
所得税と住民税は、マンションを貸すときにかかる税金の中でも大きなウエイトを占める要素ですので、どのくらいの金額になるのかしっかり把握しておくことが大切です。
マンションを貸す時にかかる税金(3) 個人事業税
個人事業税は、個人の方が営む事業のうち、地方税法などによって定められた事業(法定業種)によって得た所得に対してかかる税金です。
現在、70の法定業種があり、不動産貸付業(マンションを貸すなど)も含まれます。
【個人事業税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 特定の事業による所得 | 5% ※業種により異なる | 一定規模以上の所得を得ている場合に課税される | 
不動産貸付業における個人事業税は5%で、下記計算式をもとに算出します。
| 個人事業税=法定業種による所得ー各種控除ー事業主控除(290万円)×税率 | 
個人事業税には290万円の事業主控除がありますので、法定業種による所得が290万円以下の場合は課税されません。
それでは、これらの基本ルールをもとに個人事業税額を実際に計算してみたいと思います。
ただし所得金額は全く同じでも、事業主かによっては内訳が代わり、個人事業税がいくらになるのか、そもそも課税対象になるのかどうかが変わります。
                  
そのため、下記2つのように、
・算出例(1)給与所得がある方の場合
・算出例(2)事業所得がある方の場合
所得内訳の違いによって個人事業税額にどのような違いがあるのか、見ていきましょう。
【算出例(1)】給与所得がある方の場合
[試算条件]
・ 給与所得 600万円・ 家賃収入 120万円
・ 必要経費 40万円
※事業主控除以外の各種控除については、考慮しないものとする。
[算出例]
給与所得は個人事業税の対象外ですので、法定業種である不動産所得(家賃収入)についてのみ考えればOKです。不動産所得は家賃収入120万円から必要経費40万円を差し引いた80万円ですので…
{不動産所得(80万円)-事業主控除(290万円)}×5%=0円
このケースにおける
個人事業税は0円(=非課税)
となります。
では、所得は同じ条件のまま、所得の種類を変えてシミュレーションしてみましょう。
【算出例(2)】事業所得がある方の場合
[試算条件]
・ 事業所得(請負業)600万円・ 家賃収入(不動産貸付業) 120万円
・ 必要経費 40万円
※事業主控除以外の各種控除については、考慮しないものとする。
[算出例]
このケースでは、請負業も不動産貸付業も個人事業税の対象業種ですので、税額については個別に算出します。また、290万円の事業主控除は所得に応じて按分しますので、下記のようになります。
請負業の事業主控除=290万円×22/25=255万2,000円
不動産賃貸業の事業主控除=290万円×3/25=34万8,000円
この情報をもとに計算すると…
請負業の個人事業税=(600万円-255万2,000円)×5%=17万2,400円
不動産貸付業の個人事業税=(80万円-34万8,000円)×5%=2万2,600円
このケースにおける個人事業税は、19万5,000円となります。
所得金額は全く同じでも、その内訳によって個人事業税がいくらなのか、そもそも課税対象になるのかどうか、という点が大きく変化することがわかります。
個人事業主の方でマンションを貸そうとお考えの方は、家賃収入がさほど大きくなくても個人事業税が発生する可能性があることを、理解しておきましょう。
マンションを貸す時にかかる税金(4) 固定資産税
マンションを「貸す」ことでかかる税金は所得税、復興特別所得税、住民税、個人事業税の4種類です。
ただ、賃貸業をするうえで考えておかなければならない”経費”として、固定資産税についても理解しておかなければなりません。
固定資産税とは、土地や建物の所有者に対してかかる税金です。
人に貸していたとしても、固定資産税は物件の所有者が支払わなければなりません。
【固定資産税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 土地・建物 | 1.4% | 物件を貸していても、所有者に課税される | 
マンションを保有している場合、土地と建物の両方に固定資産税が発生します。
固定資産税の計算方法はとてもシンプルで、下記計算式により簡単に算出できます。
| 固定資産税=課税標準額(固定資産税評価額)×1.4% | 
マンションの場合、一軒家に比べて固定資産税のルールがやや変則的ですので、土地と建物、それぞれについてわかりやすくご説明します。
【算出例】実際に計算してみよう!
[マンションの土地に対する固定資産税]
                                          マンションの土地に対する固定資産税は、土地の課税標準額をマンションの持ち分で按分して計算します。
                                          例えば、全100室あるマンションの1室を保有している場合、そのマンションの土地の固定資産税は、固定資産税=課税標準額÷持ち分(100)×税率(1.4%)という計算式により算出します。
                        
[マンションの建物に対する固定資産税]
マンションの建物部分にかかる固定資産税は、保有するマンション(建物の専有部分)の課税標準額をもとに算出します。計算方法は基本通りで、固定資産税=課税標準額×税率(1.4%)
という計算式により算出します。
【Point】課税標準額は「課税明細書」で確認しよう!
                                          課税標準額は、毎年送られてくる納税通知書に添付されている「課税明細書」で確認しましょう。
                                          これから購入する場合は不動産会社に尋ねると概算を教えてもらえますが、一般的に、新築マンションの評価額は購入価格の70%程度です。
			
マンションを貸す時にかかる税金(5) 都市計画税
都市計画税は、市街化区域※にある土地・建物にかかる税金で、固定資産税と一緒に納付します。
※市街化区域…都市計画法に基づき指定される、都市計画区域における区域区分のひとつ
税率は地方自治体によって異なりますが、法定上限である0.3%を超えない範囲で設定されます。
【都市計画税の基本ルール】
| 課税対象 | 税率 | ポイント | 
| 市街化区域にあたる 土地・建物 | 上限0.3% | 税率は0.3%を超えない範囲で地方自治体が設定 | 
マンションを人に貸していても、都市計画税は物件の所有者が支払わなければなりませんので、注意が必要です。
都市計画税の計算方法はとてもシンプルで、下記計算式により簡単に算出できます。
| 都市計画税=課税標準額(固定資産税評価額)×税率 | 
自分が保有するマンションが市街化区域にあるかどうか、都市計画税の税率が何パーセントなのかは、その物件がある地方自治体に問い合わせると教えてもらえます。
【年収別】マンションを貸す時の税金計算シミュレーション
 
                  実際にマンションを貸した場合にどのくらいの税金がかかるのか、年収別にシミュレーションしてみましょう。
ここでは、試算条件を下記のように設定しました。
[試算条件]
                        ・ 給与所得者
                        ・ ローン返済額…月額20万円(うち、利息相当額4万円)
                        ・ 家賃30万円で賃貸
                        ・ 賃貸のための必要経費…年間260万円(減価償却費150万円、固定資産税70万円を含む)
                        ・ 新築購入時価格9,000万円(頭金2,000万円を除く7,000万円につき、35年ローンで返済中)
                        ・ 住民税の均等割は5,000円とする
                        ・ 固定資産税評価額…5,000万円(土地・建物)
                        
※所得税控除以外の各種控除については考えないものとする。
サラリーマンがマンションを貸して家賃収入を得た場合、年収によって所得税がどのように変化するのか、詳しく見ていきましょう。
年収500万円の場合
まずは、年収500万円の方がマンションを貸すケースについて、考えてみましょう。
給与所得500万円にマンション賃貸による家賃収入360万円(30万円×12か月)が入ってきた場合にかかる税金は、下表のとおりです。
                  
| 税金 | 計算式 | 税額 | 
| 所得税 | (500万円+360万円-260万円)×20%ー42万7,500円 | 77万2,500円 | 
| 復興特別所得税 | 77万2,500円×2.1% | 1万6,222円 | 
| 住民税 | (500万円+360万円-260万円)×10%+5,000円 | 60万5,000円 | 
| 個人事業税 | {(360万円-260万円)-290万円}×5% | 0円 | 
| 固定資産税 | 5,000万円×1.4% | 70万円 | 
| 合計 | 209万3,722円 | 
ちなみに、マンションを貸さなかった場合の税金は下表のとおりです。
| 税金 | 計算式 | 税額 | 
| 所得税 | 500万円×20%ー42万7,500円 | 57万2,500円 | 
| 復興特別所得税 | 57万2,500円×2.1% | 1万2,022円 | 
| 住民税 | 500万円×10%+5,000円 | 50万5,000円 | 
| 個人事業税 | なし | 0円 | 
| 固定資産税 | 5,000万円×1.4% | 70万円 | 
| 合計 | 178万9,522円 | 
支払うべき税額は約30万円増えましたが、マンションを貸すことで100万円の不動産所得を得ていますので、損益はプラスです。
年収330万円から695万円までは所得税の税率が20%のまま変わりませんので、年収500万円の方であれば、家賃収入が増えたとしても、税負担が大きく増えることはありません。
固定資産税はマンションを貸しても貸さなくても発生しますので、家賃収入が入ってくること、固定資産税を経費として計上できることを考慮すると、このケースではマンションを貸した方が“お得”と言えます。
年収1,790万円の場合
次に、年収1,790万円の方がマンションを貸す場合の税金について、シミュレーションしてみたいと思います。
この年収になってくると、家賃収入がわずかに増えるだけでも、税率が大きくあがり収支が逆転する場合があります。
税負担がどのように変化するのか、具体的に見ていきましょう。
給与所得1,790万円に、マンション賃貸による家賃収入360万円(30万円×12か月)が入ってきた場合にかかる税金は、下表のとおりです。
| 税金 | 計算式 | 税額 | 
| 所得税 | (1,790万円+360万円-260万円)× 40% ー279万6,000円 | 476万4,000円 | 
| 復興特別所得税 | 476万4,000円×2.1% | 10万44円 | 
| 住民税 | (1,790万円+360万円-260万円)×10%+5,000円 | 189万5,000円 | 
| 個人事業税 | {(360万円-260万円)-290万円}×5% | 0円 | 
| 固定資産税 | 5,000万円×1.4% | 70万円 | 
| 合計 | 745万9,044円 | 
この情報だけでは何とも判断できませんので、マンションを貸さなかった場合の税金と比較してみましょう。
| 税金 | 計算式 | 税額 | 
| 所得税 | 1,790万円× 33% -153万6,000円 | 383万4,000円 | 
| 復興特別所得税 | 383万4,000円×2.1% | 8万514円 | 
| 住民税 | 1,790万円×10%+5,000円 | 179万5,000円 | 
| 個人事業税 | なし | 0円 | 
| 固定資産税 | 5,000万円×1.4% | 70万円 | 
| 合計 | 640万9,514円 | 
今回のケースでは、マンションを貸すことによって年間の税額が約105万円上がりました。
ちなみに、マンションを貸すことで得られる不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いた100万円です。
そうすると、このシミュレーションにおいてオーナーは、マンションを貸したことによって税金が高くなり、損益がマイナスになってしまいました。
【Point】所得が増えたことで課税税率が高くなると、場合により収支がマイナスになる場合がある
このようなことが起きる理由は、年間所得が増えたことで税率が高くなってしまったことにあります。
「1-1-1.
                              所得税について」でご説明したように、日本では所得が増えるほど所得税の税率が高くなります。
今回のケースではマンションを貸すことで収入が増え、適用される税率が33%→40%に上がったことで、収支がマイナスになってしまったのです。
ちなみに、家賃を35万円に設定すると…
| 税金 | 計算式 | 税額 | 
| 所得税 | (1,790万円+420万円-260万円)×40%ー279万6,000円 | 500万4,000円 | 
| 復興特別所得税 | 500万4,000円×2.1% | 10万5,084円 | 
| 住民税 | (1,790万円+420万円-260万円)×10%+5,000円 | 195万5,000円 | 
| 個人事業税 | {(420万円-260万円)-290万円}×5% | 0円 | 
| 固定資産税 | 5,000万円×1.4% | 70万円 | 
| 合計 | 776万4,084円 | 
マンションを貸さない場合に比べて支払うべき税金は約136万円増えますが、マンションを貸すことで年間160万円の不動産所得を得られます。
そうすると、家賃30万円で貸すときのように、「マンションを貸したことで税金が上がり、損をしてしまった」という事態は避けられます。
マンションを貸す時の税金が高騰する想定外のケース
 
                  マンションを貸す際、税金について“事前に”調べておくことはとても大切です。
税金についてよくわからないままマンションを貸すと、想定以上に税負担が大きくなり、最悪の場合は収支がマイナスになってしまう可能性があるからです。
| マンションを貸すときの税金が想定外に高額になる例 | 
| ・ 家賃収入が加わることで所得税の税率が上がった ・ タワーマンションの高層階は固定資産税が高いことを知らなかった ・ ローン返済の元金を経費計上できないことを知らず想定外に税負担が増えた | 
ここに挙げた例は、初めてマンションを貸す方や、初めて投資目的でマンションを購入する方が陥りやすい事例ですので、他人事と思わず、ぜひ最後までお読みください。
家賃収入が加わることで所得税の税率が上がった
「2-1-1. 所得税について」でご説明したように、日本は累進課税制度を採用しているため、所得が増えると所得税の税率も上がります。
下表をご覧ください。
【年間所得金額別|所得税の税率一覧】
| 年間所得金額 | 税率 | 控除額 | 
| 195万円未満 | 5% | 0円 | 
| 195万円~330万円未満 | 10% | 9万7,500円 | 
| 330万円~695万円未満 | 20% | 42万7,500円 | 
| 695万円~900万円未満 | 23% | 63万6,000円 | 
| 900万円~1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 | 
| 1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 | 
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 | 
例えば、年収1,790万円の方が、マンションを貸すことで100万円の不動産所得が増えた場合、年間所得が1,890万円となり、適用される所得税の税率が33%から40%に上がります。
| 年間所得金額 | 所得税の税率 | 所得税+復興特別所得税+住民税 | 
| 1,790万円 (給与所得1,790万円のみ) | 33% | 570万9,514円 | 
| 1,890万円 (給与所得1,790万円+不動産所得100万円) | 40% | 675万9,044円 | 
そうすると、マンションを貸すことで100万円の利益を得られても、税負担が約105万円増えてしまうため、収支がマイナスになってしまうのです。
                  ※「3. 【年収別】マンションを貸す時の税金をシミュレーション」ではより詳しくシミュレーションしていますので、併せてご参照ください。
                  
マンションを貸すときに確認すべきポイント
・ 現在の収入で、想定する家賃でマンションを貸した場合にかかる税金はいくらなのか・ 税金を考慮したうえで損益マイナスにならない家賃はいくらなのか
想定外の損失を被らないためには、「月額○○円でマンションを貸したら、いくらの利益(不動産所得)が発生し、それによってどのくらい税金が増えるのか」、必ずシミュレーションしましょう。
そのうえで、税負担が増えても損をしないような賃料設定をすることが大切です。
タワーマンションの高層階は固定資産税が高いことを知らなかった
これから投資目的でタワーマンションの購入を検討している方は、階数が高くなるほど固定資産税も高くなることを、理解しておかなければなりません。
2017年の税制改正において、固定資産税の計算基準となる「固定資産税評価額」の算出にあたり、「階層別専有床面積補正率」が採用されました。
これにより、タワーマンションの固定資産税額を計算する際、階数が1つ上がるごとに物件の評価額が約0.239%割り増しされます。
例えば、タワーマンションの40階に評価額7,000万円の部屋を所有している場合、固定資産税評価額が9.56%割り増しされる、つまり、固定資産税が約1割高くなってしまうのです。
下表は、評価額7,000万円のタワーマンションの固定資産税額を、階数別に算出したものです。同じ評価額でも、階数によって税負担にかなりの違いが生じることがわかります。
【階数別|評価額7,000万円のタワーマンションの固定資産税】
| 階数 | 補正率 | 固定資産税 | 
| 1階 | 0% | 98万円 | 
| 10階 | 2.39% | 100万3,422円 | 
| 40階 | 9.56% | 107万3,688円 | 
タワーマンションは元々の評価額が高いため、補正後の評価額が1割増えるだけでもかなりの負担増になりがちです。
この点を見落としていると、「固定資産税の負担が想定外に大きく、マンションを貸しても思ったように利益を得られない…」といった事態に陥りかねません。
投資目的でタワーマンションの購入を検討している方は、そのマンションの固定資産税がどのくらいになるのか、必ず確認しておきましょう。
ローン返済の元金を経費計上できないことを知らず想定外に税負担が増えた
マンションを貸す際、多くの方が勘違いしがちなのですが、不動産所得の計算においてローン返済の元本を経費計上することはできません。
 
                  そのため、「マンションを貸すと、住宅ローンをすべて経費にできる」と思っていると、想定外に税負担が増えてしまいます。
下記のケースで、考えてみましょう。
[試算条件]
                        ・ 新築価格7,000万円
                        ・ 35年フルローン、返済10年目
                        ・ 年間返済額260万円(元金170万円・利息90万円)
                        ・ 家賃30万円
                        
[算出例]
                        家賃30万円でマンションを貸すと、年間360万円の家賃収入を得られます。
                        ここから、「住宅ローンの返済額260万円を経費にしよう!」と考えてしまいがちですが、経費として算入できるのは利息分の90万円のみです。
                        仮に、適用される税率が40%である場合、「住宅ローンの元金も経費に算入できる」と誤解していると、想定よりも70万円近く、税負担が増えてしまいます。
                        また、住宅ローンの元金を経費にできなかったことで不動産所得が増え、これによって適用される税率がワンランク上がり、税負担がかなり増えてしまう、といった可能性もあるでしょう。
                        
想定外の税負担や、それに伴う収支のマイナスを避けるためには、マンション賃貸において「何を経費として算入できるのか」正確に理解しておくことが大切です。
※この点については、「4-1.必要経費を漏れなく申告する」で詳しくご説明していますので、併せてご参照ください。マンションを貸す時の税金を安くするコツ
 
                  マンションを貸すと、所得税や住民税、個人事業税など、思った以上にさまざまな税金が発生します。
せっかく家賃収入を得ても、税負担が大きければ手残り(=手元に残るお金)が減ってしまいますよね。
そこで重要になるのが、適切な節税対策です。
マンションを貸すときに実践したい節税対策
これらの対策を実践すれば、合法的に税負担を軽減することが可能です。
ここでは、マンションを貸す際に知っておきたい節税のコツについて、わかりやすくご説明します。収益を最大化するためのヒントが沢山ありますので、ぜひ最後までお読みくださいね!
必要経費を漏れなく申告する
マンションを貸すことで生じる税金を安く抑えるために最も重要なのが、必要経費を漏れなく申告することです。
経費として計上できるのは「家賃収入を得るために直接必要な費用」で、例えば下記のようなものがこれにあたります。
                  
【経費計上できる費用の例】
| 費目 | 概要 | 
| 固定資産税・都市計画税 | マンションに毎年かかる税金 | 
| 管理費・修繕積立金 | マンションの管理組合に支払う費用 | 
| ローンの利息部分 | 元金分は経費計上不可 | 
| 修繕費 | クロス張替や設備交換など、マンション維持管理のための修理費用 | 
| 保険料 | 賃貸経営のために加入した火災保険・地震保険などの保険料 | 
| 管理委託料 | 管理会社に支払う管理業務の委託料 | 
| 管理費 | 賃貸管理や入居者対応のために発生した費用 | 
| 仲介手数料・広告宣伝費 | 入居者募集のために不動産会社などに支払う費用 | 
| 減価償却費 | 建物の購入価格を耐用年数に応じ、分割して計上 | 
| 士業への報酬 | 税理士など専門家への報酬 | 
税務署や地方公共団体が、「もっと申告できる経費があるのではないですか?」「○○費の申告を忘れていませんか?」などと教えてくれることは、まずありません。
経費を申告しなければ、その分だけ不動産所得が増え、税負担が大きくなってしまいます。
経費の申告は節税の第一歩ですので、漏れなく申告しましょう。
初めてマンションを貸す方の場合、固定資産税や都市計画税、保険料、減価償却費を見落としがちですので、特に注意が必要です。
Point必要経費に算入できない費用
下記の費用は必要経費に算入できませんので、ご注意ください。| 費目 | 概要 | 
| ローンの元金部分 | 元金は資本の返済であり、経費ではない | 
| 土地の購入費 | マンション購入価格のうち、土地の購入費相当額は経費計上不可 | 
| 購入時の頭金 | 資本支出であり、経費ではない。建物部分は減価償却をして少しずつ経費化 | 
| 印紙税・登録免許税 | 経費ではなくマンションの取得価格に含め、建物分のみ減価償却の対象 | 
青色申告控除を活用する
マンションを貸すことで発生する税金を安く抑えるには、青色申告控除の活用も効果的です。
青色申告控除とは、確定申告において「青色申告」を行うことにより、最大65万円の控除を受けられる仕組みのことをいいます。
控除を受けると課税所得金額が減るため、所得税や住民税の節税が可能です。
下表は、事業所得800万円+不動産所得100万円の方が、青色申告をした場合としなかった場合の税負担を比較したものです。
例)事業所得800万円+不動産所得100万円の場合
| 青色申告 | 課税所得・適用税率 | 所得税額+住民税額 | 
| なし | 900万円・33% | 233万9,000円 | 
| あり | 835万円・23% | 208万5,000円 | 
※所得税控除以外の各種控除は考えないものとする
全く同じ所得でも、青色をするかどうかによって税負担に約25万円もの差が生じることがわかります。
青色申告をするためには、税務署に必要書類を提出し、承認を受けなければなりません。
白色申告に比べて難しいイメージがありますが、最近は誰でも簡単に使える会計ソフトもありますので、これを活用すれば自分で申告可能です。
もちろん、税理士に相談すれば全てを任せられますが、その分費用もかかりますので、依頼するかどうかは費用対効果を慎重に考慮して決めましょう。
損益通算する
所得税法では、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」について、同じ年の中で損益通算が認められています。
例えば、マンション経営による不動産所得が黒字、他事業による事業所得が赤字であった場合、不動産所得の黒字と事業所得の赤字を相殺し、課税所得を減らせるのです。
下表は、ある試算条件のもと、損益通算をする場合としない場合における税負担を比較したものです。
【算出例】
試算条件
・不動産所得 +300万円
・事業所得  ▲200万円
・給与所得  +750万円の場合
| 損益通算 | 課税所得・適用税率 | 所得税額+住民税額 | 
| なし | 1,050万円・33% | 298万4,000円 | 
| あり | 850万円・23% | 217万4,000円 | 
損益通算をするかしないかで、税負担に約80万円もの差が生じることがわかります。
損益通算についても経費計上と同様、税務署から「損益通算しませんか?」と教えてはくれませんので、ご自身でしっかり把握し、確実に申告しましょう。
マンション経営をするなら税金に詳しい管理会社選びが重要!
 
                  マンション経営で得られる利益を最大化するには、所得税や固定資産税、減価償却など、税金に関する基本知識が欠かせません。
税金の仕組みを正しく理解していないと、本記事でもご紹介したように、思わぬ税負担で収支が悪化したり、節税のチャンスを逃してしまう可能性があるからです。
税金に関する知識不足が原因で起こる失敗例
・ 所得税に関する知識不足例:家賃収入により所得税が大幅増加することを知らず、賃料設定を誤り収支がマイナスになった
・税金試算時の、不動産所得に関する知識不足
例:住宅ローンの元金を経費算入できないことを知らず、税負担が想定よりも大きくなってしまった
・固定資産税に関する知識不足
例:固定資産税が想定外に高く、税負担が原因で収支がマイナスになった
とはいえ、税金の制度はかなり複雑ですので、ご自身ですべてを把握するのは容易ではありません。
そんな時、賃貸運営のプロである管理会社を上手に活用するのは、とても有効な手段です。
管理会社の中には、賃貸経営に必要な税知識に明るいところもあり、
・必要な情報を提供してくれる
・「この件は税理士に相談した方がいい」と適切な判断を促す
など、税務面においてもオーナー様をしっかりとサポートしてもらえる場合もあります。
また、管理会社はマンションの運営状況をしっかりと把握しているため、「このタイミングで修繕したほうがいい」「この内容は税理士に相談しておくべき」といったアドバイスも受けられます。
こうした積み重ねは、不要な出費を防ぎ、税金面におけるリスクを減らし、長期的に安定した収益を得るうえでとても大切です。
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まとめ
マンションを貸すと、所得税や住民税、個人事業税などさまざまな税金が発生します。
【マンションを貸すときにかかる税金一覧】
| 税金 | 概要 | 
| 所得税 | 収入から経費などを差し引いた年間所得に課せられる税金 | 
| 復興特別所得税 | 2013年から2037年まで適用される所得税に上乗せされる税金 | 
| 住民税 | 収入から経費などを差し引いた年間所得に課せられる税金 | 
| 個人事業税 | 課税対象となる所得が290万円超の場合に課せられる税金 | 
| 固定資産税 | マンションなどの固定資産に課せられる税金 | 
| 都市計画税 | 市街化区域内に土地や建物を所有している場合に課せられる税金 | 
これらの税金について理解していないと、思わぬ税負担によって収支が悪化し、せっかくの賃貸経営が赤字になるリスクもあります。
マンション経営の収益を最大化するには、税金に関する知識の習得が欠かせません。マンションを貸す前に、どんな税金がどのくらい発生するのか、必ず確認しておきましょう。
ただ、税金の制度はとても複雑で、自分だけで完全に把握するのは難しいですよね。
そんな時は、税金に関する情報に明るい管理会社を上手に活用することをおすすめします。
ご自身で税金に関する情報をリサーチしつつ、適切なパートナーと連携しながら賢く税金対策を進めることが、長期的に安定したマンション経営への第一歩です。
 
				Author information
戸谷 太祐
						株式会社エイムプレイス 社外取締役
						
						賃貸経営は思い通りにいかず、不安や迷いが生まれがちです。私はオーナー様が納得して判断できる環境を整えることを使命としています。専門用語を減らし、判断に必要な情報や手順を整理し、入居者募集・原状回復・更新といった運用サイクルを仕組み化。記事発信やマッチングを通じて、初めての方でも安心して比較・検討できる環境を「レントハック」で提供しています。
					
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