「賃貸管理会社の入居率は平均95%って本当?」
「入居率98%!など入居率の高さをアピールしている賃貸管理会社ばかりなんだけど本当かな」
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会が会員である賃貸管理会社に調査した結果を見ると、たしかに入居率は毎年94%〜95%前後で推移しています。
しかしながら、当たり前ですが賃貸管理会社によって実際の入居率は異なり、入居率98%の会社もあれば、80%の会社もありますし、70%の会社も存在します。
全国賃貸住宅新聞の調査を見ると、入居率90%以上の賃貸管理会社が86%を占める一方で、入居率90%に達しない会社も14%存在することがわかります。
この記事では、まず、賃貸管理会社の入居率とは何かを理解するために、「全国平均は94%〜95%であるものの、低い会社も存在すること」や、調査では入居率が高く見えるカラクリについて解説していきます。
さらに、オーナーが賃貸管理会社の入居率を正しく理解するための、3つの入居率の種類も解説します。
入居率の高さで賃貸管理会社を選ぶときには、時点入居率ではなく「稼働入居率(年間)」を基準にし、算出方法の根拠とあわせて総合的に判断することが正解です。
入居率は大事ですが、見た目の数字だけ見ても実態が分かりません。入居率と併せて見るべき指標や、集客力、管理品質、担当者対応、コストとのバランスなども詳しく解説していきます。
読み終えるころには、入居率の数字を鵜呑みにせず、根拠を問い、総合力で比較する具体的な手順までイメージできるはずです。あなたの物件に合う管理会社像を思い浮かべながら、ぜひ最後までお読みください。
賃貸管理会社によって入居率は異なる
まず結論として、「賃貸管理会社によって入居率は異なる」という基本的かつ当たり前ともいえるテーマを掘り下げていきます。
賃貸管理会社の入居率は平均95%というのが業界水準として存在し、「入居率95%以上」を掲げている会社も多いため、一見「どこの会社もそんなものなのかな」と思われがちです。
しかしながら、当たり前ではありますが、実際、賃貸管理会社によって入居率は異なります。
・入居率の高さを売りにしている賃貸管理会社の入居率は95%以上
・一方で85%未満の低い会社ももちろん存在する
という内容を詳しく解説していきます。
入居率の高さを売りにしている賃貸管理会社の入居率は95%以上
入居率の高さを強みとしてアピールしている賃貸管理会社の多くは、「入居率95%以上」の数字を掲げています。
その理由としては、入居率95%という水準が業界全体で「安定経営の目安」として定着しているからです。
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会(日管協)が定期的に発表している調査では、全国平均の入居率は毎年94%〜95%前後で推移しています。この水準を維持できている会社は「平均以上の入居付け力を持っている」と判断されやすく、管理会社も「客付け力の高さをアピールできる数字」として打ち出す傾向があるのです。
入居率の高さを売りにしている会社の例
- 旭化成不動産レジデンス株式会社 賃貸事業本部 城西支店:入居率97%以上
- 株式会社山一ハウス:入居率98
- 福ホーム 株式会社:入居率96%
- 株式会社赤鹿地所:入居率97.3%
- 株式会社 エムズ:入居率95%
賃貸管理会社を選ぶうえで「入居率が高い管理会社がいい!」という場合には、「95%以上かどうか」が一定の見極めラインとなります。
一方で85%未満の低い会社ももちろん存在する
入居率95%以上を掲げる会社が多い一方で、実際には入居率が95%を下回る管理会社も少なくありません。
全国賃貸住宅新聞が実施した「管理戸数ランキング2023」の調査によると、管理物件の入居率が95%以上と回答した企業の合計は、全体の56%です。
全国賃貸住宅新聞「管理戸数ランキング2023」による入居者分布
- 入居率1%〜50%未満と回答した企業の割合:1%
- 入居率75%〜85%未満と回答した企業の割合:4%
- 入居率85%〜90%未満と回答した企業の割合:9%
- 入居率90%〜95%未満と回答した企業の割合:30%
- 入居率95%〜100%未満と回答した企業の割合:55%
- 入居率100%と回答した企業の割合:1%
入居率85%〜95%未満の企業も約4割存在しており、それ以下(85%未満)の企業も割合は少ないものの存在していることが分かります。
たとえば、賃貸管理会社が100社あった場合に、入居率95%以上の会社が56社、85%〜95%未満の会社が39社、85%未満の会社が5社というイメージです。
つまり、「入居率の業界平均が95%だから、どの会社に頼んでも大丈夫だろう」と判断するのではなく、しっかりと入居率が高い賃貸管理会社に依頼することが重要です。
賃貸管理会社の平均入居率95%以上のカラクリを解説
賃貸管理会社の平均入居率は95%ともいわれ、さらに「賃貸経営を安定させるためには95%を目指すべき」ともいわれています。
実際、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が発表した「日管協短観(2023年4月〜2024年3月)」によると、委託管理物件の全国平均入居率は94.2%でした。
首都圏に限定すると95.6%、関西圏で95.0%、その他地域では92.5%であり、全国平均にすると94.2%という数字に落ち着きます。
しかし、この統計をそのまま鵜呑みにするのは注意が必要です。なぜなら、入居率の平均値が高く見える背景には、「回答している企業の偏り」や「数字の出し方の違い」といったカラクリがあるかもしれないからです。
そもそも入居率が高い会社しかアンケートに回答していない
日管協の統計で平均入居率が高く出る理由のひとつは、アンケートの母集団が「入居率が高い会社層」に偏っているためです。
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会の調査は、当該協会に属している会員企業を対象に実施されています。「入居率最大化」に意欲的に取り組んでいる層が中心で、管理品質の高い中堅〜大手クラスが多く含まれます。
そのため、そもそも入居率が低い会社や、管理規模の小さい地方企業は回答していないケースが多く、結果として平均値が高く出やすくなるのです。
そのため、日管協の入居率平均は「優良管理会社の平均値」として理解するのが正解です。
日管協の入居率だけを見て「平均が94%〜95%だから全国的に空室が少ないんだ」とはならないことを理解しておきましょう。
住宅・土地統計調査から見える全国の住宅入居率は86.2%
日管協の調査での平均入居率は94%〜95%と高く出ている一方で、総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」を見ると、全国的な「住宅に対する入居率」はそれよりも低いことが想定されます。
総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」の結果によれば、全国の空き家率は年々増加しており、令和5年(2023年)の空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。
出典:総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」を基に弊社にて加工
つまり、住宅・土地統計調査における全国的な入居率はおよそ86.2%という計算になります(100%−13.8%=86.2%)。
この数字は賃貸管理物件だけでなく、売却用住宅・別荘・持ち家などをすべて含んだデータで、前提は異なります。
しかしそれでも、全国的な住宅稼働率が86.2%にとどまっていることを踏まえると、「入居率95〜99%」という管理会社の数字が限定的な範囲で算出された数字であることがわかるでしょう。
都合の良い数字を切り取っている可能性がある点にも注意
賃貸管理会社が高い入居率を公表している場合でも、中には、都合の良い数字だけを切り取って提示しているケースもありえるので注意が必要です。
詳しくは3章で解説しますが、入居率は「どの期間・どの基準で計算したか」によって数字が大きく変わります。
1年を通じた平均ではなく、最も入居率が高い繁忙期(春や秋など)の数字だけを使っている場合もあります。また、退去予定の部屋やリフォーム中の空室を「賃貸可能戸数」から除外して計算することで、数字を高く見せているケースもあり得ます。
都合の良い数字を切り取った入居率の例
- 繁忙期(3〜4月)の入居率のみを算出し、閑散期(夏・冬)を除外している
- 退去予定やリフォーム中の部屋を分母から外し、入居率を上げている
- 「1か月平均」ではなく、「最も高かった月の実績」を入居率として表示している
- 年間を通してみると入居率92%でも、広告上は「入居率98%」と打ち出している
こうした「一番良く見える条件」で算出した入居率は、実際の運用実態とは異なる可能性があるので注意が必要です。
したがって、入居率の数字を見るときは、「どの期間・どんな基準で計算したものか」を必ず確認することが大切です。
賃貸管理会社の入居率は3種類ある!どれを使うかで入居率が変わる点に注意
2-3でも示したように、入居率といっても計算の仕方によって結果が変わるため、どの種類の計算方法を使っているかを見極めることが重要となります。
3種類の入居率と概要
- 時点入居率(ある一時点での入居率):信憑性は低い
- 稼働入居率(年間など一定期間の入居率):稼働率を判断できる
- 賃料入居率(満室賃料に対する実際の賃料収入の割合):収益性を判断できる
同じ物件でも、どの種類の入居率で計算するかによって、以下のように結果が異なります。
タイトル
- リスト
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指標
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入居率
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見え方の特徴
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時点入居率
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100% (満室の4月時点で計算) |
年間の入居率は90%だが、満室の一瞬だけ切り取ると入居率が高く見えてしまう |
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稼働入居率
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約90.1% (1年間で計算) |
実態に最も近い入居率がわかる |
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賃料入居率
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80.8% (高単価テナントが空室だった影響) |
入居率に加えて「収益性」も判断できる |
共通の前提条件
- 家賃5万円のアパート9戸+家賃20万円のテナント1戸、合計10戸を12カ月運用
- アパート1戸が1月~3月の3カ月間空室
- アパート1戸が5月~7月の3カ月間空室
- テナント1戸が7月~12月の6カ月間空室
上記の場合、時点入居率で都合の良い数字だけを切り取られてしまうと、その会社の入居率が高く見えてしまいます。そのため、稼働入居率や賃料入居率で見るべきということが分かります。
同じ物件でも「入居率の種類」によって見え方が大きく変わるため、以下から、それぞれの計算方法や注意点をしっかり確認していきましょう。
時点入居率(ある時点での入居率):信憑性は低い
時点入居率は、ある特定の時点での入居率を示す数値です。数字が高く見えやすい一方で、信頼性は低いタイプの入居率といえます。
繁忙期など入居が集中する時期を切り取れば、どの物件もほぼ満室に見えます。そのため、ある時期の「瞬間最大値」を表す時点入居率は、1年間を通した実力を示すものではありません。
ゴルフでいうベストスコアのようなものでしかないからです。逆にいえば、悪いときのスコアが見えづらいということです。
時点入居率の計算式
入居戸数÷総戸数×100(ある時点のデータで計算)時点入居率の計算例
4月1日の時点:10戸中10戸入居時点入居率 = 入居戸数÷総戸数×100= 10÷10×100 = 100%
実際には、年間で12カ月分(約360日分)の空室が発生しているのにもかかわらず、たまたま満室の4月の数字を使うことで、入居率100%ということができてしまう。
共通の前提条件
- 家賃5万円のアパート9戸+家賃20万円のテナント1戸、合計10戸を12カ月運用
- アパート1戸が1月~3月の3カ月間空室
- アパート1戸が5月~7月の3カ月間空室
- テナント1戸が7月~12月の6カ月間空室
極端にいえば、全部屋が常に空いている物件でも、満室になったタイミングの時点入居率を出せば「入居率100%」ということができてしまう訳です。
時点入居率を見てもベストスコアしか分からないため、賃貸管理会社の実力を知りたい場合には、時点入居率ではなく次の「稼働入居率」や「賃料入居率」を確認することをおすすめします。
稼働入居率(年間など一定期間の入居率)
稼働入居率は、一定期間(多くは1年間)の平均で入居率を算出するため、最も実態に近く信頼性の高い入居率といえます。
繁忙期と閑散期を含めて平均化しており、短期的な波に左右されにくいのが特徴です。「空室をどれだけ短期間で埋めているか」を判断でき、管理会社の入居付け力を知るうえで欠かせない指標です。
稼働入居率の計算式
((総戸数×365日)−総空室日数)÷(総戸数×365日)×100稼働入居率の計算例
10戸(アパート9戸+テナント1戸)を12カ月運用し、空室日数の合計が360日の場合、年間の稼働
入居率 =((総戸数×365日)−総空室日数)÷(総戸数×365日)×100
=(3,650日 – 360日) ÷ 3,650日 × 100= 約90.1%
共通の前提条件
- 家賃5万円のアパート9戸+家賃20万円のテナント1戸、合計10戸を12カ月運用
- アパート1戸が1月~3月の3カ月間空室
- アパート1戸が5月~7月の3カ月間空室
- テナント1戸が7月~12月の6カ月間空室
3-1と同じ条件でも、同じ賃貸物件で年間を通じて計算すると、年間の稼働入居率は約90.1%となります。繁忙期の時点入居率で100%を掲げていても、1年間の平均ではこれだけ差が出るのです。
稼働入居率は、「年間を通して安定して空室を埋められているか」を見る指標です。安定重視のオーナーは、まずこの数字を最優先で確認することをおすすめします。
稼働入居率を見るときの目安
- 稼働入居率:95%以上が安定経営の一定ライン(ただし地域による)<
- 90%前後:地方・築古物件では平均的な水準
- 85%未満:空室期間が長く、改善余地あり
稼働入居率95%以上が全国平均での安定ラインといわれますが、エリアの平均値も目安にしましょう。都市部なら97%前後、地方では90%前後がひとつの目安となるでしょう。
ただし実際には家賃を維持できているかなども判断したいため、次に紹介する「賃料入居率」も参考にするのがおすすめです。
賃料入居率(満室賃料に対する実際の賃料収入の割合)
賃料入居率とは、満室時に得られる想定賃料(満室賃料)に対して、空室による家賃収入の損失を差し引いた実際の賃料収入の割合を示す指標です。
「空室による損失」を金額ベースで把握できるため、入居率の数字だけでは見えない収益への影響を把握できます。
単価の高い部屋が空いていれば賃料入居率は下がり、単価の低い部屋が空いていれば影響は小さいため、物件全体の収益へのインパクトをより正確に把握できます。
賃料入居率の計算式
(満室賃料−空室損料) ÷ 満室賃料 × 100賃料入居率の計算例
家賃5万円のアパート9戸+家賃20万円のテナント1戸の満室時の年間賃料=(5万円×9戸×12カ月)+(20万円×1戸×12カ月)=780万円です。
アパート2戸がそれぞれ3カ月間空室、テナント1戸が6カ月間空室の場合
空室で損した金額は(5万円×6カ月)+(20万円×6カ月)=150万円なので、
賃料入居率=(780万円-150万円)÷780万円=80.8%です。
この場合、単純に稼働入居率で計算していた場合には、稼働入居率=約90.1%です。しかしながら、高単価のテナントの空室が半年空いた影響で、賃料入居率にすると80.8%まで下がることがわかります。
共通の前提条件
- 家賃5万円のアパート9戸+家賃20万円のテナント1戸、合計10戸を12カ月運用
- アパート1戸が1月~3月の3カ月間空室
- アパート1戸が5月~7月の3カ月間空室
- テナント1戸が7月~12月の6カ月間空室
このように賃料入居率は、空室による損失を金額ベースで捉えることで、どの部屋が空いたときに経営への影響が大きいかを判断できます。
一般的に、管理会社を選ぶ際は「稼働入居率」を基準に比較し、「賃料入居率」は満室想定に対してどれだけ賃料収入が得られているかを確認するための指標として、オーナー自身が収益性を分析する際に役立てるのが良いでしょう。
両方を同時に比較する必要はなく、それぞれ目的に応じて使い分けるのが正解です。
【結論】稼働入居率で95%を維持している会社を選ぶのが正解
「入居率の高さで管理会社を選びたい」という場合には、「稼働入居率(年間)」に注目して、95%を維持している会社を選ぶのが正解です。
先ほど紹介した3つの入居率のうち、稼働入居率が1年間を通してどれだけ空室を埋められているかを示す数値であり、管理会社の入居付け力と安定性を最も正確に反映するものだからです。
時点入居率は一瞬の満室を示すだけで信頼性が低い一方、稼働入居率は年間平均で算出されるため、繁忙期・閑散期の変動を含めた「実力値」が分かります。
年間を通して稼働入居率が95%を超えていれば、空室対策の仕組みや仲介ネットワークがしっかり機能していると考えて良いでしょう。
入居率の高い管理会社を選ぶときのポイント
- 稼働入居率95%以上が理想ライン
- 入居率の算出方法を確認する
上記のポイントを押さえて管理会社を選ぶのがおすすめです。
稼働入居率95%以上が理想ライン
実際にはエリアによって差はあるものの、全国的に見て、稼働入居率95%前後が安定経営の目安となります。
とくに都市部であれば96%〜98%を維持している会社も多く、競争が激しい分、高い水準を期待できます。
地方の場合はエリア全体の賃貸需要が異なるため、「95%を超えているか」にこだわるよりも、その地域の中でできるだけ高い稼働入居率を維持している会社を選ぶのがおすすめです。
入居率の算出方法を確認する
入居率の数字を見るときは、「どの期間・どんな基準で計算しているか」を必ず確認しましょう。
以下の質問を管理会社にしてみると、誠実に開示してくれる会社かどうかが分かります。
確認すべき質問例
- 「入居率はどの期間の平均値ですか?」
- 「繁忙期だけの数字ではありませんか?」
- 「計算の基準(退去予定・リフォーム中の部屋を含むかなど)を教えてください」
これらに明確に答えられる会社は、データ管理と情報開示の体制が整っている可能性が高いため、信頼できると考えられます。
入居率を積極的に開示しない会社は避けるのが無難
入居率を尋ねても、「具体的な数字は出していません」「だいたい満室です」といった回答しか得られない会社は、入居率に自信がない可能性があります。
逆に入居率の高さに自信がある会社は進んで開示するはずなので、開示できない=入居率に自信がないと考えられます。また、社内でデータを一元管理していないケースもあり、あまり情報を統制できていない可能性もあります。
安心して賃貸管理を任せたいならば、入居付け力や管理体制に自信がない可能性がある会社ではなく、堂々と入居率を根拠をもって出せる会社にお願いするのがおすすめです。
入居率と併せて平均空室日数・入居期間なども確認するのがベスト
可能であれば、入居率と併せて、「空室がどれだけの期間で埋まるか」「入居者がどれくらい長く住んでいるか」といったスピードと定着率の指標も確認すると、管理会社の実力をより正確に見極められます。
入居率は、結果を表す「最終的な数字」ですが、その裏には「客付けまでにかかった時間」や「短期退去の多さ」など、目に見えない要素が隠れています。
極端に言えば、家賃を下げてすぐに埋めても入居率は上がりますし、すぐ退去されても一時的には満室です。だからこそ、入居率の「中身」を構成する数値を見ておくことが重要です。
入居率とセットで確認しておくと良い指標4つ
- 平均空室日数(空室期間):退去から次の入居までの日数の平均。この数字が短いほど、客付けスピードと営業力が高いといえます。
- 平均募集期間(客付けまでの日数):募集開始から入居申し込みまでの日数。仲介ネットワークや広告対応力を測る指標です。
- 成約率・反響率:広告に掲載した物件への問い合わせ数と、実際の成約率。反響が多いのに成約が少ない場合は内見対応や条件調整が遅れている可能性があります。
- 平均入居期間(入居者の定着率):入居者がどのくらい長く住み続けているかを示す指標。短期での退去が多い会社は入居者対応や設備メンテナンスの課題が存在する可能性があります。
反響率や成約率をデータとして開示できる会社は、マーケティング体制が確立しており、数値管理に透明性がある会社といえます。さらに、問い合わせ後すぐに具体的なデータを提示できる会社は、情報の取扱いや社内連携の精度が高く、管理業務全体の品質にも期待が持てます。
入居率だけ高くても家賃を低く設定されてしまえば収益性は下がりますし、定着率が低ければ都度退去費用がかかります。できるだけ入居率とセットで周辺情報も確認しましょう。
ただし入居率だけでなく複数の観点から管理会社を選ぶのがおすすめ
前の章では、「稼働入居率」を基準に管理会社の実力を見極める方法や、入居率の算出根拠を確認する重要性について紹介しました。
しかし、入居率が高い=必ず良い管理会社とは限りません。入居率の数字だけを追いかけるあまり、短期契約を繰り返したり、家賃を下げて見かけ上の数字を維持したりする会社が存在する可能性もあるからです。
そこでこの章では、入居率以外の観点から管理会社を見極めるための5つのポイントを整理します。
入居率以外の観点から管理会社を見極めるための5つのポイント
- 観点1:入居率を高めるために何をしているか
- 観点2:数字や報告が透明で信頼できる会社か
- 観点3:自分の物件のエリアとタイプに強い会社か
- 観点4:管理業務を安心して任せられる会社か
- 観点5:入居率だけでなく総合的に判断することが大切
これらの観点を踏まえることで、単に入居率の数字が良いだけではなく、長期的に信頼して任せられる「本当に強い管理会社」を見極めることができるはずです。
観点1:入居率を高めるために何をしているか
入居率の高さを見るときは、「その会社がどんな方法で入居付けを実現しているのか」まで確認することが大切です。
たとえ「入居率98%」といっても、なぜ98%という高さを維持できているのか納得できる理由を感じられなければ、安心して任せることはできません。
その賃貸管理会社が入居付けのために実際に行っている具体的な取り組みを、次のような視点から確認してみましょう。
入居率の高さを維持するための具体的な取り組み例
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広告・露出の工夫
・SUUMO、HOME’S、アットホームなど複数ポータルへの同時掲載
・物件写真の差し替え、設備や家賃条件の更新頻度(鮮度管理)
・SNS・動画・バーチャル内見など、新しい販促手法を活用している -
仲介ネットワークの強化
・自社だけでなく、地元の仲介店舗や大手仲介会社と連携している -
現場対応・反響対応のスピードが早い
・問い合わせが入った当日に返信・内見案内を行う体制になっている
・週末・夜間など、反響が多い時間帯の対応が柔軟に行われている -
募集条件の柔軟な提案力
・ターゲットに合わせたリフォーム・家具付き・インターネット無料などの工夫をしている
・空室が長引く場合に、家賃調整や募集条件を適切に提案して改善している
写真の撮り方ひとつでも内見の件数が変わることもあります。
入居率は「結果」にすぎないため、本当に信頼できる管理会社かどうかは、その結果を支える仕組みや努力の内容で判断すべきです。
観点2:数字や報告が透明で信頼できる会社か
管理会社を選ぶときは、まず「数字と報告の透明性」がある会社かどうかを確認することが大切です。
入居率や空室数を正確に開示できる会社ほど、データ管理やオーナーとの信頼関係を重視していると考えられます。
入居率を公開しない会社や「ほぼ満室です」「だいたい埋まっています」といった曖昧な回答しかできない会社は、数字に自信がないか、社内でデータを一元管理できていない可能性があります。
最悪の場合、「入居率95%」と謳っていても根拠のない数字、という可能性もゼロではありません。
一方で、入居率・空室数・滞納件数・募集期間などを定期的にレポートできる会社は、運営状況を正確に把握できているから安心です。
数字や報告が透明で信頼できる会社かどうか見極めるポイント
- 月次で「入居率・空室状況・反響件数・成約率」などのレポートを提出している
- オーナー専用サイトやアプリから、リアルタイムで入居状況を確認できる
- 問い合わせに対して即答できるほど、社内の情報共有ができている
反響率や成約率を開示できる会社は、マーケティング体制が整い、データを正確に扱っている証拠です。
また、これらの数値をすぐに提示できる会社は、情報管理と運用体制の整備が行き届いた、信頼性の高い会社といえます。
観点3:自分の物件のエリアとタイプに強い会社か
管理会社を選ぶときは、全体的な入居率だけでなく、自分の物件がある「エリア」と「物件タイプ」に強い会社かどうかを確認することが大切です。
どんなに入居率が高くても、その実績が自分のエリアや物件条件と一致していなければ、同じ成果を期待できない可能性があるからです。
地域や物件タイプ別・強い会社の特徴
- 都市部の物件:沿線や駅徒歩圏の需要を熟知し、ポータルサイト上位掲載に強い会社が有利
- 地方の物件:地元密着で、周辺の仲介店舗とネットワークを築いている会社が強い
- 築古アパートやテナント物件:リフォームやリノベーション提案が得意な会社が入居付けに有利
同じ95%の稼働入居率でも、都心の単身向けマンションと、郊外のファミリー向けアパートではまったく状況が異なります。
エリア特性や入居者層を把握していない会社に任せると、募集条件が相場とずれて、空室期間が長引くこともあるので注意が必要です。
「自分の物件と同じ地域・同じ入居者層での実績」があるかどうかが、管理会社選びの重要な基準です。
観点4:管理業務を安心して任せられる会社か
入居率が高いことは大切ですが、同時に「入居者がどれだけ長く住み続けているか」も重要です。
たとえ入居率は高くても、短期間で入退去を繰り返す管理会社に任せてしまうと、退去のたびに発生する費用や手間で経営が圧迫されるリスクがあるからです。表面上の入居率が高く見えても、短期入居の繰り返しでは実際の収益は安定しません。
安心して任せられる管理会社には、次のような特徴があります。
安心して管理を任せられる管理会社の特徴
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入居者対応が迅速・丁寧
・トラブル時は24時間対応できる窓口がある(外部委託含む)
・入居者からの問い合わせに即日対応できる体制がある(休日・夜間も対応可か確認) -
建物・設備の維持管理が行き届いている
・設備トラブル時に迅速に業者を手配し、オーナーへ報告している
・共用部清掃や設備点検を定期的に実施している(建物管理も依頼する場合)
・管理会社の対応範囲とオーナー負担範囲を契約前に明確にしている -
退去から再募集までのスピードが早い
・退去立ち会いから原状回復工事の手配、再募集までをワンストップで管理する力がある
・「空室期間を短縮する仕組み」が社内で明確に整っている(退去後すぐ再募集を開始)
・原状回復費用を適正に抑えるガイドラインを遵守している(国交省基準など) -
入居者定着のための取り組みがある
・入居後のフォローやアンケートを実施し、入居者の不満を早期に把握している
・リフォームや設備更新の提案を通じて、入居者の満足度を維持している
・平均入居期間を把握・開示し、長期入居を意識した運営を行っている
「入居を決める力」だけでなく、「入居者に長く住んでもらう力」がある会社こそ、安心して任せられる管理会社です。
入居率の高さとあわせて、入居者の定着率・退去までの平均期間・トラブル対応のスピードも確認することで、長期的に安定した収益を得るための安心できる管理会社を見極められます。
観点5:入居率だけでなく総合的に判断することが大切
入居率は確かに重要な指標ですが、入居率だけにこだわりすぎると、本当に信頼できる管理会社を見失うことがあります。入居率の数字だけで判断せず、費用・管理の質・担当者の対応・オプション条件などを含めた総合的な視点で見極めることが大切です。
もちろんすべての会社ではないですが、「入居率の高さ」にこだわりを持ちすぎている会社の場合、入居率を上げるために家賃を下げたり短期契約を繰り返したり、強引に入居者を決めたりする手段を取るケースもあるかもしれません。
また、広告料(AD)や各種オプション費用を積み上げて「高い入居率」を実現している可能性もあります。
数字をよく見せるために「入居率ありきの施策に偏ってしまう会社」は、長期的な収益や信頼関係を損なうリスクがあるため危険です。だからこそ、入居率だけでなく総合的に「安心して任せられるか」を判断することが大切なのです。
管理会社を総合的に判断する際のチェックポイント
-
口コミや評判:
契約後の対応やアフターフォローに満足しているオーナーが多いか、入居者からの不満が溜まっていないかなど -
費用の明確さ
:手数料・広告料・オプション費用が明示され、見積もりに不明点、強引な点などがないか -
管理体制の質
:入居者対応や修繕対応、報告の正確さなどが整っているか -
担当者の誠実さ・相性
:説明が具体的で、質問の意図やオーナーの意思に寄り添って、正直に答えてくれるか -
提案力
:空室対策や家賃設定に独自のノウハウや改善案を持っているか
管理会社を選ぶときは、「入居率が高いか」ではなく、その入居率をどう維持しているのか、どんな管理品質で支えているのかを確認しましょう。
コスト、管理体制、担当者の姿勢、そして口コミなど、複数の要素をバランスよく比較し、総合的に信頼できる会社を選ぶことが、長期的に安心できる選択です。
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ここまでの内容で、「入居率が高ければ良い会社とは限らない」ということを見てきました。
入居率には種類があり、数値のカラクリを見抜く必要があること、そして、稼働入居率だけでなく、管理体制・集客力・対応品質・コスト・担当者の誠実さといった複数の観点から総合的に判断することが大切だとわかりました。
とはいえ、実際に全国の賃貸管理会社を自分で調べ、入居率や費用、管理内容を比較していくのは簡単ではありません。
そこで活用したいのが、複数の管理会社を一度に比較できる無料サービス「マンション貸す.com」です。
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オーナーは複数社から届いた提案を見比べながら、各社の入居率やコスト、サービス内容をトータルで比較検討できる仕組みになっています。
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入居率が高い会社を選ぶことは大切ですが、最終的には、数字・管理品質・費用・担当者対応のバランスを見極めて判断することが重要です。
「マンション貸す.com」なら、複数の管理会社の提案を比較することで、入居率の高さだけではわからない総合力の違いを見極められます。
信頼できる管理会社を見つけ、長期的に安定した賃貸経営を始めるために、まずは「マンション貸す.com」で、あなたの物件に最適な管理会社を比較してみてください。
※各社から届く家賃査定結果は相場に基づく目安であり、確定賃料ではありません。各社の提案を比較し、最終的な条件は個別の契約で確定します。
まとめ
本記事では、賃貸管理会社の入居率について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆賃貸管理会社によって入居率は異なる
・入居率の高さを売りにしている賃貸管理会社の入居率は95%以上
・一方で85%未満の低い会社ももちろん存在する
◆賃貸管理会社の平均入居率95%以上のカラクリを解説
・そもそも入居率が高い会社しかアンケートに回答していない
・住宅・土地統計調査から見える全国の住宅入居率は86.2%
・都合の良い数字を切り取っている可能性がある点にも注意
◆賃貸管理会社の入居率は3種類ある!どれを使うかで入居率が変わる点に注意
・時点入居率(ある時点での入居率):信憑性は低い
・稼働入居率(年間など一定期間の入居率)
・賃料入居率(満室賃料に対する実際の賃料収入の割合)
◆【結論】稼働入居率で95%を維持している会社を選ぶのが正解
・稼働入居率95%以上が理想ライン
・入居率の算出方法を確認する
・入居率を積極的に開示しない会社は避けるのが無難
・入居率と併せて平均空室日数・入居期間なども確認するのがベスト
◆ただし入居率だけでなく複数の観点から管理会社を選ぶのがおすすめ
・観点1:入居率を高めるために何をしているか
・観点2:数字や報告が透明で信頼できる会社か
・観点3:自分の物件のエリアとタイプに強い会社か
・観点4:管理業務を安心して任せられる会社か
・観点5:入居率だけでなく総合的に判断することが大切
複数の賃貸管理会社を比較・検討するなら「マンション貸す.com」をぜひご活用ください。
Author information
戸谷 太祐
株式会社エイムプレイス 社外取締役
賃貸経営は思い通りにいかず、不安や迷いが生まれがちです。私はオーナー様が納得して判断できる環境を整えることを使命としています。専門用語を減らし、判断に必要な情報や手順を整理し、入居者募集・原状回復・更新といった運用サイクルを仕組み化。記事発信やマッチングを通じて、初めての方でも安心して比較・検討できる環境を「レントハック」で提供しています。


